医療者が語る答えなき世界: 「いのちの守り人」の人類学 (ちくま新書1261)
- 筑摩書房 (2017年6月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480069665
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
血圧を下げる薬を飲むことへ抵抗がある患者さん自身が、納得することが大事であるから、最適解である薬を無理に渡すのではなく、遠回りでも別の治療法からアプローチしていく話は、どの分野でも同じ状況にあると思う。
近道に見える遠回りも、遠回りに見える近道もあるのだと感じる。 -
医学部分館2階書架 : W 062/ISO : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169805
-
医療人類学者・磯野真穂さんの著書。インタビューを通して、医療者の苦悩や葛藤が描かれていて、人類学的視点から考察されている。
特に気になったのは、医学と医療の違い、そして「患者中心の医療」のこと。
・・・
p163 「医療者の仕事の根幹は、モノとしての人間を徹底的に標準化することで体系づけられた医学という知を、それぞれの患者の人生にもっとも望ましい形でつなぎ合わせ、オーダーメイドの新しい知を患者と共に作り出していくことにある。」
p164 「医療者の仕事は医学を医療に変換すること。」
まさにこれは患者中心の医療のことじゃないかと思って読み進めると、やはりエピローグにもまとめられていた。
p221 「近年いわれる「患者中心の医療」は本人たち自身が主役にならなければ成立しえず、それは私たち自身が自分のカタチをよく見る作業抜きには語れない。」
患者が医療者に「命のアウトソーシング(p55)」をするのではなく、患者は自分自身のことと引き受けつつ、医療者は患者とともに考え、患者の生き方を支えていくことなのだろう。 -
実際に現場にいても答えのないことばかりだし、evidence全盛とはいえ結局はnarrativeに一例ずつ向き合うしかないのが現状。
手術室でここからは清潔だとそこにいる皆が信じて動くのは呪術なのだという考えは面白い。 -
医療人類学の視点から、医療従事者を見る。
-
エピソードによって得るものがいろいろ変わる、玉石混交
-
治療を無視して勝手に買い食いする末期の肝癌患者と新米担当看護師。自由のない療養型病院から逃げ出したいおばあちゃんと新米ケアワーカー。患者に対する身体拘束や胃ろう。医療者は日々進まねばならないが、安全のためと言ってお年寄りを拘束しても良いのか?