社会学講義 (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480068989

感想・レビュー・書評

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  • 大学の社会学が十時間で学べるシリーズで進められていた本。
    社会学を俯瞰し、理論社会学、都市、文化、家族社会学などの特色と、調査法についての入門ができる。

    わかりやすいとのことだったが、章によって読みやすさは異なる。理論社会学の2章は、同じ著者の社会学史を読んでないとついていけなかったかもしれない。が、コンパクトにさまざまな視点が得られる良書。
    今回の収穫は、文化社会学での祝祭という考え方と、家族社会学でのものの見方[何かを普遍と考える時に、自己のバイアスに注意しなくてはならぬこと]と、理論、サーベイ、フィールドワークの関係を学べたこと。
    サーベイをとっかかりにしていけば、いろんなことに敷衍できそうで、ますます、データアナリストとしての知見を身につけて行きたいとおもう。

  • 「手軽な新書」として高校生や大学一年生の読者も視野に入れているとまえがきにはあるものの、正直なところ高校生の時に読んでいたら社会学に抵抗を抱いていたのではないかと思った。そこまで易しくはない。

    今までちょっとかじったことのある人が、復習、欠けている部分を補うのには最適であろう。

    あと、入門書は一人の筆者が一部始終書いている本(若林幹夫先生、見田宗介先生など)の方が、その人なりの「社会学」が浮かびあってくるので面白い。

  • 社会学のものの考え方が概括的につかめ、とてもヨカッタです。個人的には、理論社会学と最後の社会調査に関する章が、自らの関心事に近く、また、実践的で参考になりました。

  • 社会学が気になって.
    この一冊で幅広く何となく社会学がわかった気になれる.
    そうなの,わかったような,わからないような.そんな感じ.
    やっぱり社会学って難しい.

    個人を大きくしていくとそのまま社会になるわけでなく,
    社会になる過程で様々複雑な因果関係が生まれるというのは,
    当たり前なんだけど興味深いなと思った.
    数学的帰納法が使えないっていう.
    文系の学問はやっぱり難しい.
    思考のHow toがわからない,という感じ.

  • 社会学とはどんな学問なのかという問いから出発し、都市社会学、文化社会学、家族社会学といった個別分野の解説を行う。なるほど社会学は、政治学でも経済学でも法学でも心理学でもなく、対象の広さが特徴的だと実感。社会学ってどんな学問なのかという問いに応えるものであるから、社会学部を目指そうとする高校生や、私のように「社会学部出身だが社会学はほとんど勉強しなかった」ような人間、又は教養の一環として社会学を学んでみようかなと思う人など、多くの人が読める書だと思う。
     個人的に、一番勉強になったのは、ウェーバーの「価値事由」という概念。これは、あの社会事象を分析する者もその分析の対象である社会の構成員であることから、当該事象を客観的に観察し分析することは不可能だとして、それでも自らが特定の価値観に依っていることを自覚し、自らの価値観を特別視しない姿勢といった意味です。これは、自分が職場で働く上でも有益な点だと思う。自らの考えを絶対視せず相対化させること・・・難しそうだけれど。

  • 前提の知識が少なくて、読むのに少し時間がかかってしまった。再読したい。

  • そんなに本を読まないから少し言葉が難しく感じたけど最後の二つの章が読みやすかった

  • 社会学とはなんぞやと思い手に取るも、なにでもないことがわかった、という感想。
    それがわかっただけでも収穫なのかな?

    1章は橋爪大三郎の社会学概論。文章がわかりやすくサクサク読めるが、その分内容としてはごく初歩の大枠だけのはず。
    啓蒙思想からコントに続く社会学黎明期、ジンメル、デュルケム、ウェーバーのレジェンド3人による理論化、パーソンズの社会システム論の衰退。
    それ以降に理論面の主だった進歩はないらしく、どうも頼りない印象。

    2章は大澤真幸の理論社会学。読み手の問題だろうがまったく理解不能。入試現代文を彷彿とさせる用語と文構造の難解さで、辟易して読み飛ばしてしまった。

    3章・4章はそれぞれ都市社会学と文化社会学だが、内容はどちらも都市について。4章著者の吉見俊哉氏の専門が都市寄りだからか。
    3章は引き続き入試現代文感のある抽象論。4章は具体的で読みやすかったが、吉見氏の『都市のドラマトゥルギー』の抜き書きの印象は拭えない。

