老人喰い ――高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068156

感想・レビュー・書評

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  • 特殊詐欺グループの犯罪手法、教育体制に深く切り込んだルポ。第3章では「研修」の詳細に迫る。研修ではシステム化された選別と洗脳が行われ、潜り抜けた者はどんな会社でも成績を挙げるであろう優秀な営業マンとなる。老人が騙されるのも無理がない。背筋が寒くなる思いがした。

  • オレオレ詐欺などカネのある高齢者を狙う詐欺犯罪が広がっている。日本社会において、「老人喰い」は若者向けのビジネスであり、決して無くなることはない。と、著者は断言する。本書はそんな裏社会の取材を通して、その理由を明らかにする。

    感心しちゃいけないことだが、詐欺グループの人材採用・教育、実行システム、成功報酬などの一連のシステムは合理的ですばらしい。人事や営業に困っている企業はぜひ参考にすべきだ。

    手にできるのがゼロか百万円かというシビアな状況ほど人が成長し、能力を発揮する場所はない。詐欺の動機だって、資産も将来の保証もない若者が余生わずかな資産家から富の一部を分けてもらうことと定義してしまえば、道徳観さえ満たされてしまう。メンバーにとって「老人喰い」は利益率の高い正義の仕事なのだ。

    著者は「老人喰い」を評価しているわけではないが、高齢者を優遇する社会に反省すべき点はないかという疑問を投げかけている。


  • 「ほとんどの老人は、ただ自分のために金を溜め込んで使わない。金は若い連中に廻らない。これは誰のせいだ?」
    読んでいる途中でうっかり、老人喰いが正しいのでは、とさえ感じました。

    お金というものに安心感を覚えるのは、老いも若きも同じでしょう。だから、抱え込んでいるのだし、騙してでも欲しいモノでもある。
    こういった問題はいつぐらいからあったのかなと考えてしまいました。または、これも長生きの弊害だったのでしょうか。

    時代に望まれない両者の対立だと感じました。

  • ニュースでよく見かける「高齢者詐欺」
    どういうモノが高齢者詐欺なんだろう。知りたいなーと思って読んでみたら、内容は全然違った。

    高齢者詐欺をしているのはどんな集団か
    彼らはどんな歴史を持っていて、どう詐欺に出会ったのか
    詐欺を働く人間たちはどんな意識を持っているのか

    そんなことがリアルに描かれていた。
    生々しい描写に同情やしんどさを感じる一方で、

    自分もひとつ間違えれば彼らの側だったかもしれないなと思うほどの日本社会の厳しさも感じた。

    日本がどんな社会になっているのか、
    その闇の部分か非常によくわかる一冊だと思う

  • 小説のドラマ化、録画したもの見終わりました。
    杉野くんチョイスで見はじめたけど、ストーリーが面白かった。一流企業から新卒切りにあい、詐欺に手を染めることになった若者の話。詐欺=悪!と思っていても、主人公:草野が、悪人には見えなくなっていた。。。不思議なストーリーでした。

  • 犯罪だとは分かっていても、老人喰い側に感情移入しちゃうな。
    それだけ世の中が閉塞感に包まれているという事だろうけど。

  • 老人喰いを正当化する説得力に、納得させられてしまう若者が多くいるのは分る気がする。老人喰いに対するモチベーションの高さを、別の方向に向かわせる事ができないことが残念。

  • 特殊詐欺の手口から、どのように組織されているのかまでが良く分かるように書かれていました。正直、想像以上です。普通に生きていれば知らない世界を少し垣間見たような気分です。

  • 非常に勉強になった。

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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