老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

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著者 : 鈴木大介
  • 筑摩書房 (2015年2月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068156

老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
     詐欺の実働部隊を取材した面白いルポ。以前、同著者による同テーマ単行本の方を流し読みしていたので、内容は掴みやすかった。
    〔追記:その単行本http://booklog.jp/item/1/4800218977

    驚いた点:
    ・新人(金銭苦にある若年男性)を短期間で即戦力にする方法が確立されている。
    ・仕事の反動から、燃え尽きたり堕落する者が多い。
    ・詐欺グループ間の淘汰を通して、技術のブラッシングがある(と、著者は考えている)。
    ・組織が分節している。資金や備品等を融通する胴元までは警察も辿りにくい。
    ・育成係が実働部隊に語る、詐欺の大義名分が陳腐。聞き手が相当ナイーブでないと真に受けられない。だが、洗脳まがいの研修を経ると信じ込んでしまうのだろう。
    ・ネットのレビューをざっと見る限り、その大義に感化された読者も存在するようだ。


    【書誌情報+内容紹介】
    『老人喰い――高齢者を狙う詐欺の正体』
    定価:本体800円+税
    整理番号:1108
    刊行日: 2015/02/04
    判型:新書判
    ページ数:240
    ISBN:978-4-480-06815-6

    オレオレ詐欺、騙り調査、やられ名簿…。平均2000万円の預金を貯め込んだ高齢者を狙う詐欺「老人喰い」が、いま急速に進化している。高齢者を騙すために合理化された組織をつくり、身元を徹底的に調べあげ、高いモチベーションで詐欺を行う若者たち。彼らは、どのような手口で高齢者を騙しているのか。どのような若者たちが、どのような心理で行っているのか。裏稼業で生きる若者たちに迫ることから、階層化社会となった日本の抱える問題をあぶりだす。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480068156/


    【簡易目次】
    目次 [003ー006]
    はじめに [007ー013]
    おことわり [014] 

    第1章 老人を喰らうのは誰か―高齢者詐欺の恐ろしい手口 016
    会社員風の若者たち
    彼らは誰を狙っているのか
     ほか

    第2章 なぜ老人喰いは減らないか―(株)詐欺本舗の正体 053
    なぜ老人喰いは減らないか
    (株)詐欺本舗の企業概要
     ほか

    第3章 いかに老人喰いは育てられるか―プレイヤーができるまで 087
    平手打ちの飛ぶ研修
    「ダミー研修」による選抜
     ほか

    第4章 老人喰いとはどのような人物か―4人の実例からみた実像 161
    激変するプレイヤーの素性
    ケース1 闇金系融資保証金詐欺プレイヤーからの転業
     ほか

    第5章 老人喰いを生んだのは誰か―日本社会の闇のゆくえ 193
    老人喰いはダークヒーローなのか
    カスになるまで使い尽くせ
     ほか

    あとがき [237ー238]

  • 過酷極まる詐欺現場だがリターンの大きさとモチベーションの熱さをぶつける場としては最適なのだろう。作者が語るようにモーレツ社員としてなら極めて優秀な人材であり、勿体無い話。
    架空の設定でも加藤と毒川の話が面白い。ぜひ映画化を!

  • 2017年1月22日紹介されました!

  • 振り込め詐欺の被害額は年間約500億円。被害者の8割が60歳以上の高齢者。
    ーーーーー
    取材の中でとにかく痛感したのは「詐欺に遭う側が愚かだ」とあう言説がいかに愚かかだ。そうではない。騙す側が、圧倒的に洗練されているのである。
    ーーーー
    詐欺は、最悪の犯罪ではないって言葉が印象的。
    貯金ゼロの人間を騙して無価値なものを200万円全額ローンで売るのと、貯金2千万円の人間を騙して200万円を奪う。犯罪は後者だけど、なんとなく前者の方が悪い気がする。

    詐欺組織はすごく組織化されてて、株式会社のよう。捕まるのはほんとにとかげの尻尾だけ。その人は上の人をそもそも知らないから、上の人は捕まりようがない。

    人材と才能の消費、浪費。つまりは、もったいない。詐欺組織の人はすごい才能がある。モチベーションもめちゃ高い。組織の幹部も、マネジメントスキル高い。そんな人達を雇用出来てない社会は、損失してる。

