生物から生命へ: 共進化で読みとく (ちくま新書 954)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066572

感想・レビュー・書評

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  • 生きているモノとしての生物観から、生きているコトとしての生命観へ…。そのためには、共進化という見方がカギになります。そうやって見ていくことで解き明かされる多くのことがあり、獲得できる多くの視点があることがわかります。複雑系と呼ばれる科学分野に属する学問・研究のようです。たとえば、こういうおもしろい実験があります。囚人のジレンマをベースにしたプログラムをコンピュータ上で動かしてみる話。協力個体と裏切り個体、どちらか強くなるか、つまり協力しあう社会になるか裏切りの蔓延する社会になるか、その他にネットワークの多さを見たりなど共進化の観点から実験してみる。裏切り個体の多い中で、偶然、少ない協力個体のネットワークが生まれるとそこが強くなり、そのうち協力をする個体が優勢になり、協力しあう社会になっていくそうです。しかし、そこで安定せずに、協力しあう社会の中で裏切り個体が得をするようになり、ついには殺伐とした裏切り社会に戻るようなのです。そして、その繰り返しになるというのだけれど、世の中の移ろいもそのとおりかもしれないなあ、なんて思いませんか。安定せず、巨視的にみるとたえず揺らいで、協力と裏切りの間を行き来する。協力がよい、裏切りがよい、というそれらのための文脈、というか背景ができあがるためなんだろうなあ。こういうことを知ると、永世的に続いていけばいいような思想や論理なんて実はないんじゃないかと思えてくる。そういうのを求めても徒労に過ぎないのかもしれない。生きやすさや生きづらさとはなんぞや、という問いも、また違って見えてくる。だから、今、「これが真理」だとか「これが正しい」とか言われていることも、瞬間的なものでしかないんだってことになりますね。

  • 共進化という概念を用いて生命を抽象的にとらえようとする一冊。
    生命とは何かと考えた時に、人間、虫、鳥などといったようなものがすぐに浮かんだ場合、それらは具体的な生命である。この本では生命の普遍的理解を目指す。そこで共進化という概念、構成的手法が重要になる。
    共進化…お互いの生命のプロセスが主体としてお互いに対して能動的に影響を与え合うこと。(能動的…相手を変えること、自らを変えること)
    構成的手法…現象を自分で作って理解していく方法⇔要素還元論的手法
    上記をキーにして、生命に広がりを持たしながらとらえている。例えばある2個体が存在する場合、常にどちらか一方の影響のみに着眼するのではなく、相互の影響プロセスをとらえ生命を理解する。(生命同士だけでなく、環境、文化、言語と生命間もこの考え方でとらえている)めっちゃおもしろい。この考え方は様々なことを考える際に活かせる気がする。時間、空間に広がりを持たせ、相互の作用に着眼することが抽象的な理解の手助けにつながる。

  • 第六章が参考になった。
    遺伝的情報と文化的情報が共進化するという考え方。
    リチャード・ドーキンスによる「ミーム」の概念を紹介しながら。


    もう一歩踏み込んで、共進化について考えたい。私にとって、そのきっかけとなった。

  • 読後,あとがきにある通りの不満が残る.これは著者も意識していたことだろう.

    単純な行動をとる小要素群がどのような振る舞いをするか,この手の進化のシミュレーションはコンピュータ中での箱庭を研究者が作りあげ,パラメータを調整しながら観察することによって行われる.
    この結果が「実際の生物らしい」ふるまいをするからといって,本質をついたものかどうかはまた別の問題となる.

    非常に興味深い結果が得られることは理解できるが,どこか物足りない.
    複雑系関連の書籍でも言えるが「すっきり」する内容はどうすれば得られるのだろうか.

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