夢の原子力 (ちくま新書 971)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066763

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  • 吉見俊哉『夢の原子力 Atoms for Dream』(ちくま新書、2012年8月)税別900円

    東京大学大学院情報学環教授(社会学・文化研究)の吉見俊哉(1957-)による、電力という近代の象徴の受容をめぐる社会学アプローチ。

    【構成】
    序 章 放射能の雨 アメリカの傘
    第1章 電力という夢 革命と資本のあいだ
     1 革命としての電気
     2 電力を飼いならす
     3 総力戦と発電国家
    第2章 原爆から原子力博へ
     1 人類永遠の平和と繁栄へ
     2 列島をめぐる原子力博
     3 ヒロシマと原子力博
     4 冷戦体制と「原子力の夢」
    第3章 ゴジラの戦後 アトムの未来
     1 原水爆と大衆的想像力
     2 記憶としてのゴジラ
     3 ゴジラの変貌とアトムの予言
    終 章 原子力という冷戦の夢

    本書の内容・視角は2011年に文庫本化された『万博と戦後日本』とほとんど変わることがない。序章などはまるで同じである。

    しかし、第1章の18世紀以来の電化=近代化パラダイムを経て、第2章の冷戦下の原子力化=現代化(という表現を著者は使ってはいないが)へ至る道筋をみれば、なぜ日本が原子力という手段での電力供給の道を選んだのかが見えてくる。

    著者は、戦後日本を覆っていた夢の原子力は「陽光」から「放射能の雨」に変わり、「アメリカの傘」をさす以外の方法を見いだせていないと言う。たしかに戦後日本は長い夢を見てきたのかもしれない。

    しかし、現実は万能の力を持つアメリカ合衆国が日本国民を洗脳したなどということではないし、日本国民が危険性を承知せず空想的な未来社会のみを渇望して原子力を受け入れたわけではない。もっと切実で、もっと実際的な必要性に駆られて原発は建設されたはずである。

    スマートな整理の仕方であるが、やはり物足りなさを感じる。

著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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