英文法を考える (ちくま学芸文庫 イ 11-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480082305

感想・レビュー・書評

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  • 英語の文法を、たんなる語と語をつなぐ「形式」としてとらえるのではなく、「意味」や「コミュニケーション」といったものとの密接なつながりのなかでとらえなおす見かたが、わかりやすく解説されています。

    著者はまず、学校文法の大きな枠組みとなっている五文型をとりあげ、それによっては見えてこない文の構造にかんする理解へと読者をみちびいています。さらに認知言語学的な観点から、文の「形式」と「意味」のかかわりについて多くの事例を引きながら説明し、コミュニケーションやレトリックなどのテーマにも踏み込んでいます。

    英語の動詞と日本語の動詞をくらべて前者には「他動性」が高いという指摘がなされていますが、最後のレトリックをテーマにとりあげた章ではこうした見方が拡張され、やや文化的な類型論に行き着いてしまっているような印象もあります。それまでの議論がたいへん興味深いものだっただけに、すこし残念に感じました。

    「付録」では、著者が辞書の編纂にかかわったときにインフォーマントによって指摘されたいくつかの問題点があげられ、本書で示された観点からの解説がおこなわれています。この部分はたいへん勉強になることが多く、とくに有益な内容を含んでいるように感じました。

  • 評判が良かったので読んだ。
    なるほど、こういうことだったのか、というのがやはりあった。
    また、英語を勉強?することによって、日本語を改めて考える、日本語の勉強にもなる。
    結構前の本なので、今となってはもしかしたら違う見解が、という部分はあると思うが、一読することをおすすめ。

  • 本書は、従来の学校英文法の考え方に疑問を投げかけ、実際の言語使用に即した英文法のあり方を探っています。私たちにとってなじみの深い伝統的な学校文法では、いわゆる「五文型」を文法の基本的な知識として学習します。純粋に英語の文構造をとらえるだけであれば、五文型を知っているだけで十分かもしれません。しかし、意味や実際の使用について考え始めると、とたんに五文型という考え方では説明がつかない事実に出くわすことになります。例えば、A cat bit a rat.とJohn had blue eyes.は、いずれもSVOという同じ第三文型の形をしています。ですが、受動態にできるのは前者だけで、A rat was bitten by a cat.とは言えても、Blue eyes were had by John.とは言えません。単に文型に関する知識があるだけではこの事実を説明することができず、ひいては、実際に使用する場面で誤った表現を用いてしまうことになるかもしれません。こうした事実を説明するためには、文型以外の要因を考慮に入れる必要があります。本書は、五文型の考え方ではとらえることが困難な事例を多数紹介し、それらについて、意味や語法の側面からていねいな説明が与えられています。英語学習者にとってとても参考になる一冊と言えます。
    (ラーニング・アドバイザー/人社 IKARASHI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1477307

  • 学校文法の老朽化は国文法で指摘せられているが,英文法でも同様のことがおこっている。すなわち,従来の5文型がそれである。今日国外では,5文型にSVA(A: adverbial;副詞句),SVOAを加えた7文型が有力な説である由。

    また,callが「電話をし」かつ「実際に話す」ところまでを含意するなど,われわれが気づきにくい点についても述べられている。

  • 英文法的正しさと英語的正しさ、日本語的な感覚との関連などについての考察。学生時代アンダーラインを引きながら何度も読み返した本。英語教育のヒントにもなる。

  •  手もとの本は、1995年刊のちくま学芸文庫版。
     「<文法>と<コミュニケーション>の間」の副題を持ち、1991年に「ちくまライブラリー」の1冊(56)として刊行された本の文庫化。

  • 「5文型」や「書き換え(受動態→能動態、二重目的語構文→与格構文など)」などの学校英文法を切り口にして、「<文法>と<コミュニケーション>の間」を埋める意味論とテクスト言語学・語用論の面白さが十分に紹介された入門書。
     個人的には2章の「意味と文法」がとても興味深く、I struck Bill on the head.は正しいのに、*John struck the nail on the head.はなぜ非文なのか、I raised my hand.のmyを定冠詞に変えるとなぜおかしくなるのか、She asked him to leave.とShe asked that he should leave.の違い、The forecase says that it's going to rain.のthatを取ると意味はどう変わるか、persuadeと「説得する」の違い…などなど、思いもよらない奥の深さに感動した。大学の授業の意味論でも聞いたような話の復習にもなる。

  • 教授の推薦本。

  • 文庫版解説。これは…川村先生がオススメするのもわかる内容。かなりコンパクトな「認知文法(<言語学)」の独自性をついているんじゃないか。国文學 解釈と教材の研究 の宮崎和人による「認知と生成、どこが違う?」のように大仰なものでなくても、ばっつり掴めると思う。むむむ!<br>
    内容としては他との被りも多いようだけど。それにしても、能動/受動の「書き換え」がこんなにも差のあるものだっていう指摘だけでも大きいやね。

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著者プロフィール

1934年、京都市の生まれ。東京大学で英語英文学、イェール大学で言語学専攻。現在、東京大学名誉教授、日本認知言語学会名誉会長。インディアナ大学、ミュンヘン大学、チュービンゲン大学、ベルリン自由大学、北京日本学研究センターなどで客員教授、ロンドン大学、カリフォルニア大学バークレー校などで客員研究員。Longman Dictionary of Contemporary English(3rd ed.),『ロングマン英和辞典』の編集で校閲者。著書に『意味論』『「する」と「なる」の言語学』(大修館書店)、『記号論への招待』『ことばの詩学』(岩波書店)、『〈英文法〉を考える』『日本語と日本語論』(ちくま学芸文庫)、『英語の感覚・日本語の感覚』(NHKブックス)など。言語学研究書の翻訳、論文多数。

「2022年 『ふしぎなことば ことばのふしぎ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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