「反日」中国の文明史 (ちくま新書)

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著者 : 平野聡
  • 筑摩書房 (2014年7月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067845

「反日」中国の文明史 (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 近年の日中関係悪化の背景として、「中国はなぜこう考えるのか」という問題を長い歴史から考える素材を示すことを目的に執筆されている。
    中国の歴代政府のベースにある考え方として、華夷秩序、儒学に基づく「徳治」「礼治」があり、それが近代国際関係とは相容れないものであること、そしてそれを無理矢理近代国際関係に合わせるために「中国人」「中華民族」としてのナショナリズムを清末民初に急ごしらえしたことが、日中対立の根底にあることを指摘している。
    清帝国は、満州人皇帝が、漢民族には儒学的天子、モンゴル・チベットに対しては仏教王、東トルキスタンに対してはイスラームの保護者という顔を使い分けることによって成り立っていた多面的な帝国であり、満州人皇帝と個別の集団がそれぞれの論理で結びつくという統治構造であって、それは「単一の国民としての連帯」でなかったのに、国民国家を基盤とする近代国際関係に適合させるためにその領域に住む人々を「中国人」と定義し直そうとしたことが問題の根源になるという指摘は非常に興味深かった。
    少し単純化されすぎているのではないかという部分もあったが、様々な中国問題の背景、中国近現代史の要点を理解するのに非常に有益な良著だと感じた。

  • 「華夏」を中心とし、「礼」と「夷狄」の関係からなる中国文明が、清の時代に満・蒙・回・蔵をも取り込んだが、藩部という形でしかなかったこと。この中国文明が近代的な国民国家への変更を迫られたことによる「中華民族」の創出。19世紀後半から21世紀初頭に至るまでの中国の通史。これらを一冊の新書に盛り込んでいるだけに中身は濃い。「反日」に割いた頁はそれほど多くなく、無理にこれを書名に入れ込まずともよかったのではないか。とは言え本書が現在の日中関係を理解する上で無用とは思わず、むしろ、筆者があとがきでも問題意識を述べているように、現在の問題に向き合う上での背景知識となる中国への理解を深めるのには極めて有益と感じる。

  • 中国外交の基礎にある考え方を、文明論から説明。対日や対米の戦略だけでなく、中国がウイグルやモンゴル、チベットをどう考えているのかといったところがおもしろかった。漢民族が考えている中国の版図の中には、イスラームや仏教を信仰していてもいいという約束をしていた地域があった。そういった地域は、自分が中国の一部だなんて思っても居なかった。それが近代国家成立のタイミングで強引に「中国の一部」ということになったことから不幸が生じているのだという説明はわかりやすかった。

  • 中国近代史を客観的、俯瞰的に総括した良書。

    近年の同国の外交姿勢の背景が良くわかる。

    高校での歴史の授業の副読本にすべき。

  • 中華思想史、の超概略を日本の専門家が日本を視点に据えて書いたものである。が、タイトルのような軸ではなく、中国の話がメイン。近現代では先に開国に成功した日本から西洋思想を輸入したり、実際の軋轢が生まれてくる状況も書いている。
    基本的には天命と易姓革命に基づく中華思想が、西洋及び日本に打ち砕かれてまた近年復活している。以前は相入れなかった国民国家の考え方と結びつき、強力なナショナリズムを中国共産党は推進しているという話がわかりやすく書いてあると思う。ちなみに著者の政治的なスタンスは、中国の人の意思に反する以上先の戦争は侵略であるが、今の中国が領土に関する膨張主義を取るのは周辺諸国にとって断固危険であり、了承できるものではない、というようなもの。

  • いったい現代中国は何者なのか。

    およそあらゆる天命は、最初から存在するはずがない。後の統治のいかんによって、あるようにも見える呼ばないようにも見えるだけの事にすぎない。

    中国文明の歴史はマルクス主義にはなじまない。毛沢東にとっては、現実に横たわるあらゆる障害をも意志の力で克服する主観能動性、悪く言えば万円根拠なき思い込みが最も重要になった。

    究極のユートピア、共産主義社会の到来、労働に応じた分配ではなく欲求に応じた分配、共産党政権すら次第に死滅していく。

    人間の選挙区制をを死滅させる計画経済、10官僚が巨大な利権集団として暴走する、赤い貴族と呼ばれる特権階級、

    都市戸籍と農村戸籍、

    毛沢東の文化大革命、子様ジー精神的後輩が残った、カンボジアのポル・ポト政権、連合赤軍、人々が唯一信じられるものは、ただ単にものとかねのみとなった。

    中華民族と言う幻想、

    共産党は、貧しい労働者と農民の党からナショナリズムを担うエリートの党へと変身、

  • 【仕事】反日中国の文明史/平野 聡/20141202(93/267)
    ◆きっかけ
    ・職場図書室より、今回の中国初出張にあわせて

    ◆感想
    ・難しい硬い文章。もうちょっと平易な表現にできないか。出張後再読。

    ◆引用
    ・猛烈なスピードの経済発展により貧富の格差が拡大した結果、中国の内実は一つの国家というよりも、世界の縮図のようにバラバラ。
    ・日本の右翼化、集団主義は許せないが、中国ではそれが絶対であり正しい、というダブルスタンダード
    ・中国文明の世界観:不平等、上下、優劣の存在を前提として、それを理性的に操作する。=>朝貢貿易
    ・中国の理想の支配:すぐれた人格の聖人君子が良き統治に徹せることで、民衆がその徳になじみ、善政が実現する。

