わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫 ロ 3-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085436

感想・レビュー・書評

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  • 言語学習の楽しさと難しさを改めて実感している今日このごろ。
    そんな私に25年間で16ヵ国語を習得した著者の言葉は大きな励ましになりました。

    著者の好奇心と教養があふれだす文章を読んでいると、とてもポジティブな気持ちになります。
    思うように学習が進まないこともあるけど、著者の失敗談や数々の経験が背中を押してくれます。
    言語学習を建物に例えるのがわかりやすい!
    どこか一部分でもいい加減に建てると崩れてしまうから、堅実に土台をつくろう。
    だんだん自分の中に建物ができていく様子をイメージすると楽しくなってきます。

    翻訳は米原万里さん。
    本書は文庫化されるまでに約20年あいだがあったのですね!
    訳者あとがきは単行本版と文庫版が収録されていますが、この20年で米原さんの文章がより冴え渡っていることも味わえちゃいました。

  • おぉぉ!!これ文庫本だったんですね。嬉しい。一年ぶりの帰国に先立ちここぞとばかりに奮発して五十冊ほどまとめて注文買したので、判型をすっかり忘れていました。続々と配達される本の山に呆れる両親。そして彼らを前にまたまた奇声を発する私。えぇぇ!訳、米原万里〜〜?!!米原さんの著書で紹介されてはいたけど、訳したとは書いていなかったぞ!滞在中は図書館の大型本にかかりっきりだったので、帰りの飛行機にて慌てて読了。

    「英語通訳には面白くない人が多い。考え方もユーモアのセンスさえも常識の範囲を逸せず、ただただクソまじめで超勉強してそうな優等生タイプ」これは米原さん田丸さんの著書両方に、彼女たち自身の印象として、もしくは通訳派遣会社の方のコメントとして記されています。あこがれの大先輩に罵られたショック。それが英語能力くらいで口に糊しようなんて甘いと考え、留学そうそう子どもの頃からの夢だった通訳の道に見切りをつけてしまったことへの後悔と相まって、では第三外国語を!なんて不純な情熱がフツフツと腹の中で煮えたぎってまいります。

    本書は、五ヵ国語で同時通訳、十カ国語で通訳、十六ヵ国語で翻訳をこなしたロンブー・カトーの外国語学習法をまとめたもの。彼女はこの方法で、九十才を過ぎても新しい言語に挑戦し続けました。彼女はハンガリー人、大学の専攻は物理化学。決して、父ポルトガル人、母ハンガリー人、スペインで育ち、フランスに留学、仕事でイギリスに住み、そこで出会った夫はイタリア人、家族がふえた今はドイツで... というような幸運なマルチ・リンガルではありません。卒業後の仕事が見つからず、需要のあった英語教師になろうと、英語の勉強にとりかかったのだそうです。

    彼女は自身をそして本書を手に取るであろう多くの読者を「平均的学習者」と呼びます。つまり新しい言語を自動的に摂取してしまう年齢をとうにすぎた成人であること。またありあまるほどの時間はなく... とは言っても自由時間がほとんどないということもない人のことです。彼女の紹介する外国語学習法はそんな「平均的学習者」向けであり、なによりも大人が外国語を身につけるのには、子どもの頃に母国語を習得した要領ではだめだという考えに基づいてまとめられています。

    「ロンブー・カトー式外国語学習法」
    ※以下の例に使われているアジール語は、外国語学習へのアプローチの仕方が一貫して同じであることを強調するための架空の言語です。

    1. アジール・母国語辞典を購入
    まず全世界共通の固有名詞や学術用語を探して読み方のルールを解読。ピラミッド、インターネット、ドストエフスキー、クレオパトラ、ツナミなど。

    2. アジール語問題集と文芸書
    問題集で基本的な文法を学んだら読書にとりかかる。一周目はわかった単語や活用だけに注目しながら。二周目以降は推察できたものや、重要そうな単語を書き出しながら。単語を文脈から切り離して孤立させないこと。

    3. 当日のアジール語ニュースと母国語ニュースを聞き比べ
    固有名詞を頼りに内容を推測。気になる単語を書き出し、辞書で調べる。アナウンサーの正しい発音とイントネーションを観察。

    4. アジール語が母国語の先生 (できれば女性) を探す
    ゆっくり何度も話してもらったり、宿題や慣用表現を直してもらったり。

    5. 気に入った本を母国語に翻訳
    歴史、地理、経済、文化などおカタイ科目にこだわらず、興味のあるテーマを選ぶこと。料理でもサッカーでもファッションでも!