    5章の家族社会学は、まあよかった。再刊にあたって唯一書き下ろされた章らしく、現代日本社会の家族形態につき親密性の規範、個人主義などをテーマに分析する。
    やや本筋が分かりづらく、議論があっちこっちへ行って中だるみするフシはあるが、その分厳密な記述には思えた。

    6章の社会調査論はあまり興味なく読んだが、これが一番面白かった。
    理論と調査に大別される社会学において、調査の中でもサーベイとフィールドワークが存在するが、著者はフィールドワーク側。そのためか文体が柔らかく、読んでいて理解に困ることがない。


    全体を通しての感想としては、お腹いっぱい。どちらかといえば悪い意味で。
    社会学について何も知らないので、まずこの本で社会学の全体像をある程度把握して、何冊か読んでみようかなというつもりで手に取った本書。
    しかし幹にあたる理論は、抽象度が高すぎてよく分からずじまい。かと言って、より詳しい本にチャレンジしたくなるほど興味深いものが垣間見えたかといえば、そうでもないかな…。
    各論の中には面白そうなテーマもあったが、あえて社会学と名前をつけなくても、それこそ新書にはこういう文章は他に山ほどあるはず。

    今後の読書でも、意図せず社会学に触れることはあるだろうけど、好き好んで「社会学〇〇」に手を伸ばすことはないだろうなー。
    残念なような、気が楽になったような…
    ともあれ、社会学とはそのぐらいの付き合い方でいいか、と思わされた一冊でした。

  • 《最後に、③家族の情緒的な結びつきを不可欠なものとして重視する、愛情の規範化である。ここで問題となるのは個々人の現実以上に、社会的な規範の水準である。アリエスが強調したように、家族の親密性が社会のレベルにおいて規範化され、価値づけられるという意味において、近代家族は愛情中心主義なのである。》(p.192)

    《もし仮に現代ならではの格差の特徴を挙げるとすれば、それは格差が個人に帰責され、脱・社会問題化されるという現象にこそある。そしてこの脱・社会問題化の構造を下支えしているのは、近代家族のプライバシーと自助原則と愛情の論理ではないかと思う。親が子どもにコストをかけることは、社会的資源の多寡や不平等の文脈ではなく、個々の親の愛情として解釈される。子育てや介護にかかるコストは家族のみの責任とされ、家族愛や母性愛や夫婦愛の論理によって正当化される。それが個人への帰責を正当化し、可能とし、推し進めている。
     今問われるべきなのは、現代の「多様性」のなかに見え隠れしている社会的な課題を脱・社会問題化させてしまう、家族の親密性の規範のほうではないだろうか。》(p.210-211)

  • なぜ読んだ?:
    2020の夏頃、社会学を学んでみたいと思っていたとき、図書館でこの本を発見し、借りた。だがその際は読むに至らず返却した。
    その後千葉雅也『勉強の哲学』を読んだら、学び方の実践例として社会学を学ぶことが取り上げられており、これをきっかけとしてまた「社会学の入門書を読もう」という気持ちが生じた。このため、本屋でこの本を購入し、読むに至った。

    感想総論:
    社会学の各テーマについて別々の社会学者が述べている。
    社会学の内容はもちろん書いてあったが、それよりもメインとしてモチベーションや研究するに至る背景を知ることができたと思う(教科書ではなく入門講義なので)。
    我々が当たり前だと思っている現代社会を相対化していくのが大変面白い。
    6章の社会調査論は、研究するとはどういうことが、調査とはどういうことかという他分野にも応用できる一般的な内容を読むことができて面白かった。

    読書メモ:
    社会学では、還元論的にではなく、人間の関係を研究。

    データの処理、データの解析、データの解釈
    データ解釈のパッケージ化、他者の理論に依拠した論文生産

    社会学は常識の下に潜るタイプの学問。ちなみにこのタイプの極致として哲学がある。
    「社会秩序はいかにして可能か」

    177「比較研究のためには共通の定義が必要」という発想それ自体が、現象面の多様性に対してアカデミズム内の既存理論の認識枠組を押しつける、本末転倒なものだ

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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