入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068248

感想・レビュー・書評

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  • 結局、犯罪対策とは「犯罪を犯す人と犯さない人の違いは何か?」なのだろうけど、それは、社会階層や貧困や知能や精神病歴や幼少時のトラウマではなく、反社会的なパーソナリティや交友関係、認知癖を持つかどうかなどハードルを超えやすい行動様式を持っているかどうか、なんだな。

    生まれつき(衝動をコントロールできるか、他人に共感できるか、刺激を求めがちか)と育った環境(違法性への価値観、仲間)も影響がそれぞれあり。

    犯罪を起こしやすい因子を複数持つ人たちが必ず一定数(数%)いて、犯罪の約半分に関わっているという話。
    そして、犯罪を起こしやすい因子を持っていても、必ず犯罪を起こすとは限らない。

    「犯罪的他者への同一化」とか、女性を性的にモノ化した表現を肯定的に受け入れてしまっていて、対象の反応を都合よく「相手も嫌がってない」解釈をする認知のゆがみもあり、それを認め合う仲間がいて、酒に酔ってたりすればやはり性犯罪の一線は越えやすいんじゃなかろうかと思うが、思い留まれる人もいるわけで、やはり性別で一括りにできることでもない。

    しかし、むしろ、逮捕や起訴されるレベルの性犯罪の一線を越えるまでには、なにがしかのアラートがあるんじゃないかと思うので、裁判でそういった「過去の失敗から学べなかった」ことは突っ込めないんだろうか。

    厳罰化もいいが、再犯防止したければ治療も必要もいうのもよくわかった。

  • 心理学の科学的側面の近年。
    エビデンス重視。メタアナリシスの必要性。
    何をもって科学とし、人間の認知を見直すかが問われている。
    今生きている時代は特にこの思い込みが世の中を動かしていた世界から変わりつつある。
    犯罪心理学も同様に思われていた世界から科学的視点の世界へと変化している点がおもしろい。
    認知のゆがみに、刑罰の効果も統計から読み取る。
    今頼れる方法の模索の未来を感じる。
    そして現時点で明らかなことも多い。

  • 加害者は罰するべきという従来の考えを脱却し、加害者に今後再犯させないためにはどうするべきかに焦点を当てた本。専門用語を使う際には必ず説明があるので、初心者にもやさしい。

    犯罪者で一括りにするのではなく、どうして犯罪に走ったのか、再犯しそうかそうでないかなどで細分化していき、細やかに治療を行うことで再犯率の低下につなげることができる。

    個人的に、わずかな人達だけで6割もの犯罪がなされているというデータが衝撃だった。

  • やっぱり医療化なのか。認知行動療法を取り入れたプログラムを受けさせると再犯リスクが低下するそうな。犯罪リスクの反社会的認知として低い共感性、衝動性、攻撃性は器質障害の可能性と遺伝的要因が高いというのが最新の知見らしく、罰を与えて反省させても無駄であることが多いとな。反社会的パーソナリティは本人が望んでそうなった訳ではない部分もあるという医療的解釈により免責され、認知行動療法を受けると本人は社会の規範を受け入れる、つまり更生するというのは「時計仕掛けのオレンジ」みたいな世界観で嫌だな。ちなみに攻撃性については名誉の文化により熟成されると文化心理学で明らかになっているので、医療化よりも政治経済的と社会の問題として扱う方がいいのでは。まぁ医療化の方がコスパがいいんでしょうね。なんかムカついたわ。

  • 犯罪をする人は、環境的要因と遺伝子的要因の相互作用で自己統制力が阻害され、犯罪行為をするらしい。

    薬物依存症について、著者が依存症治療において「自分を信じないこと」、つまり家族や信頼のおける友人に手伝ってもらうことが治療を確実にするといっていたのが印象的だった。

    遺伝子的要因は我々の力で変えることはまず無理だが、環境的要因は他社の力で改善できる可能性があるというのは、希望を感じた。

    犯罪心理学についてはまだ科学的にあいまいな点がおおいらしいが、罪を犯したものを、自分とは無関係だと考えて、見えるところから排除するのではなく、なぜ罪を犯してしまうのか、どうすれば更生するのか、向き合うことが大事なのではないかと思った