    詐欺プレーヤーにするための洗脳がすごい。自分も洗脳されそう。
    あと名簿屋。高級ゴルフ会員の名簿とか。

  • 老人喰いというのは、振り込め詐欺に代表される高齢者をターゲットとした詐欺のこと。
    本書は、騙される側ではく騙す側の事情を取材したルポ。
    驚いたのは、詐欺をしている若者たちの素性である。
    彼らは不良とばかり思っていたが、実は大卒の普通の若者もいる。
    そんな彼らが何故詐欺に手を染めるのだろうか。
    一つには現場の洗脳がある。
    いかにも詐欺は大した犯罪ではないかのように言いくるめられる。
    お金を持っている人から搾取することと、貧乏人から搾取することどちらが悪いかとか、富の再分配とか、「貯金ゼロの人間を騙して200万円のローンを組ませるやつがいる。テレビを見てみろ、効くかどうかも分からねえ怪しげな健康食品がすげー値段で売られてる」(p136)これらの詐欺まがいの商品を引き合いに出して、彼らの理論をぶちまける。
    そうすることにより、若者たちの罪悪感は薄れていく。
    そのやり方や、組織の構成、詐欺のテクニック、どれもすごくよく考えられており、これでは高齢者が騙されるのも頷ける。
    そしてそれ以上に、若者のお金に対する執着、お金を得ようとする執念、お金を持っている高齢者に対する反発がなければ、このような甚大な被害を及ぼすまでにはなっていなかったかもしれない。
    今の高齢者は努力すれば報われる時代を経てきたが、若者たちは努力しても報われることもないという絶望的な現実を実感しているのだろう。
    真っ当な道では、今の生活を抜け出し、余裕のある生活を営むことは出来ないと考えている。
    本書に登場する詐欺グループの話を知り、愕然とした。
    昨今言われている貧困は、実は私自身が思っているよりもかなり進行しているのかもしれない。
    その貧困の様に驚いた。
    夢も希望も持てなくなるほどの生活苦に、努力しても切り開けない未来。
    それらは、大人や国がしっかりとケアしてこなかった代償でもある。
    日本は、人材が唯一の資源といわれているのに、人材を育てる努力を怠っているとしか思えない。

    だが、どんな理由があれ、詐欺は立派な犯罪であり、他人のお金を搾取することはしてはならない。

    著者は裏社会の少年少女をテーマとした著書が多く、若者寄りの目線で、詐欺を働く彼らを若干擁護しているように感じたことと、ノンフィクションとはいえ脚色されたと感じられる部分があり、その辺が気になった。

    とはいえ、「老人喰い」とは単なる詐欺ではなく、もっと根深い問題が潜んでいることを知ることができ、今までと別の角度から見ることができた。

  • 2016年3月8日読了。振り込め詐欺の手口と対策を知りたくて軽い気持ちで読み始めたのだけれど、その手の込んだ巧妙なやり口と組織化された内情に驚いた。劇場型詐欺は知ってたけど高齢者の個人状況を下調べした名簿まで作られてるなんて…そりゃ騙されるわ。詐欺だと分かっていても被害者の恐怖心を煽ってお金を払わせる自信があるなんて恐怖でしかない。しかしこういった詐欺現場の詳細な状況以上に、金を持った高齢者はもはや人とも思えないとまで思わしめる若者達の心の内にある停滞感・閉塞感・失望・諦観の強さに慄いた。老人喰いは決してなくならないのは確かだと思う。明日は我が身、心して備えようと思った。ただ、プレイヤーである彼らの圧倒的なモチベーションの高さは見習いたいところもあるなと正直思ってしまった。 

  • 平成27年度、特殊詐欺の被害総額は476億円、これは2017年度の電子雑誌の市場規模予測(430億円)より少し大きく、2014年度のアダルトビデオの市場規模(512億円)より少し小さい。

    要するに真っ当な市場なら楽天がコボっちゃおっかな、と食指が動き、あるいはそこから他産業に進出するDMMみたいのが現れるかもしれないくらいの産業規模なわけだ。

    著者は何度か畏怖を込めて産業と呼ぶ。それはここに集まる人材がいかに必死で真剣に「業務」に取り組んでいるかということを目の当たりにしているからだ。それらが彼らの中で正当化されるためのロジックの紹介もあるが、もちろん著者はそれにならうわけではない。著者はただただため息を吐く。なんだって僕らの社会は彼らをほっといているのか。もったいない。

    中身は物語風なところもあって、ちょっと面白く読める工夫があるわけだが、これ著者が原作してるギャングースのプロットの一部なのよね。マンガも読んでた人間としては星3つで。

  • ● P.10
     大きな誤解を解いておきたい。高齢者を狙う犯罪とは、高齢者が弱者だからそこにつけ込むというものではない。圧倒的経済弱者である若者たちが、圧倒的経済強者である高齢者に向ける反逆の刃(やいば)なのだ。

    ● p.13
     どんなに防犯対策を施そうとも、この「階層化社会」がある限り、老人喰いはなくならない。特殊詐欺犯罪がなくなったとしても、彼らは別の手段で高齢者に牙を剥き続けるだけだ。

