後藤新平: 大震災と帝都復興 (ちくま新書 933)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066398

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  •  後藤新平の東京復興における幸運な、運命的なことは「台湾のインフラ整備」「満鉄の開発」とリアルシムシティを体験できたことだ。また、そこで培った人材を十分に駆使したことで東京を近代都市に成し得たという流れを非常に面白く読んだ。
     東京の開発復興はいろいろの政争や予算の関係で縮小せざるをえなかったのだが、それでも7億円強の予算を通せたというところは今までの蓄積の結果だというのが物悲しくもある。

  • [ 内容 ]
    東日本大震災を機に、関東大震災後の帝都復興に稀代のリーダーシップを発揮した後藤新平が再び注目され始めた。
    なぜ後藤のような卓越した政治家が出現し、多彩な人材を総動員して迅速に復旧・復興に対処できたのか。
    壮大で先見性の高い帝都復興計画は縮小されたにもかかわらず、なぜ区画整理を断行できたのか。
    都市計画の第一人者が「日本の都市計画の父」後藤新平の生涯をたどり、その功績を明らかにするとともに、後藤の帝都復興への苦闘が現代に投げかける問題を考える。

    [ 目次 ]
    序 再評価されるべき後藤新平
    第1章 生い立ち―水沢の気風と陪臣の心意気
    第2章 地方の医師から内務省衛生局長に
    第3章 台湾総督府の民政長官
    第4章 満鉄の都市経営―大連と長春
    第5章 東京の都市問題―都市計画法の制定
    第6章 関東大震災と帝都復興計画
    第7章 帝都復興事業の遺産

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  •  越澤先生には、都市計画・歴史風土分科会長を長くお願いし、大変お世話になっている。

     今回、さらに、本をいただいたので、さっそく読了。

     越澤先生には、いつもいわれている、「後藤新平は、市長時代の8億円計画の実績があったから、復興計画にすぐとりくめたこと」「復興事業の成果を、そののちの都市計画は隅田公園を初めとして食いつぶしてきたこと」など、まったく、そのとおりで、都市計画行政にあるものとして、反省すべきところは多々ある。

     最後に小さな字で越澤先生が東日本大震災の復興対策についてアドバイスをしており、自分として特に大事だと思う点を三つ。

    ①第二に、発災後、大至急きちんとした現地調査をし、それを踏まえた議論と政策検討をすべきこと。被災地から遠く離れた机上の議論は控えるべきであること。

     もっとも強く反省したい。

    ②第五に、これまで地元で一度も議論したことがないような復興メニュー(例えば、漁村の統合、漁業権の民間参入など)は地元を混乱させるだけであり、その提示は政治と行政は慎重にすべきだろうこと。

     そのとおりだと思う。自分としては、そのような奇想天外がメニューは控えているのだが。

    ③第六に、地元で暮らしてきた人々の早期の生活再建、雇用の確保が復旧、復興の大目的であることを忘れないこと。また、被災した私有財産に対して税金による支援の範囲、税金で支援できないことの区別を早期に提示すること。

     復興は生活と生業の再生と考えており、先生の意見のとおりと思う。私有財産への支援も、復興費用を全国民に分かち合うという観点から、当然限界があり(税金で個人の私腹をこやすことになってはならな)、その点は、三次補正案の中でもきちんと整理したつもりです。

     自分は、越澤先生の都市計画の本はすべて読んでいるつもりだが、都市計画、まちづくりを目指す若者たちにも、是非、読んでもらいたい。

     自分の危惧かもしれないが、都市計画に愛情をもって勉強する若者が減っているような気がするのが心配。

     越澤先生の『復興計画』とか必読書だよ。

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