雨月物語 (ちくま学芸文庫 コ 10-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480083777

作品紹介・あらすじ

独創的な幻想が綾なすファンタジックな世界-この幻想空間を描いて他の追随をゆるさない上田秋成『雨月物語』。それは、中国白話小説の用字や修辞を巧みに活用し、芸術的香気ただよう文章のうちに、主人公たちとその運命の悲劇的な情念世界をみごとに造形化した。貞女宮木、悪霊磯良、蛇精真女児らの悲しい運命を、作者の夢想的稟質と自覚的な方法が知的で美しい幻想小説に織りなしていく。この『雨月物語』の世界を、読みやすい本文とともに、語釈、現代語訳、さらには鋭角的な評を付しておくる。「訳注日本の古典」シリーズの決定版。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり古典は読むべきです。怪異譚として素晴らしい。特に「吉備津の釜」、「邪性の婬」が気に入った。京都に行った折、「仏法僧」に出てくる「悪ぎゃく塚」を尋ねて瑞泉寺を訪問しました。

  • 上田秋成の雨月物語を村上春樹の本で紹介されていたので読んでみた。
    雨が降る日、もしくは月夜の日に幽霊や鬼などの怪談話が繰り広げられる内容である。

    作者の上田秋成が怪談話という物語に乗せて、自分が思っている思いや考えを伝えているところが特徴的。
    上田秋成の仕事は「町人」。江戸時代の職人、商人のことを「町人」というらしい。「貧福論」という章では、町人の上田秋成らしさが一番出ていた気がする。

    現在の貧富は前世の行いによって決まるというのだから、もし前世の行いが良くて現在で富んでいるのであれば、現在も行いが良くなるはずだ
    でも、実際には10人に8人は富を守るべく悪行をしている。

    一方で貧しい人は前世で悪い事をしていたから貧しいとしても、昼も夜も一所懸命に働いている人もいて、それは善行だと言える。

    では、結局貧富を分けるものは何なのか?とお金に(お金の神様や仏様ではないと本人がいう)問うのである。
    お金はこう答える。

    「私は人間のことは、金ゆえによくわからん。でも、1つ言えることはお金をどうやって使うのか?というのは、前世で良い行ったかどうかとかは関係ないという事だ。
    どんなにお金を持っていても使い方を間違えれば、水のように高いところから低いところに一気に流れ出てしまう

    お金を持っている・持っていないというのは技術の話であり、技術があるものはお金を集め、下手な人は集められない。
    時の運を得たものが倹約し、節約して良く働けば自然と家は栄えていく。そこに徳があるとか、無いとかは関係ない。別の道理なのだ」

    この文章は商人でもあった上田秋成だからこそかけた文章であるし、きっと書きたかった文章なのだと思う。

    「良いことをすればお金が溜まる」
    というのは人としての道を示す上では正しいかもしれない。実際、良い事をしてお金が溜まる世の中の方は、悪事でお金が溜まる世の中になるよりも社会的には良いからである。
    しかし、実際お金の立場からすれば、「集まる所に集まるだけ」というシンプルな話なのだ。
    そして、集まるような技術を身につけているかどうかがポイントだというのも、また事実だ。
    大金を稼いだプロ野球選手が破産をした話があるように、どんなにお金を持っても使い方を間違えると破産の方向へ突き進む。

    「時(時代)」を読んでお金を稼ぎ、それを上手く運用していったもの(貯金ももちろん含まれるし、節約も含まれる)がお金持ちになるのだという事を江戸時代に言っているのだから面白い

    昔も今も、色々な話が出てくるけれど、本質は同じなんだとしみじみと感じた

  • 話は当然に面白いんだけれど評が読んで楽しくてかわいい

  • 何回も読みたくなる本。日本のファンタジー。

  •  近世中期の文人上田秋成の代表的作品。怨霊、亡霊、魑魅魍魎が登場する怪談集である。原文(書き下し文)で読んだが、やはり現代語訳では伝えられない微妙かつ繊細なニュアンスが感じ取れてよかった。話の内容もさることながら、その文体自体が作品の本質的な価値を発露を可能にせしめる機関装置であることを再三確認することとなった。話の残酷さ、恨みつらみ、その因果がもたらす結果の恐ろしさがひしひしと感じられる一方で、艶麗な表現技法に息を飲まずにはいられない、美しさがそこにはある。