    ===qte===
    普通こういったタイトルは現代の視点から中国を見て徒に感情に走る傾向にあるが、この書物は筆者自身が中国の近代史をきっちりと学んだ
    上で、書かれているだけになかなかの説得力と安心感がある。

    筆者はまず中国文明の基本は万物をつなぐ上下秩序であるという。

    そして、その秩序を維持できない国家は滅びるという歴史感をずっと引きずって来ている。日本でいえば、明治以降、中国では清朝末期より
    の日中の関係は、中国にとって残念ながらこの上下秩序を維持できていない関係となっている。いや、日本と中国の関係は、過去に遡って
    も、足利時代のごく限定された時代を除いて、全く中国を目上の国と位置付けて朝貢を行うなどということが全くなかったのである。

    朝鮮とは全く異なる歴史が日中関係においては存在した。まして、近代清朝末期より、その日中間の差異はますます顕著となり、中国にとっ
    て大きなストレスになってくる。これは政体が共産主義であろうと全く関係のない歴史的事実である。

    中国は今でも「新・華夷秩序」を目指し、実質的帝国主義の道を進んでいると筆者は断罪する。尖閣問題もまさにその典型であり、70年代に
    尖閣近辺に石油が発見されたということで中国がいきなり尖閣を自己の所有と主張し始めていると言い切る。今、これを「領土問題」という
    ことで日本が認めてしまうと、中国は過去から領土争いは力のあるものが奪取すべき問題との認識で一気に攻勢をかけ、ひいては沖縄に
    すらその魔手を伸ばすのだ。

    中国における共産主義も官僚の腐敗からそう長続きはしまい、そうなるとこの日中関係も好転の可能性が出てくると私自身は少なからず
    期待もしていたが、やはりその考えも甘かったと思い知らされた気がする。中国との関係をきちっと知っておくという意味で必読の書物と
    思う。

    ===
    日本と中国との関係は近年悪化しているが、その原因や背景を把握するには、直近の状況、或いは近代以降のみを見るのではなく、長い二国間の歴史の流れを理解しないと現在が読み解けないものと考えられる。本書は政治外交史を専門とする研究者による、日中の歴史の来し方を踏まえた「現在地」の解説と言える。

    中国文明の立場は、我々が慣れ親しんでいる対等な立場を前提とするものとは異なり、二者の関係では上下関係が前提であり、強者が弱者を従えるという考え方である。
    更に周辺国とは朝貢関係の原理であり、(中国から見た場合)それは日本に対しても適用されており、中国は19世紀後半まで「天下」の中心という意識を持ち続けた。
    日本と中国との均衡関係が崩れたのが19世紀後半であり、忠実な朝貢国であった琉球の取扱も一つの焦点となった。

    中国の反日の源流は、近代国家としての日本の成功に憧れ、アジア人対欧米人という世界観の中で、日本に裏切られたとの思いに見出すことが出来る一方、現在の中国にはそれを正当化する論拠が乏しいとしている。

    現在の中国が、日本の右傾化を許さないとする一方で、中国の軍備増強、集団主義を貫く所はダブル・スタンダードであり、「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」という論語の意味する所からは乖離している。

    ==



    日本経済新聞社


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    福山大学教授 中沢孝夫

    2014/12/28付日本経済新聞 朝刊



    (1)人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著
    (東京大学出版会・2900円)
    (2)「反日」中国の文明史 平野聡著
    (ちくま新書・840円)
    (3)中小企業のマクロ・パフォーマンス 後藤康雄著
    (日本経済新聞出版社・5200円)






     (1)は「政治的誠実は結局知的誠実に由来する」という著者による日本の近現代の「知的共同体」論。南原繁、田中耕太郎、丸山眞男といった知の巨人たちの、戦前、戦中、戦後の思想的営為を読み解きながら、「時代」と「人」を浮かび上がらせている。「自らの思想を持つ者は、自らの古典をもつ」とする指摘は重い。


     (2)は中国の文明と思考方法を厳密に点検しながら、現代中国の存立の根拠そのものが、日本への深いコンプレックスにあることを、実に見事に解き明かした本である。


     (3)は「中小企業」を「同情」と「賞賛」の対象から解き放ちあるがままにマクロで捉えた画期的な研究成果。

  • この本が正確な中国との関係を書いたものかどうかという判断はできないけど、この切り口からの解説は僕の中に入ってきやすくて、すごくおもしろかった。

  • 本書は、現在の中国がわからない、理解できないという日本人に向け、中国の歴史を遡って、どうして中国人はそのように考えるのか、そのように行動するのかを解説したものです。ややもすると嫌中派にいいように利用されかねないところもありますが、著者の立ち位置は知中派だと思われます。真に日中の友好を願うからこそ言うべきことは言う、という態度だと思います。少なくとも日本の政治家も言いたいことを直接相手に言えるだけの関係を築いてもらいたいものです。

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