向う岸からの世界史―一つの四八年革命史論 (ちくま学芸文庫)

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著者 : 良知力
  • 筑摩書房 (1993年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480080998

向う岸からの世界史―一つの四八年革命史論 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1848年ウィーン革命は、そのスローガンは「ブルジョア的」でありながら、多くのプロレタリア・賎民の血によって書かれているという。
    余りにも多くのことに無知な自分を恥じ、そして焦る。

    あとがきから引用
    『本書のモティーフがたんなる反西欧で、たんなる反市民社会論だ、などと即断されても困る。「向う岸からの世界史」は、依然としてわれわれにとっての世界史でもある。ただ、世界史を自覚的にとらえうる能力が向う岸だけのものだという発想こそが、せまくるしく、(中略)なお自然的制限からぬけきれず、無自覚であり、したがって人間的たりえないのではないか。それこそが普遍的精神とは縁遠い発想ではないか。普遍性とは自己を限定しうる能力のことだ、ともいえよう。他者のなかで、他者をとおして自己限定しうる能力こそが普遍性につながるのであろう。だから、普遍性は川の向う岸からもこちら側からも、どちらからもそれとしてとらえることができる。こうして普遍性は歴史のなかで限りなく重層化する。そのような普遍史の重要性をそれとして認識しうる力こそが、世界史を知的に構成しうる能力となる。』

  • ぼくにとっては、ぞくぞくするような、素敵な本でした。とってもお薦めな本なのですが、一般にはちょっと取り付きにくい本かもしれません。なにしろテーマが1848年のウィーン革命というマイナーなものですから、多少の予備知識を仕込んでから読んだほうがよいでしょう。
    1848年革命といえば、なんといってもフランスの2月革命が思い浮かびますが、この革命はドイツへさらにオーストリアとハンガリーへと飛び火して全ヨーロッパ的な広がりを見せた後、たちまち反革命勢力に制圧されてしまいました。その中でウィーン革命は一般には一挿話的に取り扱われるようなものですが、著者は、それをメイン・テーマとしてこだわり抜きます。
    この本は、いくつかの雑誌に掲載された思想史および歴史学の学術論文や仮想的な対話篇、ウィーン便りから構成されていて、雑多な印象を与えますが、1848年のウィーン革命という強靭なテーマが貫いています。
    そして、その中で、この革命がプロレタリア革命を内包したブルジョア革命であり、民主化が民族問題と絡まりあっていたという複雑な性格が解き明かされ、この19世紀の革命が一挙に現代性を帯びて立ち現れて来ます。その底層にある歴史家の志まで感じられる、そんな強烈な印象の残る本です。

  •  ウイーンのプロレタリア革命の悲惨な結果を描いた歴史である。最初だけを読んだならば、固すぎてやめてしまう学生がいると思われる。順序を逆にして、本人のウイーンの生活の随筆から始めればもっと皆に読まれると思われる。

  • 某日、時間が少しあったので、ふらっと書店に立ち寄ったときのこと。
    たまたま何気なく「ちくま学芸文庫」の棚を見ていたら、懐かしい名前と本に出会いました。

    良知力は存命なら80歳ですが、惜しくも25年前の1985年にわずか55歳で亡くなった社会思想史家・哲学者です。

    私が彼と最初に出会ったのは、11年前の高校生の頃、夏休みに山谷に行ったついでに立ち寄った神保町の古本街でした。そのときの目的は、「SFマガジン」の創刊当時の号や雑誌「映画批評」を探すことでした。

    偶然手に取った中に、1975年頃に社会思想社から出ていた、その名もずばりミッシェル・フーコーの著作と同名の「知の考古学」という雑誌がありました。そういえば、それを見たのは初めてではなく、父の蔵書のなかに何冊かあったのをチラッと読んだ記憶がありました。この際だからということで、手まわしよく手帳にメモっていた欠版をチェックして、11号すべてを揃えることができました。

    この「知の考古学」は、マルクスやマックス・ウエーバーの特集を組んでいるので社会科学系かと思うと、ある号には幸田露伴を取り上げていたりします。

    毎回、廣松渉・見田宗介・樺山紘一・和田春樹・多木浩二などそうそうたるメンバーが書いていましたが、そういえばちょうどこの頃、たしか初期マルクスを探究していたのが良知力と廣松渉でしたが、今では廣松渉ひとりが名を残すばかりで、良知力の方がまったくといっていいほど忘れられている気がします。

    この本は、1848年のウィーン革命はブルジョワ革命ではなくプロレタリア革命だったという、彼の生涯をかけての研究のひとつの重要な到達点であり、キャスティング・ボードとなる著作です。

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良知力の作品

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向う岸からの世界史―一つの四八年革命史論 (ちくま学芸文庫)の作品紹介

1848年のウィーンの革命史の実態を詳細に描くなかで、著者は「歴史なき民」こそが歴史の担い手であり、革命の主体であったという事実を掘り起こす。少数民族や賎民が生き生きと描かれた本書は、著者の自己の半生をかけて達成した成果を克服しようとする試みであり、思想史から社会史への転換点を示す記念碑的作品である。

向う岸からの世界史―一つの四八年革命史論 (ちくま学芸文庫)はこんな本です

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