ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065674

感想・レビュー・書評

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  • EdTechに興味がある人には、非常におすすめの本。

    この本は、ウェブ進化論の著者でミューズアソシエイツ社長の梅田望夫氏と、マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニアストラテジストの飯吉透氏が、「ウェブ」という強力な道具を利用した新たな学びのムーブメントである「オープンエデュケーション」をそれぞれの視点で紹介し、二人の対談形式で進む。

    ウェブ業界の最先端で生きる梅田氏と、MITという教育の最先端で生きる飯吉氏の考え方は刺激的で、教育の分野で新しいことがしたいと考えている人にとっては参考になることが多いだろう。

    飯吉氏の考え方が非常に共感する部分も多く、勉強になった。



    オープンエデュケーションとは何か



    現在のように、社会構造が複雑化・流動化し、技術や知識の陳腐化も激しい世界では、「学校や塾や職場の『壁の内側』で教えられること」だけが学びのすべてではなく、「学校を出たから、もう自分の学びは終わり」というわけにもいきません。そのような「個人が一生学び続ける時代」にふさわしい「一人ひとりの無限の可能性のための次世代教育環境」こそが、オープンエデュケーションなのです。



    「学ぶこと」は、そのための「機会」と「必要な助け」さえ得られれば、あとは自分の志や情熱次第で、かなり思い通りになるはずです。オープンエデュケーションは、そんな「学ぶ機会」や「よく学ぶために必要な助け」を、世界中のすべての人たちのために最大限に増やしていこうという、「二十一世紀の壮大な教育イノベーション」なのです。



    オープンエデュケーションを構成する3つの分野



    「オープン・コンテンツ」

    オープンコースウェアのような教材をオープンにすることを指す。MOOCsと言われるようなオープンコースウェアは、この構成分野に対する注目度が高いと言えるだろう。EdTechで話題になりやすいのは、この教育のコンテンツを低価格(多くの場合無料)で提供するという形で話題になりやすい。



    「オープン・ナレッジ」

    教育的知識に関するナレッジ。コンテンツがオープンになり、テクノロジーが進化しそれを伝える仕組みが整っても、それらを効果的に使いこなし、教えることの出来る実践的なノウハウが乏しければ意味がない。その実践的知識を理解しやすく表現し、他の人と共有可能にすること。



    「オープン・テクノロジー」

    教育的オープンソース・ソフトウェアというイメージ。ラーニングマネジメントシステム(LMS)と呼ばれるウェブを利用して授業を行う際に必要な教材を作成・配信したり、教員と学生たちの間のコミュニケーションや提出物のやり取り、成績評価などを相総合的に管理するシステムのことをさす。



    「教材や教育ツールのオープン化」に加えて、さらに「教育的知識のオープン化」が進めば、互いの「学びと教えに関する成功経験や試行錯誤」をみんなで共有出来るようになり、先人の知恵・文殊の知恵によって、だれもがより効率的・効果的に学んだり教えたりする恩恵を受けられるようになるのです。



    上記のオープンエデュケーション(ほぼEdTechと同義といっていいと思う)を3つの構成要素に分解して考えることで、頭の中が整理された。

    今の日本にあるサービスのポジショニングや、空白を考える上でも非常に参考になると思う。

    梅田氏のウェブに関する思い、飯吉氏の教育に関する思いも伝わる良書。

    EdTechに興味の有る人には是非読んでほしい。

    http://edtech-media.com/2013/04/07/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%81%A7%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%80%80%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%A8%E3%83%87%E3%83%A5%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E7%9F%A5%E3%81%AE/

  •  梅田さん相変わらずポジティブです。オープンエデュケーションは,裏を返せば凄く恐い話なんだけども。ここまでオープンにされたら,知らないでは済まされない訳で。志向性の共同体の中での,学び→師や同志との出会い→職・生計というのは,理想的だけど,全部自力なんだよね,セレンディピティーも含めて。特にやりたいことがなかったりする場合どうするかというのは,教育が考えなければならないのか?
     今,自分が大学生だったらと想像すると,羨ましい反面,正直ちょっとキツイかもしれないな。。。自分の専門分野で公開されてる一流の授業があれば,観ないわけにはいかないからねぇ。知的好奇心だけで生きてた学生時代の感覚を失って久しいのでそう感ずるのであって,あの頃の自分なら狂喜して観たかもしれないけれどもw
     

  • 梅田さんの新刊。
    サバティカルの後の切れの良さを期待したら、必ずしもそうではなかったけれど。

    ウェブで、オープンエディケーションの可能性が拡がっているという。

    確かにiTunesUで、サンデル教授の正義についての講義が全てダウンロードできた。
    しかも無料で。

    それしか選択肢がないのなら、日本にいて独学できるのかもしれない。

    日本にいて、世界に貢献できることを目指したい。

    目指せるのか。

  • 「教育とは、無限の可能性を信じること」という言葉が印象的でした。
    2010年時点のオープンエデュケーションの状況を知ることができました。
    本書では、まだMOOC(Massive Open Online Course)という言葉がでてきません。