    6. アジール国を辞書を片手に旅行する 
    絶対条件ではないが、映画館やアジール語での観光案内、興味あるテーマの講演会など、できる限り参加する。現地アジール人との行き当たりばったりな当たり障りのないの会話は言語習得の鍵ではない。

    ●外国語は四方八方から同時に襲撃すべき砦である。文法書にかじりついていてはいけない。新聞を読み、ラジオを聴き、文学作品を読み、字幕なしの映画を見て、大学の講義に参加し、教科書を学習し、その言語を母国語とする人たちと会話して、ありとあらゆる手段で陥とすべし。

    ●外国語の習得は関心の度合いと、この関心の対象を実現するために費やされたエネルギーの量にかかっている。「(費やした時間 + 意欲) / 羞恥心」
    才能とはあくまで、語彙暗記力、音を模倣する能力、文法を解読する論理的思考力のこと。外国語学習に費やされた時間は、それが日単位、週単位で一定の密度に達しない限り無駄になる。週平均で十〜十二時間。

    もとはといえば私は「星の王子様」を読みたくてフランス語を「ムーミン」を読みたくてスオミー語を、「モモ」はドイツ語で「ドン・キホーテ」はスペイン語で!などと夢想していて外国語に興味を持ちました。アラビア語で「アラビアン・ナイト」が読めたらロマンチックです。結局実現したのは「ハリーポッター」を英語で読むことだけなのですが、それでも読書中心の言語学習が紹介されていて嬉しかった。空想小説や児童文学好きには、勉強の格好な言い訳になります。

    外国語学習をもっと楽しいものにしたい。それをたくさんの学習者と分かち合いたい。という彼女の情熱が伺える一冊です。

  • 外国語習得へ、「一歩踏み出したい!」「辛くなってきた...」という方!特におすすめです!!
    すべてが書いてありますよ
    かくいうわたくしもフランス語、停滞中です。。

    また、「教養を身につけたい!」「『教養の書』読んだけど次どうしよう。」そういう方にもおすすめです。

     著者は多か国語を操り、90年以上存命し続けている方です。そのため、見聞の広さは、私たちよりも広いといえるでしょう。
     具体的には、言語というテーマから、論点を示しいるため、広々とした座標系を提供してくれます。
     また、ユーモアにエッヂが効いていて、所々吹き出し、笑えました!

    堅苦しい実用書(?)ではないです!このレビューを見つけた幸運な方は是非読んでみてほしい!





  • 優しい文章でわかりやすく、かつ言語それぞれが持つ魅力や特徴を丁寧に教えてくれる素敵な本だった。大丈夫、あなたもきっと外国語は習得できますと何度も言ってくれるのだけどこの人の営みがどんな石のごとき根気に支えられたものかと思うといやいやいや…とはなる すごい人

    でも声高に「読書をしましょう!」と声をかけてくれるのはなんだか勇気付けられた。良い文学に出会えるということはそれだけで知識欲、好奇心をいつまでも掻き立てられる。これまで外国語教育方法がどんな変遷をたどってきたのか、果ては同時通訳とはどんなお仕事なのかも細かく書かれてて勉強になった

    なんか読み進めるうちにカトーさんが「大丈夫!できる!」と何回も言ってくれるからもしかしていけるんでは…?とか思ってしまうんだけど以下略 でも語学以外であっても何か一つ極めたい!と思っている人には勧めてあげたい本だなあと思った

  • 母国ハンガリーにいながら16ヶ国語(日本語も含む)を習得した通訳者による外国語を学ぶ際の心得と、笑えて心励まされる体験記。


    一読して連想したのは、この本の翻訳者である米原万里の『貞淑な醜女か不実な美女か』だった。訳者あとがきによると、若き米原さんは本書を訳したのがきっかけで通訳を職業にすることにしたのだという。ユーモアのセンスなど本当によく似ているから、深く共感して入れ込んだのがわかる。
    実践的な学習法として「本を読むこと」を挙げているのがこの本の特色。学習目標として「本を読めるようになろう」と掲げることはあっても、最初にまず本を、というのは少し珍しいと思う。カトーさんは、語彙は文脈のなかで覚えていくべきだし、文法は自力で発見していくことで身につくから本を読むのが一番だと言う。
    カトーさんがこうした独学法を編みだしたのは1930年代の就職難のせいだった。独学で英語教師となり(!)、終戦後は連合国軍統制委員会の事務局という他言語を学ぶにうってつけの仕事に就き、のちに通訳者となった。だが「外国語こそが、下手に身につけても無駄に終わらない唯一のもの」という信念を読むだに、仕事を求める以上に新しい文化をその国の言葉で楽しむことが大好きだったのだろう。
    終わりのほうでは通訳という仕事、特に同時通訳の楽しさと過酷さに触れるが、米原さんが魅力を感じた気持ちがわかるくらい、ここで披露される経験談が面白い。仕事中は重量挙げの選手がバーベルを持ち上げる瞬間を超える脈拍数にもなるという同時通訳を楽しめるバイタリティには圧倒されるが、それをユーモア交じりにカラッと語る彼女のスタンスに、たしかに憧れる。

