組織力 宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐ (ちくま新書 842)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 163
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065483

作品紹介・あらすじ

経営の本質とは、一人ひとりでは突破できない難関を、みんなでなんとか切り抜けることにある。そのためには「組織力」を高めることが欠かせない。組織力を宿し、紡ぎ、磨き、繋ぐことで、人々ははじめて組織であり続けることができるのだ-。新入社員から役員まで、組織人なら知っておいて損はない組織論の世界。ビジネスの神髄を理論的に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 組織力を宿す—組織の合理性
    結論よりもプロセスの方が大切だよね
    そもそも問題解決だけが意思決定ではない
    組織の解剖学から生きた組織の学へ
    組織の合理性は意思決定の後で見出される

    第2章 組織力を紡ぐ—仕事を共にする
    コミュニケーション!組織化とは何か?
    組織化とは何か?
    組織の多義性の削減
    組織へと紡いでいくために

    第3章 組織力を磨く—経営的スケール観
    「〜できる」スケール観
    学習曲線の秘密
    さまざまな経営的スケール観
    時間的射程距離が短すぎて経営的スケール観がもてない

    第4章 組織力を繋ぐ—あなたの仕事
    余人をもって代え難し
    組織力を繋ぐのはあなたの仕事

    付章 組織化の社会心理学

  • 久しぶりに本読みました。
    旧来の日本式の仕組みへの賛辞のように感じました。
    現実の世界の組織の意思決定って、最適な選択肢を選ぶ、みたいな幼稚な意思決定は少ない。決定内容自体よりは、みんなの合意を得られるような決め方の方が、決定した後、スムーズに実行できる。意思決定は問題解決以外の決定もある。
    本質的な問題をやり過ごして、目先の小さな決定を行う。(やり過ごしモード)
    もしかすると、あるかもしれない本質的な問題を見過ごして決定する。(見過ごしモード)
    勢いで決めるような不合理な決定もよくある。特に重大なものほどこうなる。こうしたケースでは、決定した後にその決定の合理性を補うような理由付けが行われる。
    組織で必要なのは、仕事ができる人、ではなく、仕事を任せられる人。任せられる人は一朝一夕にはつくれない。上司はこれを見極めるために、部下を良く観察する必要がある。アフター5も重要‼️
    日本的な仕事の報酬は賃金ではなく、次の仕事。より大きな、重要な仕事を任される。結果的に賃金は上がっていく。
    最後の捕章は難しすぎて読むのを諦めました。
    きれいな机上の理論ではない、生々しい現実を教えてくれる、感じがしました。ただ、全ての人には当てはまらないですねぇ。

  • 777円購入2010-07-08

  • 具体的な著者の見聞を交えて面白く読めるが、アネクドータルな感じも。とはいえ、取りあえず統計とってみました的な経営学よりよほど良い。

    一緒に仕事をする時間を夜を含めてタップリ持つことにより、テイストを共有するとか、組織に長い時間軸でコミットすることで職務内容がレベルアップさせられるとか、体感的に納得させられる話が多い。

    一方でいわゆる日本的経営には、内向き体質の弊害や、労働力の流動性がないがための不況時のショックや、格差定着も明らかであろう。必ずしも日本的組織経営とアングロサクソン的個人主義との対立ばかりでなく、良い所取りも狙えないものか。

  • いつもながら読みやすい語り口で、組織力を「宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐ」ことの大切さを説きます。確かにじっくりと時間をかけることができればその通りだと思うのだけど…

  • 組織力を宿す、紡ぐ、磨く、繋ぐということで、日本的働き方のすばらしさを訴える著者の考え方がよくわかる著作です。

    時間的射程距離が短すぎると経営的スケール観がもてない。

    年長者がきっちりと若者を育てる組織。

    そんな組織でないとゴーイングコンサーンはありえない。

    すばらしき日本の組織論、全世界に広めて行きたいものであります。

  • 組織というものについてわかりやすい文章で書かれた本。
    シンプルで事例も多く再確認する意味ではよかったです。
    人と人との関わり方・影響・化学反応は、永遠のテーマです。

