平和のための戦争論: 集団的自衛権は何をもたらすのか? (ちくま新書)

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著者 : 植木千可子
  • 筑摩書房 (2015年2月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068149

平和のための戦争論: 集団的自衛権は何をもたらすのか? (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 戦争がなぜ起こるのか。また、抑止の限界と意味。今後の日本の方向性。まさに現実的な視点に立脚するリベラルな安全保障。集団的自衛権とあと何が必須かが分かる。

    ・もともとイギリスの場合は、国民に戦争の負担を強いる代わりに参政権を与えた経緯がある。
    ・中国が強大な脅威となり、安全保障環境が本当に厳しければ、逆にアメリカから見捨てられる心配は減る。
    ・平和だったのは日米同盟があったから。または平和憲法があったから。抑止の仕組みからすると、両方の要因が重なって平和を維持したと考えるのが妥当だろう。
    ・広島への原爆投下はトルーマンの意志だっだが、長崎への投下は政治的な判断はなかった。
    ・戦争が割に合わないと思わせるためには1.軍事力による脅し=抑止。2.共通利益の拡大。
    ・謝罪については、国内社会の中に反動を生み、歴史若いに貢献しない、という研究もある。それよりも事実を承認する作業が有効だという。

  • 2014年7月の集団的自衛権に関わる安保法制の閣議決定がなされ、改めて戦争や安全保障をめぐる議論が活発化している。

    本書は、そうした現状を踏まえ、これまでの安全保障政策や戦争や抑止力、外交の問題を丁寧に整理している。

    政府の広報では、明確な説明が十分になされていないと今でも思うが、本書レベルで十分に説明してくれれば、ある程度納得できる部分もある。

    つまるところ、何のための安全保障で、何のための集団的自衛権であるか、というところが最も重要で、それが「平和」のためであるならば、もっとその効用について議論されるべきである、という点だ。

    「平和」のために、本当に集団的自衛権を容認しなければならないのか。

    テロや戦争が起こらないよう、予防的な支援外交を行う、日本と中韓など、緊張関係にある国との関係を良好にする、など他の選択肢はないのか。

    そして、第二次世界大戦へと向かうことになった日本が行った過去の戦争について、本当に国内で検証され、二度とそうしたことが起こらないように、また同じことを他国にさせないように、反省とその対策研究がなされたのか。

    こうした議論がまだまだ積み残っている段階で、安易に強行採決してよいのか、疑問に思う。

    著者の最終章の言葉は重い。
    ”当時の日本人には、戦争を選ぶ権利も責任もなかった。いまの私たちには、その権利と責任がある。決めるのは、私たちだ。”

  • 日本で安全保障法制等が話題になってる昨今、戦争についてもう一度しっかり考えようという本。
    冷戦から今にかけて安全保障環境がどう変化してきたか、特に日中、米中関係に焦点を置いて解説してて、どうなって中国が日本に脅威と認識されてる現状に至ったかってのが勉強になったし、中国がガチな脅威じゃないことが逆に日本の安全保障環境を悪化させてるってのが面白かった。
    それから国際関係論で出てくる基本的な概念を解説して、日本はどうすべきかって話になるんだけど、集団的自衛権について安倍政権の考えが不透明なせいでシグナルになってないのでここについて議論を深めること、中国との関係改善にもっと力を入れること、先の戦争について日本人で検証することを著者は主張している。

  • 冷戦後、アメリカは世界秩序の形成を模索する。
    政治学者の書く論文は残念ながら、あまり政策担当者には注目されない。
    覇権国のアメリカを止める力は世界の他の国にはない。
    覇権国の力が乙てくると、国際公共財を十分に提供できなくなる。
    中国の変化は目覚ましいが、アメリカにとって直接の脅威ではない。

    安全保障、平和にとって大切なものは戦争をする代償が大きいという状況を保つこと。
    案縁保障の協力関係は制度化することによって、より強固なものになる。

  • 複雑で難解な安全保障に関する議論。入門的であると同時に現状もしっかり押さえたこういう本が役に立つ。戦争や安全保障の基礎的な視点を提示しつつ、いま現在の国際状況や日本の立ち位置も整理する。全体的に安全保障論の専門家らしく、要点をついてわかりやすい。
    安保法はついに公布されたわけだけど、賛成も反対もここからが本番だとも言える。安保法をどう運用していくか、あるいは安保法をいかに廃止させるか。いずれの立場であろうと、まずは戦争のありようや安全保障の仕組みを知る必要がある。

