暴走する自衛隊 (ちくま新書)

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著者 : 纐纈厚
  • 筑摩書房 (2016年2月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068750

暴走する自衛隊 (ちくま新書)の感想・レビュー・書評

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  • 今から考えると参事官制度は憲法の中でのしばりをうまくすり抜ける仕方で文民統制を実現した方法だったと思う.自衛官の中に文民統制を嫌がっている空気はあると感じているが,議論の場がないので,さらなる展開が見いだせない状況にあると思う.安倍自体が深い考えができない輩であることから,文民統制をないがしろにしてしまう懸念がある.

  • 山口大学教授(政治学)の纐纈厚(1951-)による自衛隊をめぐる戦後の文民統制論。

    【構成】
    序章 自衛隊の立ち位置
    第1章 安保法制成立後の自衛隊 日本防衛政策の新段階
    第2章 防衛省設置法の改正問題 自衛隊制服組の権限強化
    第3章 文民統制の原点 民主主義と政軍関係
    第4章 戦後日本の文民統制 露呈する矛盾
    第5章 制服組の逸脱行為 自衛隊事件史
    第6章 背広組と制服組の攻防 親米派、自主国防派、旧日本軍との連続性
    第7章 防衛論議の進め方 文民統制は自衛隊存続のため
    終章 文民政治家の資質

    著者は、故・藤原彰門下であり、近代日本における政軍関係研究で知られる。

    本書の内容を簡単に要約してみよう。

    まずはじめに、2015年の安保法制成立に前後して、アメリカとの共同作戦展開に意気込みと期待を寄せる自衛隊の姿を紹介する(第1章)。
    続いて、2015年2月に改正された防衛省設置法改正により、防衛省内局と統合幕僚監部が並列的な立ち位置となったことを引きながら、戦後長らく文官優位を堅持していた体制が大きくねじ曲げられ、制服組の発言力が一気に強まることに警戒を示す(第2章)。
    第3章では、本格的な議論に入る前に、政軍関係論を簡単に紹介する。まず、シビリアン・コントール論の古典・ハンチントン『軍人と政治』である。ハンチントンの「政治が軍事をいかにコントロールするか」というな問題意識に対し、著者はハンチントンが軍隊の専門性と一定程度の自律性を認めているという点を指摘する。また、シビリアンという言葉の原義について、単に非軍人・市民というだけでなく「民主主義的な市民」が担い手たらねばならないと追記される。
    第4章は戦後日本の政軍関係の起源を論じる。戦後の再軍備過程において、アメリカ主導によって誕生した警察予備隊においては、軍国主義・軍人支配を抑制するため旧軍人を排除し、旧内務官僚を主体とする文官がトップとなった。これが、文民統制を実効性を担保し、軍人の支配力増大を徹底的に抑制するために構築された「文官統制」であった。この文官統制は、保安庁設立時の事務処理に関する訓令、さらに防衛庁設置法に明記された防衛参事官制度によって二重三重に担保されることになった。
    しかし、そのような文官統制に対し、背広組は激しく反発し、しばしばシビリアン・コントロールを脅かす行動を繰り返し、なし崩しを図ってきた。具体的には有事における超法規的活動を極秘裏に研究した三矢研究であり、制服組トップである統合幕僚会議議長・栗栖弘臣が公の場で有事法制の必要性を論じた栗栖事件がそうである。また、冷戦後は海上自衛隊を中心に米軍との部隊レベルでの接近や、活動拡大の働きかけが目立つという(第5章)
    このような逸脱を繰り返す自衛隊制服組では、再軍備以来米軍との協調を示す海上自衛隊を中心とした親米派、あるいは田母神元空幕長に象徴されるような復古的な自主国防派など思想的にシビリアン・コントロールに反する思想を持つグループが勢いを増している(第6章)。このような背景には自衛隊の逸脱を許容し、文官統制を廃止に追い込もうとする自民党保守政治家の存在がある。このような存在があるからこそ、単に政治家が軍事について判断するだけでは文民統制は足りず、ともすれば軍事の肯定・改憲、軍国主義の復活に繋がってしまう。(第7章・終章)

    以上、やや冗長となってしまったが、著者の主張である。

    よくある護憲派の主張といえば、それまでだが、シビリアン・コントロールを題材にした議論としてはあまりにも杜撰で恣意的である。文官統制の担い手である防衛官僚については否定的な言辞は一切無く、紹介される自民党の政治家の判断はすべて「反・シビリアン・コントロール」と見なされる。一体何を根拠に防衛官僚が民主主義の忠実な担い手であり、平和主義の守護者であり、バランスのとれた軍事力行使を行いうると判断しているのだろうか。制服組よりも、政治家よりも、国民よりも正しくバランスのとれた防衛官僚に任せておきさえすれば日本のシビリアン・コントロールは盤石だと言うのだろうか。

    また、百歩譲って、著者の極端に偏った前提を受け入れたとしても、日本特有の「文官統制」が「文民統制」一般に恣意的に読み替えてミス・リーディングを誘ったり、戦後初期の再軍備過程について明らかな事実誤認を垂れ流す様は、不誠実極まりない。
    詭弁と虚言を弄する「アジビラ」レベルの書物を近代政治史を専門とする学者が書いたことも、それをちくま新書ほどの良質なレーベルが企画・出版したことも、どちらも同じぐらいショックであり腹立たしい。

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