数学による思考のレッスン (ちくま新書 972)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066756

作品紹介・あらすじ

「考える力」の精髄は、論理性ではなく想像力にある-数多くの数学五輪メダリストを育ててきた著者は、優れた知性に共通して備わる資質を見つめ続けてきた。本書は、算数・数学を中心とした歯ごたえのある問題を解くことを通じて、読者が思考に際して頭の中で起きていることを自覚し、自らの思考力をどうすれば伸ばせるのか手がかりを得ることを目指す。学校教育では学べないトップレベルの思考の奥義をひもとく、数学版「新・考えるヒント」。

感想・レビュー・書評

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  • 数学の話ではなく、思考の話。
    考えることについては自分自身いつも興味を持っているので、この本は興味深い。

    分析とは、
    ある対象をいろいろな要素に分けて捉える
    ある対象を様々な側面、観点から捉える
    ある対象をより小さな単位に分割して、その組み合わせとして捉える
    ある事柄を、より基本的な事柄をもとに説明する
    以上の4つに分けられる。

    思考というか、数学の問題を解くにはある種のアイデアというか、発想のセンスが必要なようだ。これは子どもの頃から発達するようだが、具体的になにをすれば伸びるかはわからない。
    数学的なもんだいを楽しむことがベースになるのかとは思う。
    パズルとか、構造的なことを考えるとか。じぶんにはイマイチ理解し難い。

    たくさんの問題に触れて自分なりに考えるという経験を重ねる必要があるのではないか。

    考える、とは自分の世界に謎や異物、問題が投げ込まれた時その謎の理由を探り異物を自分の世界に位置づけ問題を解決しようとする運動である。
    大まかに言えばそれは無数のシンボルやイメージを自分の中で整合的に組み立てていく作業であり、想像力、論理、イメージを整理し構造化する力といったいろいろな能力が関与している。その中ではどうやら想像力が広大な部分を占めているらしい。また思考力出た人と凡人を区別するのは論理でなく想像力である。
    人間は白紙から思考するわけではない。
    文化によって刷り込まれた世界堂や、自分で開発した世界堂がまずあって、そこから始めるのだ。地下すぎも当然小さすぎもせず身近な日常世界である。

    面白いことが書いてあった。
    物事を推測する時、自分だったらどうするかと言う問題があって自分が仮に政府の金融担当者だったら、株価についてどう考えどのような手を打つか。こうした相手が打ってくる手を読む事は自分が彼の立場になりきって読みを入れないとわからないことである。そこではいろいろな場合を想定しシミュレーションした上で、その後の現実の推移と比較検討した上で、シナリオ修正しなければならないだろう
    少し考えてみれば、世の中に考える材料はいくらでもある。考えたい人にとってはこの現実は謎の塊であり、思考の素材の宝庫なのだ。

    思考のためには自分の世界を作るのが必要だ。そのためには様々な情報や現実に触れて情報を蓄積し、自分なりの世界を構築していくこと。その中から、現実を見ることによって違和感を見つけ思考の幅を広げていく。

  • 【2019年度「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
    川村悟史さんの推薦図書です。

    <推薦理由>
     思考力の根幹は想像力であり,想像力とは断片から全体を復元する能力である,論理はそれを補佐するに過ぎない,というのが著者の主張.思考法のハウツー本ではなく,想像力とは何なのかを詳細に掘り下げた本.学生の皆さん,レポートの考察が書けないのは想像力が足りないからです.想像力を鍛えましょう.

    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    http://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00344823

  • 3つの視点(普通の視点に加え、微視(みくろ)と巨視(マクロ))はためになった。

  • 良著です。

    タイトルからノウハウ本•ハウツー物の類かと思ってしまいましたが、「思考」についての深い考察を述べた、学問的な本です。

    特に印象に残ったのはp.154〜163辺りです。

    数学において、「何かをわかるとは、ある意味では時間を越えること(一瞬にしてわかること)」であり、「パーツは順を追って捉えられるのではなく、それらを結び合わせる糸ごと鳥瞰され、無時間的な構造と化するからこそ、わかったという気になる」とのことです。

    これは数学に限ったことではないでしょうから、ビジネスや教育、子育てにおいても、本書で述べられた「思考」を理解しておくことは非常に有用だと思います。

  • 数学に関する本というよりは、想像力に関する本。想像力をつけることの大切さを感じた。

  • かなりの硬派。
    どれくらい硬派かって言うと、例題を出しておいて手取り足取りの具体的な解法は示さないくらいの硬派。
    しかし、提示されるエッセンスは極めて抽象度、質が高い。
    思考力の本質は情報処理ではない。この一文の意味するところは大きい。
    願わくば我、野武士たらん。

  • 数学というより、思考の方法を論じた新書。想像力バンザイヽ(^o^)丿一方で、論理は想像力を支える役目を果たすにすぎないが、それすらも危うい。
    せっかくだから、いろいろな物事に触れて、常に自分を更新していこうか。とかそんなことを考える良書。

    勉強法とかそういう本とはちょっと違うよ

  • 「思考」というものの本質を、数学の問題を解く時の頭の使い方から考察した本ですが、今までに読んだこの手の本の中で、最も説得力があるものだと思いました。
    論理性や情報処理能力偏重の教育を批判し、想像力やその基盤となる基礎教育の重視を主張する意見そのものは特に目新しいわけではありませんが、単なる個人の経験則だけで語るのでは無く、その根拠、考え方の枠組みをきちんと具体例から導いたモデルで説明しているところが新鮮です。
    非常に勉強になりました。

  •  数学の問題を解く際の思考を分析して,数学以外の思考にも応用できないか,というのを追及したみたい。しかしあんまりしっくりこないな。第二章の数学の考え方だけで十分だよなぁ。
     特に,「もし」という思考法のススメで微妙なこと言ってるのには引いた。リビア紛争とかストロスカーン氏逮捕とかを含めた2011年2月以降半年に起きた世界史的?事件を,「すべては『アメリカ中心の世界の枠組み』という一つのキーワードに収斂していく。」とか言ってるし。
    「私は陰謀説はとらないが」と言いつつ,「もしかしたら、アメリカ(の一部)が全力を挙げて世界の枠組みを変えようとしていたのではないかという疑いも、多少は気をつけてみておいた方がよい」とか。うーん,この人,数学オリンピックを目指す学生を教えてるとかで数学は得意みたいなんだけど…。
     最後にウケたのが,「ネット上には『情報と思考の野武士』が生れつつある」という持論。具体的には書いていないが,アルファブロガー(死語)とかかな?新聞やTVといった大名たちに敢然と立ち向かう,思考力に秀でた人たちのことらしい。そしてその野武士には家来も大勢。 むう。妙な喩えだな…。

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著者プロフィール

元駿台英才セミナー講師

「2019年 『暗算力 誰でも身につく!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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