    ● p.40
     詐欺の現場プレイヤーは下見屋で擦った(情報強化した)名簿を使うことで、「相手が半分詐欺だと気づいても、詐欺だと確信していても、金を取れるようになった」というのだ。(略)
     強化された名簿に「暴力耐性なし」と記されたターゲットにとって、キレ役の言葉はまさにその暴力を予感させるものであり、詐欺と断定して電話を切った後の暴力による報復をも予感させてしまうのだ。(略)
     被害者も落ち着いて考えれば分かろうものだが、不安にさいなまれた結果「でも1%でも報復の可能性があるなら、お金を払って二度と電話がかかってこないようにしたい」という気持ちの方が大きく働いてしまう。

    ● p.45
     詐欺の加害者側の取材の中でとにかく痛感したのは、「詐欺に遭う者は愚かだ」という言説がいかに愚かかだ。そうではない。騙す側が、圧倒的に洗練されているのである。詐欺組織は徹底的に管理された高度な集団で、プレイヤーたちがこうした役回りの技術を徹底的に磨き上げ、それを支える名簿の精度が急速に進化したから、被害は減らない。

    ● p.48
     詐欺系名簿業者の男は「単に高齢者というだけの名簿で詐欺をかけた場合の成功率は0.25%程度だが、情報強化した名簿では成功率40%もありうる」と言う。

    ● p.150
     共通して詐欺研修者に植え付けられるのは、以下の「大義名分」だ
    ・詐欺は立派な「仕事」である。
    ・店舗に編入されるプレイヤーは、編入されるだけでも選ばれた人間である。
    ・詐欺は犯罪だが、「最悪の犯罪」ではない。なぜなら、「払える人間から払える金を奪う」商法であり、詐欺被害者が受けるダメージは小さなもので、もっと悪質な合法の商売はたくさんあるからだ。
    ・詐欺で高齢者から金を奪うことは犯罪だが、そこには「正義」がある。金を抱え込み消費しない高齢者は「若い世代の敵」「日本のガン」である。
    ・ここで稼ぎぬくことで、その後の人生が確実に変わる。

    ● p.159
     日本の高齢者に富が集中し若者が食えないのは、厳然たる事実。そんな現代日本で、彼らはその高齢者を喰らうことの大義名分を洗脳され、むしろ自らそれを信じ込む。そしてブラック企業以上に厳しい選抜に勝ち残ることの自己肯定感。身近な成功者像であり圧倒的な「男の求心力」「再配分の美学」を持つ上層部に心酔し、そこに属することに強い選民意識を得る。
     これではやはり、老人喰いがなくなるはずはないのだ。



    p.237
    高齢化社会とは「生産力を失った多くの高齢者を、少数の若者が支える社会」。そして、かつてないほどに拡大した若者と高齢者の経済格差と、努力しても報われることがあまりに少ない現代の若者の世界観から、必然的に「支えることより奪うこと」を選ぶ者は生まれた。これが老人喰いだ。(略)

     ただひとつ言えることは「奪われる前に与えていれば、こんなことにはならなかった」ということだ。
     本来、富める高齢者がやっておくべきだったのは、みずからの子供や孫に教育費や労力を費やすことのみならず、将来的に自らの世代を支えてくれる「若い世代全体」に金と手間をかけて育て、支えてくれるだけの環境と活力と希望を与えることだった。だが現実は、まったく逆だった。

     今後の老人喰いを収束に導く方法は、防犯対策でも彼らの手口を啓蒙することでもない。ただ、これからの世代に「与え、育てること」しかないように思われてならないのだ。

  • 貧困から風俗とかAVに流れる人たちを書いてた人が振り込め詐欺?と思ったら、年寄りが金を貯め込んでるから、貧乏な若者世代がその金を狙わなくちゃならない、という論点だった。全くそう思う。うちの親ですらそう言うもんな。大金を持ってる奴から取っても構わない、昔ならモーレツ社員としてやっていけた人間がこんなことをするしかない、もったいない、と言うのが筆者の結論。ほんとブラック企業で私はやっていけないし、この自己啓発セミナーみたいな研修にも耐えられない。でも昔はこのセミナーも流行ってたんだもんな。同じような人材が今もいるってことだ。しかし、そんなに稼いでどうする気?とも思う。最後にも書かれてたけど、結局身持ちを崩すのが関の山じゃね。しかしどういう人が金主なんだろうな。そして筆者はどうやって番頭やプレイヤーの人と知り合うんだろう。

  • ホンマかいなと思いながら最後までは読めた。陰謀論とか上杉隆に近い感じもする。

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