  • 第2章の「オープンエヂュケーションの現在」にしびれた。

    もう無視できないほど、オープンエデュケーションが発展してきている。そしてこのオープンエデュケーションの発展の経緯が熱い。無償でも、時間と労力をかけてでも、よりよい教育で世界をよりよいものにするという思いが伝わる。

    ウェブによってまだまだオープンエデュケーションが促進する。

    2001年 マサチューセッツ工科大学(MIT)が自校の約1800の講義で使われている教材のすべてをウェブ上で無料で公開するプロジェクトOCWが立ち上がってから、様々なオープンエデュケーションが立ち上がった。

    日本でも東大・京大・阪大・慶応・早稲田をはじめとしてJOCWが立ち上げられ、1200以上の講義数が無料で見れる。 iTunes Uでも見れる学術俯瞰講座ってやつ。

    高等教育だけでなく、初等・中等教育でもウェブ上で無料利用できるものもある。
    「NSDL」「BLOSSOMS」

    また、アメリカの大学は教材費が信じられないくらい高くつき、学生にとってかなりの負担になっている。そこで、教科書の無料化、低価格化を目的に「Connextions」というプロジェクトがはじまり、オープンソースみたいな形で大学の教員が工学部の学生向けに使う教材を自前で協力して作成し、学生に低価格で提供している。

    このような教材がそろっても、どれを独力で使いこなすノウハウがなければ、効率よく勉強できない。そこは、指導者に依存するところですが、そのノウハウも、オープンに提供しようという試みもある。「MERLOT」「MOST」

    オープンエデュケーションによって、「教育機会の平等」が実現することが期待される。オープンエデュケーションによって、格差が解消されることはないが、格差が生じたことによって生じる教育機会の損失は解消できるのではないか。

  • 調べたいものは何でもウェブで調べる時代、

    フリーの授業動画なんかがあってもいいんじゃないかと常日頃から思っていましたが、あるのですね!

    といっても、アメリカなど外国のものが多く、イスラエルなどは、このフリーのネット学習だけで試験さえパスすれば学士が認められるという!

    日本は出遅れておりますね、、、残念です。

    本書は、自分の為にお金を使うことが出来ないけれどまだまだ学びたい人(私のような専業主婦など)にとっては、希望の光です。

    その前に、ネット講義を受けるための英語を身につけねば!

  • オープン・エデュケーションは21世紀の教育ツール。学びたい人がより学べる環境を提供する革命的な変化が今起きている。

  • 4冊目。英語で学ぶために、英語を学ぶてのは、重要な考え。

  • p19
    私が編み出した学びの方法は、これらビジョナリーたちが発する言葉にできるだけたくさん接し、その言葉の背景にある思考や発想に寄り添って考え、その結果を構造化するということでした。
    p27
    質の高い教育を受ける欧米の若者たちは、「お前は何者なのだ、お前の価値は何だ、これからお前は何をしたいのだ」と常に問われながら育ちます。個を磨き、自分の個性を発信しながら生きていくようにと、子供のころから教えられます。
    p85
    オープンエデュケーションによって、教育を開花、深化させるために何よりも必要なものは、みなさん一人ひとりの自助力と互助力なのだ。
    p102
    特にアメリカ特有のものとしては、先ほどの「フロンティア精神」「互助精神」に加えて、テクノロジー至上主義があると思います。
    p105
    所詮アメリカは、多人種、多民族、多言語、多文化が共存している人工的、実験的な国なので、僕はテクノロジーの進歩によって世界の人々がよりつながり、相互理解や友好関係を深めようとすればするほど、世界全体が「アメリカ的」になっていくのは、ある意味で不可避的な流れだと思います。
    p172
    日本の大学で「楽勝」の授業が人気があるのとは裏腹に、この授業は「非常に難しい」が故に毎年抽選になる人気授業だったのです。
    p209
    とにかく重要なのは、ただ勉強しているとか、ただ考えているとかではなくて、何でもいいから実践的なプロジェクトに関わって、人とつながっていくことなのだと思います。
    p210
    運や偶然をつかむ秘訣とは、誰かの心に印象を残して、大切な時に誘われる能力だと、僕は思っているんです。
    p261
    やはり一生学び続けながら「仮説検証実験」を繰り返していくことが大事なのではないでしょうか。

  • 最近読んだ本の中では、もっとも多く未知の情報を与えてくれた。この情報量はすごい。関心のある分野だし、
    こういう仕事がいずれしたいな〜

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