- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480067944
感想・レビュー・書評
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能楽師である著者が、日本の伝統的な身体観についての考察をおこなっている本です。
われわれが、西洋の科学的で分析的な身体のとらえかたになじんだ結果、自分自身の身体についてのもっとも直接的な知をうしなってしまっているのではないかという問題提起から、議論がはじめられています。そのうえで、著者自身がその伝統の一翼を担っている能についての例などを引きながら、分析的な身体についての知識によっては見えてこない、生きられた身体知のありかたが論じられています。
「生きられた身体」というテーマについては、市川浩や中村雄二郎、竹内敏晴といった論者たちが考察をおこない、近年では鷲田清一や内田樹などの思想家たちも関心を示してきました。本書の議論も、そうしたすでに長い議論の蓄積のある身体論と響きあう内容をもっていますが、日本神話から中国や古代ギリシアなどにおけるさまざまな事例をかなり自由に参照しながら、現代に生きる人びとが身体知のほんらいの豊かさにふたたび目を向けるようにうながしています。
「あとがき」で著者自身、「話は留まるところを知らなくなり、ほとんどもう一冊の本ができるくらいのものを書いてしまい、いつまでたってもまとまらなくなってしまった」と述べているように、やや奔放な議論の展開がなされているようにも思えますが、伝統的な身体知について考えるうえで興味深い切り口がいくつも示されているように感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間は言葉で世界を認識して分割する。本書は徹底的に言葉にこだわって、日本人の身体観を見つめ直す労作。こちらにもある程度の教養が必要な一冊かも(^_^;)