性風俗のいびつな現場 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068682

感想・レビュー・書評

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  • 扇情的なタイトル
    アイキャッチはうまい

    営業の現場からのインタビュー
    著者の意図が明確になるのは中頃過ぎ
    社会的な弱者と福祉を結びつける意図が明確に見え隠れする

    その筋の人たち
    グレーのままが良いこともある

  • ●最近は貧困と風俗関係の本をよく読むが、かなり読み応えのある一冊。
    ●風俗と聞くと反射的にダメだとなる人もいるが、人類とは切っても切れない職業。しかし、風俗店で働くことの出来る人はまだ選ばれた人だからましという冷たい事実。
    ●ほんとは風俗がセーフティーネットにならずに済むようになればいいけれど、世の中綺麗事だけじゃやっていけない…見ないようにしているのか、単に見ないのか、こういう本でも読まない限り知らない世界
    ●丹念に取材をしている真摯さが見える。
    ●最貧困女子を読んだ時もそうだけど、とにかく生きようともがいている人がこれだけいるわけだから、もっと支援のメニューやら方法が広がってほしいと切に思いますね。
    ●なんだろう…結局こういう本を読むのも、何なる怖いもの見たさ、好奇心に過ぎないよな、とか思ってしまい、読後たまに自己嫌悪に陥りますね…

  • 日本に登録されているデリヘル業者の数は、全国にあるコンビニの数よりも多い。
    もちろん前者は既に廃業した業者も含まれた累積数であろうから、純粋な比較というにはアンフェアだが、この数字を知るだけでも「なんでだろう?」と好奇心を呼び起こされる。

    文章が荒い部分もあるが、渾身の一冊であることを高く評価したい。

    作者もあとがきで記している通り、この分野についての本は働く女性たちの声や物語を集めて、再度彼女たちの人生をコンテンツとして消費しただけのものが多い。その一方で本書は風俗業界の仕組み、ビジネスモデルであったりマーケティング戦略であったり、に果敢に切り込み、いくつかの違う業種の構造を克明にあぶり出すことに成功している。

    ビジネス側からの支援と福祉との接続、という視点が面白く、更に広がりがある。ある風俗店で働く女性たちに対して、出張福祉相談・法律相談をしたところ、大多数の女性たちが既に何かしらの形で福祉制度とは接続していた。ではその既存の接続で掬えなかったニーズはなんなのか、そこに対しての風俗店の役割はなんなのか、そのビジネス側と福祉側のサポートに相乗効果はあるのか。他のテーマや視点でも考えてみたい論点である。作者のこれからの探究結果も楽しみである。

  • 思索

  •  著者は東大・上野千鶴子ゼミの出身で、障害者に対して射精介助サービスを提供する非営利団体「ホワイトハンズ」の代表理事。社会福祉の専門家だ。
     当初この本は「風俗福祉論」という仮題で企画されていた。「最底辺風俗の社会学」というタイトル案もあったらしい。
     つまり、そういう本なのだ。
     風俗と福祉を同じ地平で捉えて、その「間」に潜む問題を可視化する。福祉制度の不足を性産業が補っている現実から目を背けずに、両者の連携、風俗の「社会化」を提起する。性労働の実態を別世界の物語として遠くに見るのではなく、同じ社会の問題として身近に引き付けて考える点で、他の風俗ルポとは性質が異なる。
     著者は「女子」「彼女」「嬢」等、女性を示す名詞を書名に入れないことにこだわった。同じ編集者と組んだ既刊『男子の貞操』と同様、性の語られ方を問う言説批評としても挑戦的。読んだ人の反応が気になる本である。

  • 丁寧に風俗の現場にあたり調査研究し、非常に上手い文章と構成力で描かれた良書。本書内にあるようにこれまで風俗は「ネタ」としてサブカル領域において、人々の好奇心を刺激するものとして扱われてきた傾向が強いが、本書は調査研究分析を行うだけでなくソーシャルワークと風俗を繋げる実践活動を行い、それを書いている。熟女専門風俗店における母親がいない30代若者の客のエピソードはなんともいえない気持ちになった。

  • 妊婦・母乳専門店、激安デリヘル、地雷専門店、超熟女店など、風俗の辺境で働く女性と、それに福祉制度はどう関わっていくべきなのかを真面目に考察し、ケースワーカーや法律家を巻き込んで相談会を開催した記録までを含む、真面目なルポ。興味本位で読み始めたが、目が覚める思い。名著。

  • 風俗ルポというよりはさらに一歩踏み込んだ内容で非常に考えさせられる内容でした。

  • 多面的な問題を善悪、被害者加害者、搾取被搾取と言った二項対立に置き換えるのは楽だけど、それでは問題は捉えきれない。

    風俗で働く人のケアには業界の自助だけでなく福祉や司法といった側面からの支援が必要。
    社会は風俗を黙認(黙殺)も公認もせず、容認を

    ーーーーーー


    風俗店は柄の悪い人がやるイメージがあるが、手続きを踏めば合法的に開業できる一つのビジネス。

    田舎は女性を、都会は男性(顧客)集めに苦労

    新人→リピーター獲得できるかどうかが境目
    だめなら店を転々

    "今の男性客は女性そのものよりも、その女性が持っている身体的特徴(巨乳、パイパンなど)や社会的属性(女子高生、人妻など)といった記号のみを追いかけるようになっているという。"
    →記号消費

    "意図的に女性に借金を背負わせ、抜け出せないようにするための罠として、ネットカフェ待機、及び売上の個人保管が機能しているわけだ。ここまで来ると、管理売春の域を超えて人身売買に近い。"
    →こういう人が同じ空気を吸って生きているということに想像すらできないことが「分断 」なんだろう

    "結局、自助努力の困難な女性が、自助努力をしないで稼げる仕組み、救われる仕組みを作るのは無理なのではないか。自助努力のできない女性は男性客との恋愛というハイリスクなギャンブルに賭けるしかない。しかし指名が取れなければ、それすらも難しい。  病気や障害、生育環境や経済上の問題で張れない=自助努力ができないがゆえに地雷専門店にたどり着いた女性に求められるものは、結局自助努力しかないという残酷な現実がある。彼女たちを共助や公助から疎外し、自助努力もできないほどに壊れ果てた「地雷」へと追いやったのは、他の誰でもない、私たちの社会であるにもかかわらず、だ。"
    →自助・公助・共助という枠組み、しっくりくる

    "NPO業界の人たちは、風俗業界に対して『何が正しいかどうか』といった是非論を語る傾向にあります。しかし、風俗業界の人たちは是非論は語らない。何が具体的に役に立つか、何が実践的なのかだけを考える。"

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著者プロフィール

坂爪真吾(さかつめ・しんご)
1981年新潟市生まれ。NPO法人風テラス理事長。東京大学文学部卒。脳性まひ・神経難病等の男性重度身体障害者に対する射精介助、風俗で働く女性のための無料の生活・法律相談窓口「風テラス」の運営など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書『性風俗サバイバル』『情報生産者になってみた』(共にちくま新書)、『「許せない」がやめられない』(徳間書店)など多数。Twitter @whitehands_jp

「2022年 『ツイッターで学ぶ 「正義の教室」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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