東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)

  • 211人登録
  • 3.64評価
    • (11)
    • (14)
    • (21)
    • (4)
    • (0)
  • 24レビュー
著者 : 紀田順一郎
  • 筑摩書房 (2000年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480085450

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 明治~昭和の大戦中までの、東京周辺の貧困層の生活と、娼婦や女工の経済的および社会的な立場というものを、過去の文献から解説する論文。

    東京墨田区あたりの長屋もしくは木賃宿に住む労働者は、風呂にも入れない劣悪な生活をしていたことを、新聞社の記者が変装してレポートする。また、私娼や紡績工場の経営者はヤクザまがいの立ち回りをして、女性たちを逃げられない様がんじがらめにした挙句、ボロ雑巾のように利益を吸い上げていく。

    新潮45という、悪趣味な雑誌に載せていたレポート記事だけあり、残飯をすするような嫌悪感を抱かざるをえない表現がたくさん出てくる。しかし、単なる一次的なインタビューや、過去の論文の丸写しだけでないのは、なかなか読み応えがある。

    特に、後半の描き下ろしと思われる子売り子殺し、娼婦、女工の項については、引用が多すぎるきらいがあったが、一読の価値がある。

    ネットが発達し、法律も整備された現在ではそんなことはなかろうと思いたい反面、いまだに風俗と名を変えた商売が成り立っているわけで、裏社会ではこういうものが残っているのではないかということは、想像に難くない。

    一方で、近年NHKなどで繰返しドラマ化などされる、戦前の下町の、のどかで人情味と生活感のある明るい生活の嘘くささを感じざるを得ない。

  • 福祉に携わる業務に就き、その参考になればと読み始めた。大きく3部構成になっており、最初は貧民街・スラムについて。次いで娼妓をはじめ身を売らねばならない女性たち。最後に明治から大正期にかけて過酷な労働・生活に晒された女工たちの真実が語られた。特に、女工たちの受けた仕打ちは、ナチスの強制収容所を彷彿とさせ、雇い主の非人道的な処遇に身も凍る思いだった。

  • 2012.12.22 読了

    2012年全読了数 1万9068ページ

  • もともと、神保町の救世軍に関する新聞記事を目にして、この本を手にしたのですが、内容、慄然とすべきものでした。貧困がもたらす人間というもののありようが淡々とした筆致の中に余すところなく描き出されていると感じました。特に吉原の娼婦たちや女工の悲惨さは読むに耐えぬ。

  • 戦前の東京はスラムが其処彼処にある場所だとは知らなかった。
    現代の日本の豊かさを実感した。

    解説にある貧困とは差別の問題であり想像力の欠如であるという言葉は妙に納得するところがあった。

  • 明治から昭和初期にかけての東京の貧民・貧困を概観する。横山源之助「日本の下層社会」や森光子「光明に芽ぐむ日」など、当時の実態を克明に記した一級の資料を参照し、貧民たちがどのような環境に置かれていたのか、行政や資本家、社会運動家は彼らにどのような対応をしてきたのかを明らかにする。
    そうして見えてくるのは、当時の貧困の、現代のそれとは比較にならないほどの過酷さ。極めて過酷な労働、飢え、病。衣食住のすべてが満たされないことが常態化した生活。
    こうした人々が、東京には少なくない数存在していた。有名な三大貧民窟だけでそれぞれ数千人の貧民が住み、それ以外大小合わせて100以上もの貧民窟があった。
    さらに、行政や社会の貧民・貧困に対する意識もまた、貧民を貧民のまま置くことを選んだ。彼らにとって貧民とは、救うべき対象ではなく怠惰により身を持ち崩した自業自得の人々でしかなかった。そうした無関心・無理解が貧民に対する放置を持続させた。
    こういう貧困者への無関心・無理解が現代日本にも繋がっているかと思うと興味深い。生活保護叩きは記憶に新しいし、貧困者への行政援助に対する許容度が先進国では有意に低いことも有名な話。実感値でも統計値でも、貧困者に厳しいのが日本人の実状なんだろう。そういう心性は、100年前から変わらないということだろうか。

  • 図書館。
    明治から大正のいわゆる下層社会をルポした資料をいくつかのカテゴリに分けてまとめたもの。

  • 貧困にあえいでいるのは、努力しなかったからだ――

    そんな言いように腹が立ってしかたがなかったのに、それにどう反論すればよいのか、わからなかった。
    また、私自身も心のどこかで、もう少し一生懸命働けば苦労しなかったんじゃないの、と思っていた節があったのだとおもう。

    そもそも、貧困とは何なのか。なぜその暗い穴に陥ってしまうのか。
    本書を読んで、ようやくその答えが見えてきた。

    まずもって貧困とは当人の如何なる性質に寄るものではなく、ひとえに外因性、それは景気とよばれたり、資本主義だったり、病気だったり、ほんの小さな不幸の積み重ねだったり、また、無知によるものだったりする。

    誰だって貧乏暮らしはいやだ。人としての尊厳もなく、残飯を拾って日銭を得て、垢まみれの着物一枚で年中過ごし、やれ虱だ流行病だと身体が休まる暇もなければ場所もない。

    真実はさらに悲劇で、人を人と思わぬ鬼畜が何も知らない女工たちを、娼妓たちを現在では考えられないほどの凄惨さでもって痛めつける。死に追いやる。

    それがほんの百年のあいだに日本で起こっていたこと。
    長らくのあいだ、「彼・彼女らのせい」として放置されてきたこと。

    なぜ彼の人々が下層社会で喘いでいるのか、”想像力”に欠け、”人間性”が欠如しているあいだは到底わからない。


    いま、新富裕層という言葉が生まれている。そう呼ばれる人々のなかには、汗水垂らして働くでもなく、バーチャルな数字でもって富を手にして、貧困に陥った人々をあざ笑っている人もいる。

    でも、少し想像してみれば、いまの社会構造ではほんの僅かな食い違いで、誰しもが一挙に転落してしまうようになっている。

    社会の仕組みの犠牲になっている人がいて、そのうえで自分のいまの生活が存在していることを、もっと疑問に思わなければいけない。
    いつ如何なる時も、”人間性”を失ってはならない。

    そう考えさせられた一冊だった。

  • スラムの生活については、まぁそんなに驚くことはなかったけど、女工や花街の生活の悲惨さは、中々現代のイメージからは想像に難いだろうな。

    教科書では、工場制手工業はポジティブな意味合いで表現されていたと思うが、そこに江戸時代までの家長制度が持ち込まれ、それこそ悲惨な状況に陥っていたとは知らなかった。

    明治から昭和初期の下層民の生活について知るにはいい本。また読み返したい。

  • 東京オリンピックの頃までは「乞食」とか「偽傷痍軍人」とかを普通に見かけた。当該書では戦前まで存在していた「貧民窟」までを主に取り扱っていた。そこが今イチ食い足りない。
    あのmarginalの存在が消えたとは思われない。

全24件中 1 - 10件を表示

紀田順一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
安部 公房
三島 由紀夫
ドストエフスキー
フランツ・カフカ
J.L. ボルヘ...
J・モーティマー...
安部 公房
有効な右矢印 無効な右矢印

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)を本棚に「読みたい」で登録しているひと

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)のKindle版

東京の下層社会 (ちくま学芸文庫)の単行本

ツイートする