  •  著者は、露・英・仏・独・ハンガリーの各語はいつでも通訳可能、その他、伊・西・日・中・ポーランドは半日あれば通訳できる準備ができる、そしてその他ブルガリア語・ヘブライ語・ラテン語・スロバキア語・ウクライナ語等、計16ヶ国語ができる女性の方である。しかも全て独学(!)で身につけたという、その筋では非常に有名な方であるらしいが、僕はこの年になるまで知らなかった。

     また著者は「私のような平均的学習者」を対象にこの本を書いたと言っている。平均的学習者とは、仕事も家事も行っている、そして自由時間が3~4時間程度だと。その自由時間のうち「1日のうち(語学学習に)1時間半(程度)も犠牲にすることのできない状態の人」は想定していないと言う。換言すると「週に起きて過ごす100~200時間のうち、10~12時間を学習に必要な最小集中密度」だと言う。

     世の中に「聞き流すだけでバッチリ」とか怪しげな語学学習法を華々しく宣伝しているが、そういうものが偽物であることがよく解る。著者は「毎日コツコツとやる大切さ」を訴えているように思う。
     ではコツコツとやれば彼女ように10か国語以上マスターできるかというと、僕はそうでないと思う。著者は自分のことを「(語学の才能に関しては)普通の人間だ」と至るところで言っているが、個人的には語学は努力+アルファの才能が必要だと感じている。努力すればみんなソコソコまでできるんだけど、そこから先は…という印象を受けます。

     この本で語学習得の秘訣はとにかく「読書」をすることに尽きると言う。夏目漱石もとにかく大量の英書を読んで英語を身につけたと言っているのに符号する。だから、単語の暗記とかは必要なく文章の中でドンドン覚えていくものだというスタンスである。この点も些か疑問に思う。洋書を読んでいてストレスが溜まるとしたら、単語(あるいは熟語)がわからない時だと思う。少なくとも1行に2個以上あると、途端に読むスピードが遅くなる。上級者はドンドン読書することで、語学の才能が伸びるとは思う。しかし、初心者はむしろ基礎的な単語の暗記が必要ではないかと思う。この点千野栄一が『外国語上達法』で述べているように、とにかく基礎的な1000単語は力づくで覚えた方が良いという主張に賛成する(さらに言うと、千野がいう「語学は身銭を切らないと覚えない」という主張にも大いに共感できる)。

     この本の欠点はとにかく訳が読みづらいこと。訳者はロシア語通訳で有名な方らしい(僕は寡聞にして、この片をあまり存じあげない)が、翻訳者としてはちょっといただけないレベルだと思う。新たに訳者を変えて、外国語学習者に幅広く読んでもらいたい内容の本だと思う。

    以下、この本で印象に残った文言を備忘録的に記しておきたい。
    ・私の一番好きな外国語はロシア語です。その優れた形象性に、私は第一人者の王冠を与えるでしょう。
    ・ロシア語は…母音も子音もともに幅広い音階を有しています。この言語を見事に駆使出来る者にかかると、悲しくも、甘くも、勇壮にも、やさしくも響くことが出来るのです。
    ・(英語って簡単ですよね?との質問に)そう最初の10年間はね。でもそのあとは耐えがたいほど難しくなってくるわ。(英語は原理・原則から外れた部分があまりにも多いため)
    ・外国語は毎日学習すること。最低10分はやること。
    ・消費された時間+関心度(意欲)=結果(←これを分子として、分母に「羞恥心」が来る)。男性の平均的学習者は羞恥心が強すぎて、女性に比べ喋るという能力を身に着けるのが遅くなる(文法的に間違えたらどうしようとか、男性はよく思いますよね)。女性のほうがコミュニケーションへの欲求が強い(だから語学習得に向いている)。

