日本語大博物館: 悪魔の文字と闘った人々 (ちくま学芸文庫 キ 9-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480086617

作品紹介・あらすじ

明治の幕開けは、欧米の言葉にくらべて複雑で難解な日本語を、簡潔な言語・文字にし、効率的に表記しようとする「近代化」への挑戦のはじまりでもあった。日本語活字誕生秘話、活字文化の大衆化を支えた人々、苦闘の末に大事典をつくりあげた諸橋轍次と大槻文彦の偉業、漢字廃止・カナ文字運動の理想と現実、ガリ版文化の開花と衰退、写植の創造に半生を傾けた男、そしてワープロの誕生…。埋もれた厖大な資料を掘り起こし、この100年の日本語「近代化」に注がれた全情報の軌跡を追う、渾身の日本語探求図鑑。カラー図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 日本語、その特徴の一つはカナと漢字で構成されている事。明治になって鎖国が終わり、西洋文明が流入し、ほんの少しの文字と記号だけで構成された外国語、それを高速で打てるタイプライターや活版印刷機を知った時、日本の文化を進歩させるためには日本語の言葉と文字を簡素なものに変化させる必要があるのではないかと考える人たちが多く登場した。
    漢字を廃して仮名文字だけにしようとか、ローマ字に統一しようとか、さらには全く新しい文字を創作して置き換えようとか。
    一方では5万字を超える大漢字辞典を編纂しようとする人、それらを出版するために読みやすく美しい活字を作ろうとする人たち、そして活字印刷より容易に自由に組める写植印刷、安価に大量に印刷ができる謄写版(ガリ版)印刷、そして邦文タイプライターから、ワープロへ。
    日本語と日本語の印刷に関わった日本人たちの歴史。

  • あとがきに「ハードウェアとしての日本語のむずかしさと
    格闘した人々〜の歴史である」とある。もっと簡単に言うと
    日本語の印刷の歴史、ということになろうか。私は活字を
    組んで印刷することに憧れに似た気持ちを持っているし、
    中学生の時分は謄写印刷(ガリ版)にかなりお世話になった。
    ワープロもソニーのHITBITを買ったし、写植と言えば漫画
    の吹き出しでお世話になりっぱなしだった。そういう意味
    でもこの本で取り上げられているトピックにはかなり思い
    入れがあり、漢字不要論や縦書き横書き問題なども含め
    楽しく読むことができた。しかし巻末に取り上げられた
    電話帳が過去の遺物になる時代が来るとはね。

  • 活字文化、カナ文字運動、人工文字、ガリ版、横書き日本語、タイプライター…
    「日本語の「近代化」のために様々な角度から取り組んだ人々の苦闘の跡を、ハード、ソフト両面から掘り起こ」した本。

    「博物館」らしく、明治から戦後の広告やビラ、当時の雑誌や彼らの著作物の写真が多く、わかりやすい。

    今となっては当たり前である横書き、辞典類、漢字変換機能にしろ、結局(今のところは)陽の目を見ていないカナ文字運動や、漢字廃止論、人工文字にしろ、どの分野の先駆者も初めはイロモノ扱いをされていて、それでも日本語と日本語文化を便利にするために人生をかけていたんだなと思う。それにしても、漢字かな混じり文という日本語表記の珍妙さと複雑さを改めて実感。

  • 「フランス語が世界で一番綺麗な言葉だから、日本語を廃止して
    フランス語を公用語にしよう」と言ったのは、志賀直哉だったか。

    誰が「世界で一番綺麗な言葉」って決めたんだよ。バンバンッ(←机を
    叩く音)。

    ロシア人の知人がいる。母国語のほかにいくつかの国の言葉を話す。
    日常の会話では日本語も不自由しない。だが、書くとなると大変な
    ようだ。

    本人曰く「話すのが難しいのはフィンランド語。書くのが難しいのは
    日本語」だそうだ。

    そうして言われる。「ひらがな・カタカナ・漢字、いっぱい知っているのに
    どうして文字数の少ないキリル文字(ロシア文字)が覚えられないの?」

    欧米の言葉に比べて、圧倒的に多くの文字数を擁する日本語。この
    やっかいな言葉をどうにかしようとした人たちの壮絶な闘いを追った
    のが本書だ。

    今より遥かに識字率が低かった明治時代には、「漢字があるから
    いけないんだっ!」という論が出て、漢字廃止運動まであった。

    そういえば石川啄木は「ローマ字日記」を残してるよね。かな書き
    だけにしようとか、ローマ字表記のみにしようなんて運動もあった。

    文化が進めばメディアも進む。本書では活字の誕生や、和文タイプ
    ライター。写真植字の開発の記録なんて、本当に涙ものである。

    日本語。膨大な文字数を擁するやっかいな言葉。でも、どんなに
    面倒でもやっぱり母国語だもの。愛おしいのさっ。

    尚、本書はカラー図版も豊富で資料として保存するのに最適。

  • 内容は面白いのに、レイアウトが読みづらいのが残念。

  • これは、面白い。

    今の私たちは日本語が横書きだったり、左から右に書いたり、漢字を書き順すら忘れているのにパソコンで素早く打てることを当たり前のように考えていますが、この今の状況に至るまでには日本語を巡っての紆余曲折があったんだということを本書で初めて知りました。

    まさか漢字をなくそうなんて動きがあったとは。
    まさか新しい文字を開発しようという動きがあったとは。
    まさかエトセトラエトセトラ...
    実に興味深い内容でした。

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著者プロフィール

評論家・作家。書誌学、メディア論を専門とし、評論活動を行うほか、創作も手がける。
主な著書に『紀田順一郎著作集』全八巻(三一書房)、『日記の虚実』(筑摩書房)、『古本屋探偵の事件簿』(創元推理文庫)、『蔵書一代』(松籟社)など。荒俣宏と雑誌「幻想と怪奇」(三崎書房/歳月社)を創刊、のち叢書「世界幻想文学大系」(国書刊行会)を共同編纂した。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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