- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480068521
感想・レビュー・書評
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200ページで比較的薄い本だったが、意外にしっくりと読めた。なぜオランダやポルトガル、フランスがイギリスの敗北したのか、その原因を国家によって統制された貿易に求めたのは、よくありがちな考え方のように思えるけど、大真面目に読んでみるのは初めてだったから、面白かった。
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「覇権史」という表現から何か政治的なものの歴史かと思ったが、中身は経済史。大きくみれば西洋が今世界の「覇権」を握っている印象を与えるのはやはり1500年以降の大航海に始まるんだろうな。それまでは東に対して弱小なグループでしかなかったのだろう。まあでも、近世に入って以降の増長ぶりはやはり西洋独特の性格がモロに出ているようだ。あの強烈な利己主義の源は何なのか。
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書店で見かけて気になって買った一冊。中身の大部分に繰り返しが多いのは少し微妙だが、学問的見地よりも少しゆるく語られる序章、終章、あとがきあたりが面白い。
オランダ、イギリス、アメリカと覇権国家が移っていくグローバリゼーションの歴史が語られる。なぜ覇権を握ったのがポルトガル、スペイン、フランスでなくオランダやイギリスだったのか、その理由が分析される。明治維新で日本人が最も学んだのはイギリスだったが、この時代のイギリスがいかに世界を牛耳っていたか、その感覚がよくわかる。例えば20世紀に入る頃には、イギリスが世界中と電信で情報交換できるようになっていたというのには驚くほかない。
終章では近代ヨーロッパシステムの終わりが予兆される。そこでは格差問題などにも触れられ、次のシステムが現れる予感を指摘するが、その時代の転換期を私は見ることができるのか、それを死ぬ前までに感じたいな、と思った。
他に軍事と商業の繋がりや、貿易における海運というファクターの影響力、商品連鎖の考え方など経済史の面白さを感じる一冊だった。 -
予想以上に面白い…興味深い本でした。
ヨーロッパ覇権史という書名ですが、内容は世界経済システム史の概説であり、個人的になるほどと思ったのは、工業国と資源供給国という単純化した従属関係ではなく、そこに「輸送(海運)」という確かに言われてみれば非常に重要なファクターを明示的に加えていることと、「決済」というこれまた当然ながら重要なファクターについては、それを成し得るための「電信」の重要性についても強調している点。
昨今の「資本主義の限界」についての議論の前提となる世界経済システム史についての理解を深めるための良書と思います。著者の他の著書も読んでみたくなりました。 -
歴史
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http://naokis.doorblog.jp/archives/hegemony_states.html【書評】『ヨーロッパ覇権史』(その1)軍事力と情報力
http://naokis.doorblog.jp/archives/hegemony_states_and_Japan.html【書評】『ヨーロッパ覇権史』(その2)日本史との接点
http://naokis.doorblog.jp/archives/asakatsu_reading_salon_20160324.html【朝活読書サロン】谷崎潤一郎・ロボット・世界史(3月24日) : なおきのブログ
http://naokis.doorblog.jp/archives/best_three_2016Q1.html2016年第一四半期読了マイベストスリー
http://naokis.doorblog.jp/archives/reading_salon_20161222.html【朝活読書サロン】2016年総決算(12月22日) : なおきのブログ
<目次>
序章 ヨーロッパ化した世界
第一章 軍事革命と近代国家
1 軍事革命とは何か
2 近代国家の誕生
