前田敦子はキリストを超えた: 〈宗教〉としてのAKB48 (ちくま新書 987)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 415
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067005

作品紹介・あらすじ

AKB48の魅力とは何か?なぜ前田敦子はセンターだったのか?"不動のセンター"と呼ばれた前田敦子の分析から、AKB48が熱狂的に支持される理由を読み解いていく。なぜファンは彼女たちを推すのか、なぜアンチは彼女たちを憎むのか、いかにして彼女たちの利他性は育まれるのか…。握手会・総選挙・劇場公演・じゃんけん大会といったAKB48特有のシステムを読み解くことから、その魅力と社会的な意義を明らかにする。圧倒的情熱で説かれる、AKB48の真実に震撼せよ。

感想・レビュー・書評

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  • 2021年7月12日読了。「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」という有名な前田敦子の、2011年総選挙でのスピーチに象徴されるAKBの「宗教性」・アイドルを超えた何かについて「近接性」「偶発性」のキーワードをもとに読み解こうとする本。「空虚な中心」ということ?圧倒的に優れたものがセンターになるわけではない運営が「アンチ」も取り込みうること、それぞれ異なる「推し」を持つファンもアンチも巻き込むシステムが「総選挙」であること、など…。ガチのAKBヲタが書いているだけあり、特に後半・ぱるる推しをカミングアウトしてからの章はキモくて読んでいられないが、筆者の主張自体は興味深く読んだ。現在の〇〇坂などのグループも、AKBシステムの発展形として考えてよいのだろうか?

  • 2021年4月27日、記入。

    前田敦子さんと勝地涼さん、離婚を発表した、とのこと。

    ウィキペディアでは、前田敦子さんは、次のように紹介されている。

    前田 敦子(まえだ あつこ、1991年〈平成3年〉7月10日 - )は、日本の女優、歌手。愛称はあっちゃん。
    元既婚者で1子の母。
    女性アイドルグループ・AKB48の元メンバー。
    千葉県市川市出身。
    2020年12月31日まで太田プロダクションに在籍し、2021年1月1日より、フリーで活動中。
    元夫は俳優の勝地涼。


    ●2023年7月13日、追記。

    AKB48の第1期生として、2012年まで活動していたとのこと。

  • 何回震撼するねん!と思いつつも共感はできる。この本を読む数日前にNHKで深夜に放送していたAKBのドキュメンタリーを見てしまったからだ。アイドルにはまる理由がわからない、という拒絶の姿勢だとたぶん何の面白みも感じられないとは思うが、そこに共感できるなら面白く読めるだろう。でも、深みはあんまり感じなかったな。

  • 宗教社会学専攻(修士一年)からの視点で。

    宗教の構成要素とされるものは脇本平也『宗教学入門』(1997,講談社学術文庫)によれば、教義・儀礼・教団・体験の四つに大きく大別されます。とはいえ、たとえば神道など教義が存在しない宗教も存在するため、必ずしもこれがなければ宗教とは呼べないというものではないですが、AKBにおいて、存在するものの、濱野さんが語っていない部分、つまり『前キリ』を宗教学のテキストとして読んだときに大きく欠けているのが教団(ファンコミュニティ)への言及だと思います。そしてこの本は体験の記述が多い点から宗教学ではなく、神学によっているテキストとも言えます。
    いったん宗教学のほうの話をすると『宗教学入門』で、宗教の機能とされているものは「補償」と呼ばれるものであります。一言で言えば、コンフリクトの解消を担うものです。なんらかのコンフリクトを抱えた人間がその解消を求めて、参拝などの宗教行動(受験の合格祈願をしに行くなど)をとる、あるいは入信を果たす。AKBには一見その機能はない、と思うと思いますが、それは早計であると思います。説明のための例としては、創価学会における座談会がよいでしょうか。これは簡単に言えば、教団員の間で悩みを語り合う場とされています(玉野和志『創価学会の研究』(2008,講談社現代新書))。語り合う場、というのはそれだけではありますが、存外に重要な場であり、社会から孤立している存在(アノミー)を生み出さない、という点で非常に重要な場であると思います。その場ははっきり言ってなんでもいい。宗教団体でも、AKBでも、家族、地域なんでも良いと思います。しかし特殊的宗教集団に入信する人々は家族や、地域といった生れ落ちたコミュニティから阻害されている場合が多いと思われます(創価学会が躍進したのは、都市部に流入し、田舎との繋がりが断絶した若年層を取り込んだことだと言われています)。生得的に得られる宗教でないもの、"わざわざ"入信をする宗教のことを特殊的宗教と呼称しますが、AKBを宗教とみた時にこれにあたることになるかと思います。AKBをこれとして話を進めますが、いわゆるカルト、と異なりAKB有効性が認められる点は市場に乗っかることにより、開かれているため、反社会的行動には移行しにくい、という点であると考えます。じゃあAKBじゃなくてもいいよね!とされると思いますが、まったくそのとおりで、つまりはAKBであることの必然性などありません(あるいはキリスト教、仏教、イスラムである必然性もまったくないと考えます)。

