日本の雇用と中高年 (ちくま新書 1071)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067739

感想・レビュー・書評

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  • 一度レールを外れると、年齢が足枷なって再挑戦もままならない。簡単に鶴首できない企業の負担もあるだろうし、組織に縛り付けられる被雇用者にも自由がない。日本的な就労制度は、見直す余地があるのではないか。メンバーシップ型の限界があるのでは。

    事実がよく整理されているが、新たな主張がある訳ではないので、論説としては面白みがない。ジョブ型とメンバーシップ型を比較して、必ずしも片方が突出して優れている訳ではない。中高年の方が若者より労働力としての価値が低く、転職も難しい割に、年功制もある程度考慮しなければ、子育てなどの必要コストに見合わない。

    転職の問題について、もっと論点に取り入れる必要がある。雇われ根性を丸出しにしないで、自ら会社を興せば良いのかも知れないが、簡単ではないし、人間はやはり組織に属して労働する事にも基本的な欲求があるのだろう。そうした意欲を健全な形で活かせるように出来ればと思う。

  •  年功制に基づいていたずらに世代間対立を煽る論調があるけれど、実はそのような若者の雇用問題をピックアップすることで、年功制における中高年の問題が後景に退いてしまった。

  • 日本型の雇用システムでは本来社会保障など公的な枠組みの中で行われるべき支援がを企業が肩代わりしているという指摘が面白い。それが熟練度に関係なく年功序列で給料が上がりつつける一方で、不景気になると真っ先に中高年がリストラの対象になることの説明としてしっくり来る。少しずつ雇用慣例も変わりつつあると感じるが、企業と社会政策が両輪となって移行しないと上手くいかなそう。

  • 序章 若者と中高年、どっちが損か?の不毛
    ・若者雇用問題がなかった日本
    ・「雇用問題は中高年」だった日本
    ・「中高年雇用」問題の有為転変
    ・表層の損得論を捨ててシステム改革を論じよう
     
    第1章 中高年問題の文脈
    1 欧米の文脈、日本の文脈
    ・1997年神戸雇用会議-欧米は若者、日本は高齢者に主な関心
    ・欧米の文脈-早期引退促進政策はもうとれない!
    ・日本の文脈-中高年失業が焦点に
    ・日米欧共通の文脈-長く生き、長く働く
    2 ジョブ型を目指した時代の中高年対策
    ・1960年代の日本はジョブ型労働社会を目指していた
    ・職業能力と職種を中心とする近代的労働市場の形成
    ・職種別中高年雇用率制度の完成
    ・企業単位高年齢者雇用率制度へ
    ・年齢差別禁止法への試み
    3 年齢に基づく雇用システム
    ・年齢に基づく雇用システムの形成
    ・年齢に基づく雇用システムの法的強制
    ・年齢に基づく雇用システムの再編強化
    ・職務給を唱道していた経営側
    ・職能給に舵を切り替えた経営側
    ・労働側の逡巡と横断賃率論
    ・あべこべの日本的レイオフ制度
    4 中高年受難時代の雇用維持政策
    ・石油危機による雇用維持政策への転換
    ・産業構造転換への内部労働市場型対応
    ・現場で進む中高年リストラ
    ・合理化の指針
    ・整理解雇法理の確立
    ・年齢基準の容認
     
    第2章 日本型雇用と高齢者政策
    1 日本型雇用法理の確立
    ・生産性向上運動と配置転換の確立
    ・配置転換(職種変更)法理の確立
    ・配置転換(勤務地変更)法理の確立
    ・出向・転籍の出現と拡大
    ・出向・転籍の法理
    ・配置転換に順応する労働者
    2 日本型雇用システム評価の逆転
    ・「近代化」論の時代
    ・OECD対日労働報告書
    ・内部労働市場論の流行
    ・日本型雇用のアキレス腱
    ・日本人論の文脈
    3 60歳定年延長の時代
    ・定年制の歴史
    ・定年延長政策の始動
    ・賃金制度改革とその判例的遺蹟
    ・60歳定年の法制化
    4 65歳継続雇用の時代
    ・なぜ継続雇用なのか
    ・継続雇用努力義務の法制化
    ・継続雇用政策と年齢差別禁止政策の絡み合い
    ・継続雇用制度の例外つき義務化
    ・継続雇用制度の例外なき義務化
    ・解雇と定年の複雑な関係
     