3 中央集権国家イギリス
第二章 近代世界システムの誕生
1 近代世界システムとは何か
2 アントウェルペンからアムステルダムへ
3 近代世界システムに貢献した事物
第三章 大西洋貿易とヨーロッパの拡大
1 弱いヨーロッパ
2 ヨーロッパの拡大
3 大西洋貿易の台頭
4 イギリス海洋帝国の大西洋貿易
第四章 アジア進出とイギリス海洋帝国の勝利
1 ヨーロッパとアジア
2 異文化間交易と商品連鎖
3 ヨーロッパのアジア進出
4 ポルトガル海洋帝国とイギリス海洋帝国
終章 近代世界システムの終焉
あとがき
主要参考文献
2016.03.13 借りる
2016.03.17 読書開始
2016.03.23 読了
2016.03.24 朝活読書サロンで紹介
2016.12.22 朝活読書サロンで紹介する。 -
近代以降の世界の権力史を、ヨーロッパを中心にまとめたもの。オランダ、イギリス、アメリカといったヘゲモニー国家をはじめ、スペイン、ポルトガルといった海洋国家、オスマン帝国や中国、マニラなどの記述もあり、広く覇権国家について理解できた。学術的だし論理的で読みやすい。
「現在のアラブ世界の問題のいくらかは、ヨーロッパ諸国が勝手に国家なるものをアラブ世界につくったがために起こっている」p24
「ポルトガル海洋帝国が育てた果実を取っていったのがイギリスであった」p27
「火器を最初に使用したのはヨーロッパ人ではなく中国人であったが、その使用をもっとも積極的に行ったのはヨーロッパ人であった。そのために、やがて世界中の戦争で勝ち、植民地を獲得することができたのである」p33
「火器をどのように受容するかで、この当時の国の運命が決まったといって過言ではない。この点で、ヨーロッパは最も進んでいた。そして、それに次いだのは、おそらく日本であった」p34
「イギリスとフランスを単純に比較するなら、国土はフランスの方がずっと広く、人口も2~4倍多かった。にもかかわらず、実際に勝利をえたのは、イギリスであった。巨額の借金をしながらも、イギリスはフランスとの戦争に勝ち、ナポレオン戦争が終わった1815年には、ヘゲモニー国家となったのである」p50
「近世のヨーロッパで生まれたグローバリゼーションだけが、政治的な統一体である世界帝国を形成せず、経済競争を行う世界経済となった。競争の単位は主権国家であり、各国が飽くことなく利潤を求めて競争した」p61
「一般に、オランダは貿易によって繁栄したとされるが、それは正確な見方ではない。オランダは、海運業によって繁栄を謳歌したのである」p75
「国家が戦争状態にあれば、敵国に対する憎悪感が増していく。そのため、ナショナリズムが高揚することになる」p80
「(13世紀)ヨーロッパの軍隊は弱く、イスラームやモンゴルと戦争をすると、ほぼ壊滅状態に至った。つまり、ヨーロッパが、陸上ルートによって東へと出ていくことは考えられなかったのだ。だからこそヨーロッパは、アフリカ大陸を南に下り、喜望峰を経て、インドに行くほかなかったのである」p92
「ルイ14世が死去した1715年からフランス革命が勃発した1789年まで、フランスは国際貿易で主導的役割を果たした。その中核となったのがボルドーであった」p113
「(14世紀~)大西洋貿易で最も重要な商品は砂糖であった」p132
「産業革命とは、どちらかといえば劣勢に立たされていたヨーロッパ経済が、アジア経済に追いつき、追い越す過程を表す」p174
「さまざまな学問の共通語は英語であり、理系の場合、英語以外に国際的な雑誌はないというのが現状である」p185
「アメリカは、自国に都合の良いことが正義であると無邪気に信じているところがある」p189
「こんにちの世界では、ごく一部の企業のトップを除くなら、賃金を上昇させる誘引はない。このような世界の出現は、結局、近代世界システムが世界を覆いつくした結果だということに尽きよう」p197
「会社はまさに株主の所有物であり、そこで働く人々の幸福は考えない」p198 -
歴史ものかと(勝手に)思いきや、ほぼ経済の話だった。それでいて世界史の知識も、少なくとも高校程度のレベルで要求されるので、新書にしてはなかなかに骨太。
こうなると、なんだか書体までもが読みにくく感じて、はなはだ取っつきが悪かった。もうちょっとキャッチーに書いてほしかった。
2018/7/30読了 -
180331 中央図書館