美術館の舞台裏: 魅せる展覧会を作るには (ちくま新書)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068613

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  • 美術館の舞台裏(ちくま新書)
    著作者:高橋明也
    発行者:筑摩書房
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    魅せる展覧会を作るには美術館の見え方が変わる。

  • 美術業界にまつわる雑談、ですかね。悪くはありません。【2023年11月12日読了】

  •  言われてみれば気になるものがある。それは美術館の行っている展覧会がどのように企画されて運営されるかということだ。その点で今回の本はぴったりだ。今回の著者は、丸の内にある三菱一号館美術館の初代館長。

     よく展覧会のパンフレットに主催者の欄に必ずと言っていいほど載っている業界の名前がある。それは新聞社だ。戦後の海外展で海外の美術館から貸してもらうための交渉をするには海外駐在員や特派員はうってつけの存在だった。何しろ1ドル360円という時代で、誰もが手軽に旅行できる時代ではなかった。そのうえ新聞社にとっても自社の存在をアピールできる。アピールも文化に関心があるというお上品なやりかたで。需要の供給の一致が今日の海外展の基礎になっている。

     1980年代以降、放送局が美術展開催の参入するようになったとある。TBSの世界ふしぎ発見を見ているとたまに展覧会の宣伝を兼ねたテーマを取り上げていることがある。その後、「商業化への道をたどる海外展」と著者が述べているように、海外の美術館は資金繰りが苦しくなってきて、日本の海外展を金の生る木にせざるを得なくなったそうだ。茶者がある美術館の名誉館長にチクリといわれた一言が載っている。それは「作品をお金で集める習慣をつけてしまったのは日本人なんだよ」と。その付けが今どっしりと響いてきているようだ。

     読んでいてびっくりしたのが美術品の扱い。日本に届いて中を開けてみたら、フレスコ画の表面の顔料がはがれ落ちていた。それに対してナポリの美術館からのもので、付き添ってきたクーリエがはがれた顔料を掌にとってごみ箱に捨てたと書かれている。さらに、「イタリア人はジオットのフレスコ画を雑巾でふいてるんだよ」という著者の恩師の言葉。「あまり細かいことは気にしない傾向が強いのです」とあるように、日本人では考えられないことをする。フランス人も同様の傾向が強いそうだ。

     美術館や博物館で働く場合も、商社で海外勤務をする人に求められる「神経の図太さ」が必要だ。可憐な一輪の花では心もとない。

     展覧会を企画、運営していくことが大変なのが分かる。今度展覧会を見に行くときは、どんな風に企画して運営しているのか注目してみるか。展覧会の公式ガイドを見るとどこかに何かしらの形で書かれている。

  • この間『美術館で働くということ』というエッセコミックを読んだ時、この本のことが頭にあった。
    そこでいよいよ読むことに。

    著者はオルセー美術館の開館準備室、国立西洋美術館の学芸員を歴任し、三菱一号館美術館館長に収まった、エリート中のエリート。
    そういう立場から垣間見た、欧米のキュレーターの世界の華麗なことといったら。
    『美術館で…』とはまた違う印象。

    企画した展覧会のために作品を貸し借りしたり、コレクションを充実させるために買い付ける。
    こういう仕事柄、学芸員同士はもちろん、画商、コレクターらとの人脈がものをいう。
    そのため、大富豪ともそつなく付き合える教養や社交性も求められる――というのだ。
    それだけではない。
    美術展のために、額装や修復の職人さん、専門の運送業者さんなど、プロフェッショナルをまとめ、率いるコミュニケーション力と、リーダーシップが求められる。(このあたりは『美術館で…』にもある。)
    まったくもって、「情熱大陸」か?と思われる刺激的な世界。

    取り上げているのは、美術館の建物や内装、贋作事件や盗難、輸送での事故など、多岐にわたる。
    「個人蔵」や「伝○○」の持つ含みというか、裏事情も紹介される。
    こういったところも面白い。

  • <目次>
    第1章  美術館のルーツを探ってみると…
    第2章  美術館の仕事、あれやこれやで大変です!
    第3章  はたして展覧会づくりの裏側は?
    第4章  美術作品を守るため、細心の注意を払います
    第5章  美術作品はつねにリスクにさらされている?
    第6章  どうなる?未来の美術館

    <内容>
    元国立西洋美術館在籍、現在丸の内の三菱一号館美術館館長による美術館の仕事や美術界のことを語った本。話の主は西洋美術(主に絵画)なのですが、ご本人の専門のマネのことやヨーロッパの美術館(パリの話が多いかな?)のことも語られます。近年の大家の作品展よりも視点を代えたテーマ展、マンガやファッションなどの現代アートなど、未来の美術館や展覧会の話が面白かった。むろん、画廊やオークションの話、美術館の裏話も「なるほど」と読めました。

  • 美術ファンとしては各美術館で様々な企画展が開催される事は行きたい展示が多すぎて選べない!という贅沢な悩みだと思っていたけれど、関係者から見ると美術展の商業化という意味で良いことばかりではないのだと知って驚いた。
    海外から作品を集めれば集めるほど輸送費や保険料で莫大な費用がかかり、それを回収するため新聞社やテレビが宣伝しグッズを作り‥いわゆる日本で開催される「企画展」は失敗が許されない、ハイリスクハイリターンの一大ビジネスに(良くも悪くも)なったとのこと。関係者は大変なプレッシャーの中で準備に追われているんだろうな‥
    今後美術館に行く時は心して行こうと思いました(笑)
    あと個人的には日本の美術品は主に紙のものが多く展示中のダメージが多い事から展示期間が短いという話が印象的だった。もっと会期を延長してくれれば良いのに‥と不満だったけれどそんな理由なら致し方ない。

  • 日本の美術館・美術展の成り立ちから、美術館運営の裏側、今後の美術館の展望までを書いた本。作者の高橋氏は丸の内にある三菱1号館美術館の館長であり、彼がこれまで経験したエピソードも交えて描いており、非常に面白かった。
    この本は年に1回か2回、興味のある展覧会が開催されている時だけ美術館に行く、私のようなビギナーが最も楽しく読めるのではないかと思う。
    この本を読んで、自分が知っている画家・アーティストのみならず、未知の展覧会にも足を運んでみようと思うようになった。

  • 展覧会、作品の輸送、買い付け、真贋……といろんな角度から日本の美術館の現状を解説してくれていて面白い。
    運搬にはクーリエと呼ばれる付添人が同伴する(美術品を物理的に守るためというよりは、事故が起きた時の責任の所在を明らかにするため)、中国は美術品を政治的外交の駆け引きに使っている、など、知らないことがたくさんあった。
    何より文章がすごく読みやすくて、もっとこの方の著作を読みたいと思った。

  • 2023.12.10 長いこと美術館の現場にいる方からのメッセージは、やはり奥深く心に響くものがある。経験の素晴らしさを再確認することができた。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1439718

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著者プロフィール

高橋明也(たかはし・あきや)
1953年東京生まれ。東京都美術館館長。国立西洋美術館学芸課長、三菱一号館美術館館長等を経て、2021年より現職。1984~86年に文部省在外研究員としてオルセー美術館開館準備室に在籍。2010年にフランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。主な著書に『美術館の舞台裏―魅せる展覧会を作るには』(筑摩書房)、『新生オルセー美術館』(新潮社)他。

「2022年 『もっと知りたいモネ 改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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