     では私も著者にならって、締めることにしよう。
    雨霽れ月朦朧の夜、窓下に編成して、以て是を書き示す。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18357

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA32896906

  • 中国や日本の古典から題材を得た江戸時代の短編小説集。「雨月」に「物語」ときて、てっきりハーレクイン的な(あるいは『源氏物語』的な)ロマンスものだと思っていたけれど、本当は怪奇的で幻夢的な「雨」であり「月」だった。流麗な文章なので、原文でも十分に美しくダイナミックな情景が浮かび上がってくる。

  • 上田秋成(1734―1809)の短篇集



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    【要約】


    【ノート】

  •  江戸時代に描かれた古典ファンタジー小説。裏表紙などにファンタジーと書かれていたが、妖精や異世界探索のようなファンタジーではなく、やはり怪奇小説のジャンルではないだろうか。作者が描きだした幻想的な世界観は、よくこの時代にかけたものだ、と思ってしまった。

     物語の構成は、短編集ではあるが、一つの物語が次の物語に何かしらの形でつながっているというもの。なかなか訳文だけでは理解できなかったが、解説や注釈などがとても細かく描かれており、より深く理解できた。ただ、解説書にあるように参考文献を乗っけるだけの解説や引用文を引っ張ってくるだけの記述も時々あり、そういうところは残念であった。

     ところどころで出てくる挿絵も、物語の不思議さが一層際立たせるのに役立っていると思った。

  • 京都女子大学図書館での請求番号は、「081/C442/Ko-10-1」です。

    ★2013年度8月テーマ「暑さも吹っ飛ぶ…?“怪談”特集」★

    言わずと知れた古典の名作。
    今読んでも十分ぞっとします。
    怖いだけではなく、美しい物語であるのがポイントです。

  • 雨月物語それ自体の面白さは言うまでもないし、文のまとまりごとに挿入される編者の【評】が読んでいて楽しい。
    著者である秋成の遍歴や当時のものの見方等、解説として基本的なものは勿論、中には学界における論争や評者の一言感想(「そんなんいちいち評にして付けんでもええわ!」というものも多いw)なんかも丁寧に記してあり、古典でありながらも親しみやすい一冊だと感じた。

  • 言葉のリズムがいい。物語の成り立ちはこのあたりから。

  • 高田さん(と稲田さん)だから安心して参考にできる。
    とか思ってたら不意にへんなこと書いてたりしてびっくりする。豊雄は、宝剣を贈られて夢の中に入り込んでしまうが、それは真女子が作り出した第二の現実ってどういうこっちゃ。笑 そういうのだいすきなんですけど!
    「白峯」の舞台も、現実の白峯じゃなくて霧の向こうの虚構白峯なんやって書いててわくわくしてしまった。

    高田さんの文章は、いつも抜群に読みやすくて面白いです。いつもいつもこの本にはお世話になってます。
    講談社学術文庫の青木さんのぶっとんだ注釈と読み比べると更に面白いです。一緒に読むと、違うこと書いてるよーで青木さんのも納得してしまったりします。

  • ねっとりとした、物凄く日本的な物語。ぐいぐい引き込まれてしまう面白さ。間違いなく日本文学を代表する作品。うん、怖い。

  • 雨月物語っつーと、「白峯」が有名どころですが、個人的には「菊花の契り」が好きです(腐女子だけに)。
    そんで、「青頭巾」もツボです。

    何にせよ、人間とゆー生き物は、生きてても死んでも業が深いんだのうとシミジミさせられる古典。
    日本語がウツくしい、と個人的に思ってる本。

  • 新宮などを舞台とした作品です。

  • やっぱり時代背景に詳しくないと楽しめないのだろうか

  • 原文、訳文、注、解題に、上田秋成自身や話の詳細な解説、さらに参考文献まできっちり載っている!
    雨月物語を勉強したい人におすすめです。

  • 大会課題作。何を血迷ったか古文に挑戦。大失敗。しかも雨月…ばかですね。唯一授業以外で読んだ古文です。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。1734(享保19)年~1809(文化6)年。江戸後期の読本作者。歌人、茶人、俳人、国学者でもある。『雨月物語』は5巻9篇で構成され、1776(安永5)年に出版された。

「2017年 『雨月物語 悲しくて、おそろしいお話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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