ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480084095

作品紹介・あらすじ

初期楔形文字で記されたシュメールの断片的な神話に登場する実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。分身エンキドゥとの友情、杉の森の怪物フンババ退治、永遠の生命をめぐる冒険、大洪水などのエピソードを含み持ち、他の神話との関係も論じられている最後の世界文学。本叙事詩はシュメールの断片的な物語をアッカド語で編集しアッシリア語で記されたニネベ語版のうち現存する2000行により知られている。文庫化に伴い「イシュタルの冥界下り」等を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 宮崎駿監督の『もののけ姫』など、ありとあらゆる伝説、物語のルーツとなった作品「ギルガメシュ叙事詩」。その日本語訳である。

    シュメールに起源をもつこの物語は楔形文字で書かれており、古代オリエントに広く流布された。伝播の過程で様々な言語に編纂され、新たなパートも取り込まれており、完本は現存しない。本書も所々抜け落ちた状態である。おそらく全体の半分ほどしか伝わっていないのではないかとされる。
    しかし訳者の矢島氏は、それらいくつかのバージョンをパッチワークのように組み合わせ、英雄王ギルガメシュとその友エンキドゥの物語を、筋が通るように訳出した。
    あくまで一般向けとの配慮から、1965年の刊行ながら、その訳文はわかりやすく、ゴテゴテした修辞は排されている。とても面白い。文庫化に伴い、イシュタル(イナンナ)の冥界下りも収載された。
    興味深いのは、ギルガメシュもエンキドゥも頻繁に夢見をすることだ。当時のメソポタミア、オリエントではそのような占いが存在したということか。

    師匠から矢島氏の話はたびたび聞いていた。本文以外の氏のコラムも、非常に示唆に富み、興奮を覚える。実在したというギルガメシュ。その4000年前の姿に想いを馳せる。

  • 初版刊行当時には「万人が買いそうにもない本」とまで言われた世界最古の物語の翻訳であり、著者自身も在庫の減りが少ないことに残念な気持ちを吐露されていますが、現在ではアニメやゲームの影響もあり(現に私もそのクチでありますが)、むしろ若い世代がこの物語に惹きつけられているのではないでしょうか。

    今から何千年も昔に楔形文字で石板に刻まれた物語を日本語で読めるというのは多くの研究者や著者による途方もない労力の末であり、古代オリエントの人々が綴った物語が私の手元にあるというのは感動さえ覚えます。

    残念ながら著者は故人でありますが、いま多くの方々が購読されてこういったサイトでレビュー等が書かれている現状をきっと天国で微笑んで眺めていることでしょう。

  • オリエント学者 矢島文夫氏によるギルガメシュ叙事詩の邦訳。文庫版にはイシュタルの冥界下りも併録されてます。古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュを巡る物語で、人間の知られている歴史の中で最も古い作品です。オリジナルに欠落が多く、あらすじを理解した上で読む必要がありますが、物語として成立するように様々なテキストで補完して、邦訳が編集されているので、ギルガメッシュやエンキドゥなど登場人物が魅力的に描かれているのは分かります。解説なども豊富で非常に面白かったです。最近でFGOなどで知っている人も多いのでは?

  • 楔形文字で残された太古の物語を現代の日本語に変換してくれているなんともありがたい書物である。過去に様々な言語に訳され残されているものからまとめ、破損している部分も多々ある原文を補っている。古代バビロニア語、アッシリア語、シュメール語、フーリ語、ヒッタイト語、アッカド語といった言語で語り継がれた物語だ。
    文中にも鉤括弧のみのところもいくつかあり、破損された部分で翻訳ができない箇所が存在する。それでも、物語として追えるので心配しなくても良い。旧約聖書にある洪水(ノアの方舟)と似た場面も登場する。神様と人間が共存する世界での英雄ギルガメッシュの物語。一般教養として一読できた。

  • ウルクのギルガメッシュ王は英雄で暴君。女神アルルは対抗するために粘土でエンキドゥを作りますがライバルになるはずが親友になってしまい冒険の旅に出て森に住む怪物フンババを倒したりします。約4000年前に楔型粘土版で書かれ今のラップ風に人々に伝承されたよう。人類は物語で発展した説も納得です。

  • 翻訳のもととなった書板に欠損部分が多く、翻訳でも空所が随所に見られたが、物語の大筋をつかむのを妨げるものではなかった。物語自体はそれほど難しいものでもないので、誰でも読めるものでしょう。

    イシュタルの冥界下りも面白かった。

  • 十年かけて訳した矢島先生の凄さ。万年筆を使っていたけどボールペンが世に出て、使うようにしたら便利だったとか、なぜか感動して泣きそうになった。

  • 最古の世界文学と名高いシュメールの実在の王ギルガメシュの波乱万丈の物語。ギルガメシュは永遠の生を求めて探求してゆく。しかし、第10の書版のくだりに答えが出ている。
    「ギルガメシュよ、あなたはどこまでさまよ行くのです
     あなたの求める生命は見つかることがないでしょう
     神々が人間を創られたとき
     人間には死を割りふられたのです
     生命は自分たちの手のうちに留めおいて
     ギルガメシュよ、あなたはあなたの腹を満たしなさい
     昼も夜もあなたは楽しむがよい
     日ごとに饗宴を開きなさい
     あなたの衣服をきれいになさい
     あなたの頭を洗い、水を浴びなさい
     あなたの手につかまる子供たちをかわいがり
     あなたの胸に抱かれた妻を喜ばせなさい
     それが〔人間の〕なすべきことだからです」

  • 『ギルガメシュ叙事詩』は、古代メソポタミアの文学作品。実在していた可能性のある古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュを巡る物語。人間の知られている歴史の中で、最も古い作品の一つ。 ウィキペディア
    執筆年: 紀元前2100年

  • 本日本屋に行きましたら、平積みでFGOの帯が掛かって売られておりました!
    ゼロ放映時に購入した際はネット注文したな-と懐かしく。
    今時の小説のような気の効いた台詞などはありませんが、思っていたよりも人間味ある物語が印象的でした。

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著者プロフィール

1928-2006年。東京生まれ。東京外国語大学フランス科卒、学習院大学文政学部哲学科卒。アジア・アフリカ図書館館長。著書に『文字学の楽しみ』『解読---古代文字』など多数。訳書に『文字』『シャンポリオン伝(上下)』、監訳書に『文字の世界史』『王家の谷』『ピラミッド』など多数。

「2015年 『古代エジプト文字ヒエログリフ入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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