不平等を考える: 政治理論入門 (ちくま新書1241)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069498

感想・レビュー・書評

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  • 平易な文章で読みやすく、また極力客観的な視点から書こうとしているのが好感する。逆にそれ故に、抽象化された概念や考え方を批判している箇所が、具体的には昨今話題になっているあの事象に対する批判なんだな、という感情的、主観的な部分が垣間見える箇所があり、筆者がこの本を通じて何を訴えたかったのかは伝わるようになっている。

    この国には政治的に、公共意識的に未熟な部分が少なくないと感じる。そのことを示唆する1冊として価値がある。

  • 社会
    政治

  • 不平等をきっかけに政治の在り方について考えることを狙った本で、大変良い規格とは思う。ただし、前提となる現実の捉え方に不満を感じる。

  • 内容はいいけど、読みにくい

  • 授業の教授が書いていた本でふと図書館で目に留まったので拝読。基本所としてわりあい広範な範囲をカバーしているので要約は難しい。。。

    第一部。市民の平等について。全市民はあくまで市民としては対等でなくてはならない。他者の意思の支配下に置かれることなく自律を保ち、相互承認に基づく自尊心を持つ必要がある。不平等を是正する制度を運営するための市民の連帯をどのように確保するか。ナショナリズムは感情に訴え、より強い紐帯をもたらすかもしれないが抑圧的になりうる。一方憲法パトリオティズムでは比較的弱い連帯になるとも考えられ、制度の一部でない全市民への有用性とそれへの市民の理解が不可欠となる。

    第二部。不平等を是正する社会保障について。そもそも連帯して社会保障をする理由とは。国家主義的な生の動員、各個人の合理的リスクヘッジとしての生のリスク、運の平等主義による補償と合わせた生の偶然性、依存は不可欠とすれば支配関係を伴わない制度整備が必要になるという生の脆弱性、多様性の発現のための生活基盤を与える生の複数性。
    単なる事後的な補償としてのセイフティネットは貧困を防ぐだけで不平等は解消されず。事前の保障、再分配により各市民の生の見通しを明るく。ロールズの財産所有のデモクラシー。
    保障するべき不平等とはどう測定するか。主観的な厚生主義。あまりに客観的で個人の差異を考慮しない資源主義。そして、A・センによるケイパビリティの観点。
    社会保障の充実は必ずしも経済不活性を意味しない。教育や職業訓練による人的資本の形成、公共サービスの提供のための雇用がローカルな場に創出、人々の生活不安を減らし消費投資を活発化。

    第三部。デモクラシーと平等について。公共的理由・価値とは多数者の利益でも各私利益の共通部分でもなく、市民として理にかなった拒絶可能性がない利益。「包摂性」と「対等性」が正統制を担保する。多数の暴政をいかに防ぐか。熟議。数でも金でもなく理由の力。不在の観点も公共的推論によって再現前化して包摂的により正しい決定。しかし専門家による寡頭政治を導く可能性。バイアス、観点の貧しい多様性、為政者が私的利益に誘導する可能性、市民の問題提起の能力の損失という点から寡頭制は望ましくない。市民による熟議の必要性。それにより理由のプールも形成されていく。個人の意思は所与ではなく熟議によって変わり得る。informed and reflected opinion であるべき。機会をいかに確保するか。

  • 311.1||Sa

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著者プロフィール

早稲田大学教授。1958年生れ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。専門はアーレント、規範的政治理論。早稲田大学政治経済学術院長。著書に『公共性』『自由』『政治と複数性――民主的な公共性にむけて』(以上、岩波書店)、『不平等を考える――政治理論入門』(ちくま新書)、共著に『公共哲学』(放送大学教育振興会)など。

「2023年 『公共哲学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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