  • SQiPシンポジウムの特別講演を聴いて読んでみたくなりました。

    「組織」は、どんなときに「組織」として見えるのか。筆者はこう書いています。

     近代組織論の創始者バーナード(Chester I. Barnard)は、二人またはそれ以上の人々の諸活動または諸力が意識的に調整されているときに、「組織」--これをバーナードは協働システムと呼んでいる--として見えるのではないかと考えた。

    ……略

    実は、バーナードの非凡なところは、先ほどの公式組織の成立条件として、次の三つを提示した点にあった。

     ① コミュニケーション
     ② 貢献意欲
     ③ 共通目的

    言い換えれば、この3条件が満たされたとき、われわれはそこに「組織」を見るというのである。

    この組織の定義にはすごく納得しました。

    某ML(GA)を横目で見ていて確かに危険水域ではあるけど、大丈夫と思ったのも、コミュニケーションはなんとかとれているし、メンバー全員が貢献しようと頑張っているし、目的はなにより明確だから組織として成り立ってると思ったからなんだなと自分の勘を論理的に理解することができました。

    逆に、一見どんなに波風が立っていなくても、会うことも少なく、貢献することもなく、目的もよくわからないと、組織名はあって名前も連ねていても成り立っていないというか、、、いやいや、あれは、組織が必要なわけじゃないからそれでよいのですが……。

    ★★★

    筆者の最後のまとめが気に入ったので引用します。

     私たちは、努力している若者が好きだ。人には見えていないような陰の部分でも手を抜かず、一生懸命にやっている若者が大好きだ。もう少し要領よくできないものかと、いつもハラハラしているが、たとえ、すぐに結果は出せなくても、私たちは、君たちのする事をずっと見守っている。だから、いつか、君たちの力を本当に必要とする日がきたとき、私たちは迷わず君たちを選ぶだろう。そして、君たちと仕事をともに出来ることを心から誇りに思うはずだ。これは偉そうに、上から目線で言っているわけじゃない。君たちのファンとして言っているんだ。

    ソフトウェアテスト業界もいい若者が育ってきていますよね。

  • 人、モノ、お金。
    経営を見るときの切り口は多々あるけれど、本書では組織を切り口に、かつ肯定的で決定的な力として捉えている。

    就職して早一ヶ月。研修を受けて、筆者の言わんとする「仕事の報酬は次の仕事」、すなわち仕事を給与で反映するのではなく次に与える仕事(内容や役割)を向上することで評価するという理屈はとても理に適っているように思えた。
    給与は生活を保障するものにすぎない。けれど仕事が向上すれば、個人のスキルも上がり、組織も力を高める。シンプルで、けれども長期雇用を土台に会社で人材を育成するという制度が出来上がっていた日本ならではの評価軸であるように思える。
    日本の終身雇用も弊害ばかりではない。


    個人的には、「組織のテイスト」を学ぶ合理性という筆者の視点がとても印象深かった。
    情報がこんなにも溢れ、わざわざ大学院に進まずとも勉学が可能な状況で、あえて教授のもとで学を問う必要はあるのか。
    この問いに筆者は答える。
    「組織のテイスト」を習得するため、と。

    「組織のテイスト」それは大学院であれ、ある学問領域であれ、制限されたコミュニティにおける何かである。それは教授を通して、彼の嗜好を知り、考えを辿り、論文を書き方を習得することで学んでゆく。しかし得るものは決して彼独自のセオリーではなく、それはあくまでコミュニティで「当然」とされるものを体現しているのだ。そして、決してそれはPCを通して学ぶことは出来ない。
    「組織のテイスト」習得は、組織に入る通貨儀礼であると同時に、徐々にそのコミュニティにおけるアイデンティティ形成の過程でもある。

  •  分かりやすい部分と分かりにくい部分の差が大きいと感じた。安易な成果主義を批判する部分なんかは分かりやすかったけど、イナクトメントなどの部分はよく分からなかった。
     著者の熱い想いが語られている部分もあって印象に残った。組織力の大切さを、論理的かつ情熱的に訴えかける本だ。
     

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著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授、慶應義塾大学東アジア研究所所長。1960年生まれ。
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了、博士(法学)。
主要著作:『党と農民—中国農民革命の再検討』(研文出版、2006年)
『現代中国政治研究ハンドブック』(編著、慶應義塾大学出版会、2015年)、ほか。

「2021年 『中国共産党の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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