    話が変わって、『前キリ』を神学として読んだ場合ですが、我らの神はあなたがたの神より優れている、と述べるのは自らの宗教の正当性を主張する際によく取られる手法だと思います。また書かれている内容、特に体験(レス)の記述が多いことも神学的だと言えるのかもしれません。私は神学テキストを研究したことはあまりないので、確定的なことは言えませんが、体験の記述が多く、また自らの神(ぱるる)をセンターである!と述べる濱野さんの態度は神学のそれであるといえるのかもしれません。

    宗教学専攻のぼくとしては『前田敦子はキリストを超えた』かどうかではなく、AKBに宗教的な機能がある、とするならばそれはどんな部分で、また宗教にある機能でAKB(やその他コミュニティ)にない部分があるのであれば、それは宗教の独自性であり、定義である(もしくはそんなものはなくて、「宗教」とはまやかしなのかもしれない)、と最終的には述べたい。前提として『前キリ』を宗教学、あるいは神学のテキストとして読んでしまっている点は否めませんが、もし、構造的に神学テキストとして読めるのであれば、逆説的にAKBは宗教である!(「宗教」とされるものだけが宗教ではない!)という結論が導きだせるのかもしれない、という意味では興味深く読まさせて頂きました。

  • 『AKB48白熱論争』がすごく面白かったからあれより面白かったっていうイメージじゃないんだよなあ、あとメルマガプラネッツで少し読んでたから新鮮味があんまりない。

  • 近接性→超越性

    近代
    社会システムが複雑性を縮減されたうえで作動可能

    独裁体制に対する民主化としての総選挙

    吉本 マチウ書

    ネットの匿名アンチ⇔実際に会いにくる現場でのオタクたちによる承認

    貨幣→商品→貨幣
    草貨幣→劇場→草貨幣

  • 授業でアイドルへのファン心理も信仰心と通底するとか僕も言ってるけど、宗教をカッコ付きのキリスト教でしかとらえてない本書とは、まったく立場が違うという話を今度しないと。

  •  一世を風靡したAKBというグループの特異点をあげて、それが社会にどのような影響を与えるかを考察する本。著者は「近接性」と「偶然」の2つが、従来のアイドルグループと異なる点であり、それらが独特の関係性、共同体、利他性を生むのだという。今回この本を読んで、柄谷行人が唱える「交換様式」と似たものを感じ取った。資本主義社会のなかで、資本主義を真っ向から否定するのではなく、それに乗っかったうえで多くの人々(国境を越えて)に贈与する。これは数々のソフトパワーを有する日本にとって、ある種の国防戦略として取るべきかもしれないと思った。

  • 宗教というよりはリーダー論バージョンⅡって感じでしょうか...。プロダクトライフサイクルとロングテールの違いに改めて気づく...。

  • 前田敦子はキリストを超えた・・・知らんけど、
    「私の事は嫌いでも、AKBの事は嫌いにならないでください」
    人類の罪を背負って磔刑に処せられたキリストにちなんで、
    「ゴルゴタの丘のあっちゃん」という著者の的確な例えのセンスすごい。
    AKB総選挙の始まりについてを知り、
    とても興味深く、社会史との近似性を感じた。
    秋元康独裁政権 → デモクラシー → 総選挙
    これは学校教育に取り入れてもいいくらいの
    社会学のモデルケースではなかろうか。
    理屈っぽい語りによるオタ心理も読めておもしろかった。

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著者プロフィール

1980年生まれ。情報環境研究者。著書に『アーキテクチャの生態系』(NTT出版)、共著に『希望論』(NHK出版)、共編著に『日本的ソーシャルメディアの未来』(技術評論社)など。

「2012年 『恋愛のアーキテクチャ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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