武士道の精神史 (ちくま新書1257)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069603

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  • 図書館にて借りた本。
    今もなお日本人の心に連綿と受け継がれる武士道について詳しく書かれた本。

    新渡戸稲造の武士道も読んだが、新渡戸稲造版は海外向けの本であったこと、日本の武士道に関する文献から参照していないこと、この二つから類書を読み直した。

    徳川時代の200年間は東アジアにおいて最も平和な期間であった。政治的にも経済的にも韓国や中国と交流があった。また日本国内でも争いごとはなく平和であった。

    加えて徳川時代の武士は勉強熱心で強かった。薩英戦争や下関戦争でも、自ら熱心に海外について学び作り上げた大砲技術で外敵を退けた(下関戦争ではハンディもあり敗北したが大健闘)。これまでは明治維新の功績によって日本が列強の植民地にならずに済んだと思っていたが、そもそも徳川の時代から強かったのだと知った。

    武士道七則に、忠、義、勇、誠、証、礼、普がある。

    「忠」では隷属的に命令に従うのが大切だと思っていたが、これは基本レベル。上級レベルの「忠」はもし目上の人が間違っていれば諫言しなければならない。

    「意地」という言葉も注目しなければならない。これは英語にうまく翻訳できない言葉で武士道を考える上で大切。意味として気概や信念と近いが、より泥臭くふくらみがあり理屈では説明できないエモーショナルな面もある。このように武士道には理屈で理解するのではなく、感情や感覚に頼ることもある。

    徳川時代の女性の権利は尊重されていた。他の国と違い自由に出歩くこともできた。これも徳川時代の武士道の特異なところでもある。しかし明治維新で海外から騎士道の精神が入ってくる。騎士道の精神において女性は、「尊重されるもの、保護の対象である」とされている。
    このことから女性の権利や差別の問題はヨーロッパの騎士道から起因していると類推できる。

    「村八分」はルールを守らない者に対しての制裁行為であった。また残りの二分あり葬儀や有事の際には助け合った。

    「捲土重来(けんどちょうらい)」とは自分が相手よりも劣っていることを事実として受け入れてその反省に立って巻き返す努力をすること。これは筆者が現代の日本人に伝えたいメッセージ。また「どんなに仲の悪い相手でもその人が行った優れた業績を褒めれない者は弱い侍である」という考えがある。自分にとって耳が痛い話で自分も捲土重来の精神を取り入れたい。

    新渡戸稲造版より読み易く、現代社会にも転用しやすいと感じる一冊であった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689685

  • 助け合い、震災の際にも略奪がない日本人の国民性と武士道の関連を論じている。武士道は時代とともに変わるし、新渡戸稲造の描いた武士道は歌舞伎などから着想を得て明治期に英語で書かれた。イメージの「忠義のために死ぬは」すべて正しくない。

    日本人の道徳観の形成に影響したと思うが、過大評価はどうかと感じた。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授、大阪学院大学法学部教授。博士(文学)(京都大学)。専攻は日本近世史・武家社会論。主な著書に『主君「押込」の構造』(平凡社)、『士(サムライ)の思想―日本型組織・強さの構造』(日本経済新聞社)、『武士道の精神史』(ちくま書房)、編著に『徳川社会と日本の近代化』(思文閣出版)、『徳川家康─その政治と文化・芸能』(宮帯出版社)ほか多数。

「2020年 『信長の自己神格化と本能寺の変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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