  • 《良かった点》
    ▼ 思考の誘導
    よくある錯誤を紹介するときに、見事に思考を誘導されて著者の思い通りの間違いを思いついてしまった。
    だからこそ説得力がある。

    《学んだこと》
    ▼ 科学に基づいた意思決定
    エビデンスが大事
    人の思考は、決して合理的ではなく、バイアスや系統的エラーによって間違う
    よって、エビデンスに基づいて因果関係を認定し、再犯防止に資する対策を講じるべき
    もっとも、科学が絶対的に正しいわけでもないから、常に目的達成のための最善策を模索し続けることが大事

    《これからの行動指針》
    ▼ キャンベル共同計画を見る!

  • 犯罪心理学がいかにエビデンスを重視するかよく分かった。著者の言う通り、おそらくそれは正しい姿勢なのだろう。でも一般読者としては面白くない本だったなーという感想。

    犯罪心理学に特徴的な考え方などはあまり出てこず、とにかくエビデンスのあるものだけを信じろ、と繰り返し書いてあって、当たり前のことを偉そうに言っているだけという印象を持ってしまった。『ファクトフルネス』などはその当たり前のことを、実はみんな分かっていないんだ、という説明にかなりページ数を割いていて良かったが、本書はその点はいまいち。

    プロファイリングのような派手で格好良い理論を期待して読んだ手前、「そういう浮ついた気持ちがダメなんだ」とお説教された気分。そりゃ正しいんだろうけどさ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/64111

  • 人はなぜ犯罪を犯すのか。
    どうすれば再犯が減るのか。
    という内容ではありませんでした。

    むしろ
    科学的な根拠に基づいて、人々が幸せに暮らせる社会を作るためにはどうすればいいか。
    という方が近いです。

    教育学もこのように、正しくアップデートして行かないといけないと思いました。

  • <感想>
    「入門」と銘打っているだけあって初心者向け。事例は少なめで、犯罪心理学という学問の概要解説といった趣きになっている。実際の犯罪事例から読み解く犯人の心理、みたいな内容を想像していたので少し期待とは違った。

    <アンダーライン>
    ★★★★★(宅間と加藤の共通点)自分の痛みには過敏で、傷ついたり怒ったりしやすいが、その反面、人の痛みには驚くほどに鈍感だという点も共通している。それと関連して、両者ともに被害者意識がきわめて強く、他者を傷つけたり、困らせたりすることで仕返しをしようという態度が顕著な点も瓜二つである。
    ★★★事例B 自己評価がとても低いんです。万引きをして、タダで盗ってくると、初めて他の人と同じスタートラインに立てる気がしました。最初にマイナスのところにいるから、ズルをすることで初めて人と対等になれる気がしたんです。
    ★★★認知が非常にゆがんでいる者が世の中には行って数いるのだ。そうしたものは、物事を何でも被害的に受け取ったり、他愛のない他者の言動を深読みしたり、とにっかう通常では考えられない捉え方をする。
    ★★★犯罪者には、遅延価値割引傾向が大きい者が多い。簡単に言えば、「将来のことはどうでもよい」という思考形式のことである。
    ★★★★粗暴犯罪を行った者は、安静時の心拍数や呼吸数が少ないということも際立った特徴である。心拍数や呼吸数は、脳の覚醒レベルの指標である。つまり、これらが少ない者は、脳の覚醒レベルが低い状態にある。比喩的に言えば、脳がいつもシャッキリときびきび昨日している状態ではなく、どこかとろんとした状態にある。
    これは、生物学的には不快な状態であるため、目を覚まさせる必要がある。そのために、彼らは刺激のある行動を求めたり、暴力沙汰に及んだりするのだと説明できる。つまり、攻撃性の高い人々は、生物学的にそのように駆り立てられているのだと言える。
    ★★★★★「不安にならない」「落ち込まない」「怒らない」などという対処は、逆に死人にしかできない対処であって、生きているわれわれが行うのは不可能である。
    ★★★★★薬物依存者だけでなく、犯罪にかかわる人々は、暇な時間に何もすることがない人々が非常に多い。
    ★★関連性の錯誤

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著者プロフィール

筑波大学人間系教授

「2023年 『現代の臨床心理学1 臨床心理学 専門職の基盤』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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