ヒステリー研究 上 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480088321

作品紹介・あらすじ

フロイトはいまだ歴史に属してはおらず、精神分析の知は汲み尽くされてはいない。一知半解の愚を避けるには、精緻な再読・三読にしくはない。正確平明な新しい日本語版が必要だ。フロイト新訳プロジェクトは本書をもって始まる。精神分析の誕生を告げるこの記念碑的著作は、ブロイアーとフロイトの理論や治療技法上の差異のみならず、両者の複雑な人間関係をも反映して興味深い。さらに、古典的症例(アンナ・O、エミー・フォン・N、ルーシー・R、カタリーナ、エリーザベト・フォン・R)の報告は、女性たちの驚くべき受難史を詳細に語って、文学的香気さえ漂わせる。本巻には序文、第1章、第2章を収録。全2巻。

感想・レビュー・書評

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  •  フロイトが精神分析の概念を形成する前に書かれた症例記録とその分析。ここでは、コンプレックスもリビドーも使われないが、それゆえ、生の臨床現場で、フロイトが病と取り組みながら苦悩する中で、精神分析が生まれてきたのだということが感じられる。症例に対して、その考察が直接的かつ具体的に語られるので、フロイトの入門としても取っ付きやすいのではないだろうか。
     フロイトが初期の研究領域として、今日ではその範疇自体消失してしまった典型的な文化結合症候群であるヒステリーを選んだことは、彼の理論で家族や性の占める比重が大きかったことに、確かに強い影響を与えてるように思える。しかし、それゆえにこそ、フロイトが簡潔な力学的図式で示してみせた神経症のメカニズムが、当時の精神医学に与えた衝撃は計り知れないものがあったであろう。ヒステリーという病の枠において、フロイトは女性性どころかヒステリー素因すら取り払ってしまったのであるから。そこでは、表象に伴う情動が自我によって抑圧され、転換を受けることで追想と連想から遮断されてしまうということしかない。それは環境さえ整えば、誰にでも起こりうる。
     本書は、治療法の確立されていない精神疾患に対してあくまで治療可能なものと信じて向き合ったフロイトが、催眠療法にも見放され途方にくれた苦悩そのものである。フロイトの催眠に対する希望は、まだそこに残っているとはいえ、のちの決別を決定づけることになった。重要なのはトラウマである。我々は狂気に身を落とすか、トラウマと向き合うか、そのどちらかしかない。フロイトの示した図式は、確かに単純すぎるという誹りは免れないだろうが、当時として間違っていたとはどうしても思えない。そして、日本における「いい人」、「人徳のある人」、企業戦士は、自身が神経症であることにあまりに無頓着にすぎるのを顧みれば、まだその重要性は損なわれていないと思う。資本主義社会でこれほど恐ろしいことはないのである。

  • 2009/4/3(〜p58),11(〜p166),13(〜p186),14(〜p323終)

    ヒステリー。
    今ではPTSDと呼ばれるもの。
    読んでいてとても驚愕した。

    今の私にでている症状と全く同じだったこと。
    これが本当に驚きだった。


    読んでよかった。
    下巻も読んでみようと思う。

  •  2009.3.21-26.

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