    第3章 年齢差別禁止政策
    1 「中高年問題」の復活と年齢差別禁止政策の登場
    ・90年代リストラの標的は再び中高年
    ・中高年雇用政策の復活
    ・年齢差別問題の提起
    ・経企庁の年齢差別禁止研究会
    ・労働省研究会の逡巡
    ・求人年齢制限緩和の働きかけ
    ・中高年と職業訓練校
    2 年齢差別禁止政策の進展
    ・2001年雇用対策法改正による努力義務
    ・年齢にかかわりなく働ける社会の模索
    ・総合規制改革会議の要求
    ・2004年改正による年齢制限の理由明示義務
    ・民主党の年齢差別禁止法案
    3 若者(若い中高年)雇用問題としての年齢差別
    ・年長フリーター問題の政策課題化
    ・「再チャレンジ」という問題設定
    ・政治主導による年齢制限禁止
    ・2007年雇用対策法改正による年齢制限禁止
    4 「年齢の壁」を超えて
    ・経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会
    ・70歳現役社会の実現に向けて
    ・継続雇用政策の陰で
    ・40歳定年制論
    ・諸外国の年齢差別法制
    ・人権擁護法案における年齢の欠落
     
    第4章 管理職、成果主義、残業代
    1 日本型システムの中の管理職
    ・「ミドル」という言葉
    ・そもそも「管理職」とは?
    ・社内身分としての管理職
    ・機能と身分の間
    ・ジョブ型労働法制との矛盾-労働時間法制
    ・労働組合法制と管理職
    2 中高年を狙い撃ちした成果主義
    ・「知的熟練」の幻想
    ・日本型雇用システム改革論の復活
    ・成果主義の登場と迷走
    ・人事査定の判例法理
    3 中高年残業代対策としてのホワイトカラー・エグゼンプション
    ・労働時間規制と残業代規制
    ・日本的「管理職」との妥協
    ・ホワイトカラーの労働時間問題と企画業務型裁量労働制
    ・ホワイトカラー・エグゼンプションをめぐる空騒ぎ
     
    第5章 ジョブ型労働社会へ
    1 中高年救済策としての「ジョブ型正社員」
    ・「追い出し部屋」の論理
    ・職務の定めのない雇用契約
    ・「ジョブ型正社員」は解雇自由の陰謀か?
    ・「ジョブ型正社員」とは実は中高年救済策である
    ・途中からノンエリートという第三の道
    ・継続雇用の矛盾を解消するジョブ型正社員
    2 中高年女性の居場所
    ・OL型女性労働モデルの確立
    ・社内結婚
    ・女子結婚退職制
    ・男女別定年制
    ・男女雇用機会均等法とコース別雇用管理
    ・基幹的パートタイマーから「ジョブ型正社員」へ
    3 中高年問題と社会保障
    ・教育費と住宅費は年功賃金でまかなう社会
    ・問題意識の消滅
    ・児童手当の迷走
    ・福祉と労働の幸福な分業体制

  • 2020年5月再読

    日本の労働慣行がどうして今のようなかたちで成立したのかということについて、本当に分かりやすく解説してくれている。
    私がこれまで読んだ本の中では、その部分については、 one of the best の本。

  • 10 学ぶことと働くことはどのような関係にあるのか[上原慎一先生] 1

    【ブックガイドのコメント】
    「濱口氏の著作には参考文献に挙げたもののほかに、属性毎に特化したものがある。」
    (『ともに生きるための教育学へのレッスン40』183ページ)

    【北大ではここにあります(北海道大学蔵書目録へのリンク先)】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001611607

  • 立論は明確です。ジョブ型雇用への移行、社会保障と企業雇用の住み分けなど、示唆に富む考え方が盛り込まれています。一方、そのような社会を構築しているヨーロッパにおける課題にも触れられていれば、もっと理解が進むかと思います。

  • 欧米組織は契約型、日本組織は所属型とはよくいわれてきた議論であるが、著者は、ジョブ型とメンバーシップ型という視点から、日本企業のサラリーマンの働き方や職務、労働時間、処遇のあり方など、何故矛盾や齟齬が起こるのかを説く。歴史的な観点から企業内での教育訓練がなぜ普及したか、採用や定年制、年齢差別など、裁判の判例や政府の右往左往する政策方針についても言及している。

  • 社会

  • 労働・雇用のシリーズインプット。紙の本に到達しました。

    主張は同じなので早く読めるようになった。
    状況の評価、ということになるのだろうな。。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、労働省入省、欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て、現在は労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員。主な著書・訳書に、『日本の雇用と労働法』(日経文庫、2011年)、『新しい労働社会――雇用システムの再構築へ』(岩波新書、2009年)、『労働法政策』(ミネルヴァ書房、2004年)、『EU労働法形成過程の分析』(1)(2)(東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター、2005年)、『ヨーロッパ労働法』(監訳、ロジェ・ブランパン著、信山社、2003年)、『日本の労働市場改革――OECDアクティベーション政策レビュー:日本』(翻訳、OECD編著、明石書店、2011年)、『日本の若者と雇用――OECD若年者雇用レビュー:日本』(監訳、OECD編著、明石書店、2010年)、『世界の高齢化と雇用政策――エイジ・フレンドリーな政策による就業機会の拡大に向けて』(翻訳、OECD編著、明石書店、2006年)ほか。

「2011年 『世界の若者と雇用』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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