  • 国際政治学者による安全保障についての本。
    まず残念なのは、著者の立場が明らかにされていないことだ。この立場というのは、親自民か親民主かという政治的立場ではなく国際関係論における立場である。もっとも、表紙には「現実的な視点に立脚するリベラルな安全保障の専門家」と書いてあるし、本を読めば自ずとリベラリストという立場も明らかになるのだが、基本的に国際関係論や安全保障というのは論者がどの理論に依っているかが重要なものとなるので、きちんと立場表明してほしかった(もっとも、リベラリズムやリアリズムという理論の違いをイチから説明する紙幅の余裕はないだろうけど)。
    植木さんが偉いのは(素人が偉いと評価するのは失礼だけどね)、平和の実現のための軍事力を認めている点。「ぼくには中国人の友達がいる」とか「もし攻めて来たら酒飲んで話し合いますよ」とかいうお花畑サヨクとは違って、国際政治のドロドロの部分も折りこんでんでいる、正しい意味でのリベラリストである。
    日本では軍事力=絶対悪という思想が根強いので、メディアに出るリベラリストの多くが非武装主義を唱えるお花畑ばかりで、平和のための軍事力という議論でさえ許されない。
    その意味で、最近になって植木さんが何度もTBSラジオに出演しているのは素直にうれしいし、日本で安全保障をオープンに語る土壌ができつつあるのかなとも感じる。

    さて、著者の主張を要約すればこうなる。
    「確かに世界の安全保障環境は変化しているので、集団的自衛権の行使には賛成する。しかし、軍事力によって中国を封じ込めるだけでなく、同時に、中国と人的・経済的交流を深めたり、既存の国際秩序の中に馴染ませる努力をする必要がある」というものだ。

    いうまでもなく、これは①民主化、②経済依存、③国際機関への加入という三つの条件(カントの三角形と呼ばれる)を実現すれば平和は維持できるというリベラリストの考え方に大きく依っている。このうち、①民主化は日本ができることはないので、②お互いに経済依存度を上げて、③中国を国際機関に加入させてルールを守らせるのが大事というわけだ。

    御説ごもっとも。誠にその通りというしかない理屈だが、ミアシャイマーのような「民主主義国だろうが、経済的に依存してようが関係あるか。大国は自分の利益を最優先するんだ。アメリカは中国の台頭を許さないし、中国もはいそうですかと発展を抑えるはずがない。米中は絶対衝突する。」というリアリストの理論に親しみを感じる身としては、本書で主張されるようなリアリストの主張というのは、やはり楽観的というか理想主義的だな~と思ってしまう。ロシアは経済制裁をされながらもクリミアに侵攻したし、中国は淡々と南シナ海を埋め立てているし、なにより今はまだ軍事力の差はアメリカ>中国だけれど、2030年ごろには経済力でも軍事力でも中国がアメリカを抜くという話しもある。となると、中国は既存のルールに従うフリをしながら粛々と時間を稼いで力を蓄えればいいわけだ。なぜなら時間は中国の味方なのだから。

    わかったように論評したものの、国際関係論や安全保障についてはズブの素人なので、やはりもっと勉強が大切だ。
    だって、普通滑走路をどれだけ破壊すれば敵航空機の発着を阻止できるかなんて知らないよ。

  • 集団的自衛権に関して、国際政治の立場から議論が進められている。安全保障に関する言葉について、基本的なことを知りたい場合は、本書は有益。

    基本的なことが書かれているので、その点については良いとは思うが、筆者の中でじっくり考えられて書かれてはいない感じがした。例えば、第1章で覇権に関する議論が出ているが、学説の紹介に終始している印象を受け、この点が残念。

  • 戦争の抑止について
    作用には反作用がある

  • 具体例が豊富なのが◎。今は、憲法学者=安保法案反対、政権が言う国際政治学=安保法案賛成と誤解されかねない状況だが、こうした認識は必ずしも正しくないと気付かせてくれる良書。最終章の日本人は自らの手で先の大戦を総括できていないという読書に対する問題提起も非常に面白い。

  • 参考文献

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