アレント入門 (ちくま新書1229)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069405

感想・レビュー・書評

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  • アーレントの思想の全体像をわかりやすく解説している入門書です。

    『全体主義の起源』や『人間の条件』で論じられている公共性の問題にまつわるアーレントの議論を明快にときほぐし、そこでの議論にもとづいて『イェルサレムのアイヒマン』でアーレントが何を問題にしているのかということに切り込んでいきます。その上で、アーレントがソクラテスの道徳性やカントの共通感覚などの思想からなにを学び、全体主義や公共性の喪失といった現代的な状況のなかでどのような倫理の可能性を見いだそうとしていたのかが論じられます。

    アーレントという思想家には、どことなく魅力を感じつつも、ポストモダン思想の軽やかさに一度は魅了された者としては、「公共性」という問題設定に窮屈さを感じていたのですが、本書を読んでその思想の根幹にあったものと、自分自身がどの点に引っかかりをおぼえていたのかが明確になったように思います。

  • ブログ更新:『アレント入門』中山元
    http://earthcooler.ti-da.net/e9403572.html
    本書は思想家の「入門もの」であるが、ハンナ・アーレントがドイツを離れて亡命するきっかけに切り口をしぼっている。アーレントが亡命したのはナチスの迫害を逃れるためであったことはいうまでもないが、「出来事」としてより注目すべき点がある。それは、それまで信頼していた友人たちがナチスのイデオロギーに幻想を抱いたことに衝撃を受けたことにある。ドイツの良心的な善良な市民が、なぜユダヤ人の迫害に目をつぶり、ナチスの道徳規範を受け入れたのか、という。

  • アレントが、ナチスを例にした全体主義、アイヒマン裁判を通じて表した悪の凡庸さ。人が、どうしてそれらを受け入れたか、それらをどう防ぐことができるかを思考したことを解説する良質な入門書。
    今、世の中に上げる声が、自らで思考したものなのか、自己愛だけで他者への意識が欠けてないか。
    結局、そこに行き着くのに…。忘れないようにしよう。

  • 「発言するということは、そのようにその人の人格とアイデンティティを作りだすと同時に、それを他者の面前にさらけだす行為である。発言はみずから危険をおかすことであり、その危険を引き受けようとする勇気を示すことである。-発言することは、他者から反論されることを引き受けることである。」

    「1930年代のドイツで失われていたのは、まさにこの公的な領域だった。人々が大衆としてではなく、市民として発言するための場所が失われいたのである。」

  • 全体主義と戦った政治哲学者の思想のエッセンス

    おぞましい悪を成し得たのは、凡庸な悪だった

    想像力の欠如と思考の停止

    自分との調和の大切さ

    労働、仕事、活動
    公共の、現れの空間、社会

  • アレントによる道徳観の分析を分かりやすく読めました。ずっと気になっていた悪の凡庸さのつまみ食いが出来て嬉しい。

  • ハイデガーをかじってても思うが、ギリシャに夢見すぎでは。アレント個人には興味を持つが哲学的思想にはやはりというかハイデガーの面影が濃い

  • アレントを読み解くうえで、ソクラテスやカントの議論が出てきたが、理解するのに役だった。
    先にエルサレムノアインヒマンを読んだけど、自分の理解であながち間違ってなかったようで一安心。

    アレントを最初に読む場合には、この本を読んでから始めると理解しやすいと思う。良書。

  • アレントの有名な著書を集め解説した本です。凡庸な悪という言葉で有名なアレントの思想を知ることができる、私のような学生にも読める本だと思います。

  • 哲学

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著者プロフィール

中山 元(なかやま・げん)
1949年生まれ。東京大学教養学部中退。思想家・翻訳家。著書に『思考の用語辞典』などが、訳書にカント『純粋理性批判』、ハイデガー『存在と時間』などがある。

「2022年 『道徳および立法の諸原理序説 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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