     そして、外国語学習者が常に覚えておき、この言葉によって励まされるであろう。僕はこの言葉を知ることが出来て良かったし、実際励みになったし、学べるところまでで良いやって開き直ることができました。

    ・わたしたちが外国語を学習するのは、外国語こそが、たとえ下手に身につけても決して無駄に終わらぬ唯一のものだからです。

  • 割と飛ばし読みだったがまあまあ面白かった。古いからか表現が遠回しな感じでわかりにくいところが多かった。

    以下印象に残った点
    ・外国語学習にはある程度の密度が必要。具体的には最低限週10〜12時間→1日1時間でも足りない!
    ・読書おすすめ。興味のある本を読もう。最初は精読しすぎて挫折せぬよう辞書に頼らず読み進む。
    ・単語帳を自分の手で作ることをお勧めする。なんらかの行為と結びついているし、個性が出るから。
    ・辞書を一時たりとも手放すな、そして常に手放せるようで無くてはダメ。

  • 2022.07.29 #2022-020

  • 外国語習得には近道や魔法はないということが書かれている。

    母国語はハンガリー(洪)語、露英仏独洪はどの組み合わせでも自由に通訳作業ができる、イタリア語、スペイン語、日本語、中国語、ポーランド語は半日準備が必要、残る6か国語は翻訳できる、という著者の学習法が書かれている。

    著者は特に語学の才能はなく、関心の度合い、関心の対象を実現するために費やされたエネルギー量にかかっていると断言。

    「勤勉に、週二~三回、あるいはそれ以上の周期を守って外国語を学習し続けることによって、四~五年後には、自分の要求水準を満たすほどまでに到達することは可能です。」(P43)

    著者の言うところの語学力は
    1、高等発言の理解力
    2、文章の理解力
    3、口頭発言能力
    4、文章力
    である。

    著者が勧めるのは

    読書…好きな本を読む、あらすじ→念入りにの順番で読む、

    発音…架空の語(nonsense syllables)で訓練する、ラジオなどを聞き入り、単語や文章の旋律を何度も聞く、単語は単独ではなく反語のペアや動詞と名詞の組み合わせなどで覚える、

    単語…すでに知っている表現や概念と連結させる、個性を発揮した単語帳を作る

    自分と独国の人による教科書を用いる、辞書と参考書を用意する、外国語で独り言を言う

    すでにやったことがある勉強法が多く、それでも私の英語が抜けていくのは日々の鍛錬が足りないからでしょう…。

  • 25年で16か国語マスター。
    しかもそれをハンガリー語という、言語の孤島から生まれた母語を基盤にやってのけた人の本。啓発とか学習本というよりもlinguistによる言語学。米原万里が翻訳してるからホンモノ中のホンモノで、やっぱ面白い。

    外国語を習得するためには、快適な読書、ソルフェージュ的音感による語のメロディ化、羞恥心撤廃、語彙習得に狭窄的にならないこと、反復と継続が肝になるって。むずいけどこれらがキーになる理由が論理的に書かれていて面白い。
    ロシア語で男の子мальчик 、女の子девочкаを訳すとき、直接補語になるとмальчика,でも女の子の方はдевочкуと語尾が変わる(わかりにくい語尾変化)。その変化がなぜ起きてるかわからないまま、ただ慣用に過ぎないと言ってしまう。というエピソードがあったが、これはまさに私通った道。
    著者の「言語の荘厳なる大寺院は文法なしでは築けない。かといって文法目的主義ではなく、法則として自覚されるべきだ。また法則は原則であり、あくまで土台としてなくてはならないもの」が身に染みた。

    あと本書の、とある外国人が日本語「ありがとう」を「alligator」に結びつけて覚えていたため、とっさに「crocodile」と言ってしまったというエピソードもかなりよくわかる。私自身この種の間違いが多いから。

    私のバイト先の店長は日本にルーツを持つ人じゃなくて絶賛日本語学習中なのだけど、彼と会話していると、よくわからない日本語をペラペラ喋ってることがある。そういう時は大体、上記のような変に結びつけをやってるのよね。でも母国語話者であるわたしは、彼がどう結んできたんだって解読するのが面白かったり。外国語学習というのは面白いね。同じことをあっち側からやられてるんだし。


    これが書かれたのは結構前。もしケータイの絵文字機能やラインのスタンプが使える時代でも同じことが言えるのだろうか。ちょっと気になるところ。

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