素晴らしき洞窟探検の世界 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480069979

感想・レビュー・書評

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  •  只々、『すごい』の一言に尽きる。

     世界に未踏の高峰はもうないのだから、わかりやすい形での冒険、社会的に価値のある冒険行は成り立ちにくい。現代の冒険は、個人の価値観が冒険行に価値を付加するだけだ。つまり、個人の発想から生み出された冒険行が、その個人の喜びに変化していくことこそが、現代の冒険だと思う。

     洞窟探検家の吉田勝次さんの洞窟探検、冒険行は個人の枠に到底とどまらない。人跡未踏の地を開拓していくところは、未踏の高峰を征服するかつての冒険と同等の社会的価値があると思う。パイオニアワークだと思う。

     素晴らしいに尽きる

  • 洞窟探検がどのように行われているか、面白く、時に死と隣り合わせのエピソード、綺麗な写真などを紹介することで、一般向けに洞窟「探検」の魅力を紹介する書籍。

    非常に具体的に描写をしてくれていて、類書は見たことないので興味深くはある。ただどうしても自分が全くイメージできないような場面が多くあるため、書籍の文章を読んだり簡略図を見ても今ひとつどういう状況なのかわからない場面も多くあったのは事実。綺麗な写真やエピソードが魅力的だが、探検の過程を説明するメディアとしては文章よりも映像の方がいいんじゃないかと感じてしまった。

    また秘境探検で辛い場面だけでなく、外国とのコミュニケーションで苦労したが多くあったのは意外だった。洞窟探検とは趣旨が違うが、洞窟探検に踏み切るまで絵に必要なコミュニケーションの中で、楽しかったエピソードも紹介してくれると秘境探検記的な楽しみ方がよりできたかも。

  • 洞窟探検家「吉田勝次」、遅れながらクレイジージャーニーで知りまして、唯々凄い人だと思ってましたが、本書もめちゃくちゃ面白かった!

    なにより諸々の探検内容や活動技術の説明がシンプルかつ明晰で、吉田さんはすごいプロフェッショナルなんだなってことが凄く理解できた。自分自身のことだけでなく、探検隊員や洞窟に関係する周りの人、そして洞窟の先々のことを常に真剣に考えてアクションしていて、まさに真のリーダーなんだなって思った。
    また「絶体絶命」、「危機一髪」というワードが連発、それも吉田さんらしいなって思った(笑)。

    「霧穴」の紙上探検だけで十分興奮したし、本当に面白い一冊でした!

  •  ケイビング趣味が高じて専門家の域に到達した方の、洞窟語りの本。その2。
     前作「洞窟ばか」が、ご本人の『人柄』の本だったのに対し、こちらは『洞窟』にフォーカス。
     どんな洞窟に入っているかがよくわかる。
     ホームグラウンドの霧穴のほか、ハワイの溶岩洞窟とか、塩の結晶を見ることができる洞窟とか。霧穴の紙上探検はイラストでの説明も多くて、イメージしやすく、楽しかったです。

     実際の洞窟探検は、想像以上に怖かった。
     岩に足を挟むリスクとか、縦穴から岩が落ちてくるリスクとか、大岩が崩れてきそうな細~い道とか。ケイブダイビングの危険性はゲーマー基本知識としてはありましたが、話の臨場感はまた格別。
     洞窟内に泊まることもあるとのことで、洞窟内での食事や、寝る環境についてなど、こまごま~としたことも書いてあります。軽く冒険気分を味わえました。

     行ったはいいが戻ってこれないかも、戻りに手間取っているうちにボンベの酸素がなくなってしまうかも、みたいなシチュエーションはすごく怖い。読んでて息苦しくなるくらい。
     危険な場所に行くだけあって、入念な準備とか、縦穴下りの技術とか、現地での心構えとか、その辺りの重要さも語られていて、深く納得。ここまで準備をして、ようやく、入ることができる場所。洞窟。

     内容は一部、というかかなり「洞窟ばか」とかぶっている(写真も同じものがある)のですが、こちらの方が文体が落ち着いていて、情報量も多いので、洞窟についてじっくり知りたかった私としては満足です。

     最後の、ラスコー壁画の対談も楽しかった。ご自分がクロマニヨン人であるかのように、真っ暗闇のラスコー洞窟の縦穴を下る様子を語るの、おもしろすぎる。

  • 分かりやすく、楽しい本だった。変な思想がなく、純粋に楽しんでいるのがカッコいい。

  • 地下世界がどうなっているのかを克明に伝えてくれると同時に、なぜそんな世界に惹かれるのか?という部分の答えも雄弁である。
    さらに面白いのは、洞窟を「捜す」というところ。捜す過程が、そのまま洞窟の成り立ちの解説になっており、学術書としての構造も確かである。良書。

  • 冒険もののリアルな体験を知りたくて読んでみました。

    目次を見ただけでも、様々な洞窟で著者に起こったハプニングや過ごし方などが、ふんだんに載っていることがわかります。

    写真や図解もあるため、そのときの景色が目に浮かぶようです。特に、プロローグにあった、狭い斜面の通路に頭から滑りこんで身動きが取れなくなったくだりは、思わずこちらも息がつまりそうになるくらいには、とても引き込まれる内容でした。
    他には、アルカリ性の洞窟には(何のとは言いませんが)骨が残っていたという話や、潜水時に帰りのみちしるべになるラインを見失った話、しかし、そんな危険な目に遭っても洞窟探検の魅力にあらがえないのは一体何なのかなど、生き残った著者だからこその体験談も書かれていてとても濃い一冊になっています。

  • 特攻隊の本を立て続けに2冊読んだあとなので、洞窟探検などという行為が軽薄な道楽にしか感じられず困った。
    でも読み終わる頃にはすっかり洞窟に行きたい気分になってしまったから、つくづく平和な世の中はありがたいなと思う。

  • <目次>
    プロローグ 洞窟探検への招待
    第1章   大洞窟「霧穴」を紙上探検する
    第2章   石灰洞窟と火山洞窟
    第3章   世界のすごい洞窟
    第4章   未踏の地を探して
    特別付録  洞窟壁画の謎に迫る~吉田勝次vs五十嵐ジェンヌ

    <内容>
    洞窟の探検家による、洞窟の魅力を余すことなく紹介した本。高いところ、狭いところが苦手な著者が、なぜそれを兼ね備えた洞窟探検に目覚めたか?幼いころ、近くのドブ川でいろいろな生物を夢中で捜していて、つい道路を潜る長い側溝に潜り込み、500mほどの対岸(?)に辿り着いたことから。
    この本には日本の有名どころは全く出てこない。石灰岩地層から自ら洞窟(鍾乳洞)を探すところから始まる。あとは読んでのお楽しみ。私は1日で読み終えてしまった。

  • 洞窟探検の経験談が凝縮されています。
    クレイジージャーニーがいかにうまく分かりやすくまとめられていたかということも実感できました。
    吉田勝次さんの人生が垣間見えます。

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著者プロフィール

洞窟探検家。1966年、大阪府生まれ。20代後半で洞窟にのめり込み、今まで入った洞窟は国内外含め1000以上。(有)勝建代表取締役、(一社)日本ケイビング連盟会長。洞窟のプロガイドとして、テレビ番組での洞窟撮影、学術調査、研究機関からのサンプリング依頼、洞窟ガイド育成など、洞窟に関わることならすべて請け負う。洞窟をガイドする事業「地球探検社」、洞窟探検チーム「JET」、洞窟探検プロガイドチーム「CiaO!」主宰。

「2021年 『洞窟ばか~すきあらば前人未踏の洞窟探検~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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