- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480088598
感想・レビュー・書評
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非常に面白かった。
一次大戦までは発砲率が15%で、ベトナム戦争で90%まで上がり、それにはプログラミングとも言える戦闘員の訓練が関わっていたということろの理解は非常に面白い。
プログラミングとは、いわゆる条件付けで、
古典的条件付け・オペラント条件付け・社会的学習の3つ。
この条件付けに脱力感や同調圧力などが加わることで、思考停止して発砲することができるようになった。
特に本書のメッセージとしては、この社会的学習におけるポイントであり、戦時中の殺人を可能にする訓練である、訓練中から、リアルな挙動をする人形に向けて発砲する練習をすることで、本番でも可能になることや、その発砲することが正しいという洗脳などが、若い人間の日常生活の中に溶け込んでしまっているということ。
つまりテレビゲームにおけるリアルな挙動の殺しや、映画による男らしさ価値観の蔓延などにより、日常生活においても殺しが容易になっているという主張。
それを裏付けるように、アメリカにおける犯罪率は上がっているということ。
確かによく聞くのは、アメリカの若者の価値観として舐められたらやり返すなどの男らしさ価値観や、自己責任価値観が重要視されているということ。
さらにリアルな残虐表現が好まれる、また銃が身近であるということなどを考えると、特に若い思考が浅い年代ではそれに呼応し、非常に攻撃的になるということはよくわかる。
逆にそういった価値観がない例えば日本人などは、男らしくない、と捉えられ、その価値観の中ではモテない、みたいな構造もある気がする。
集団を統べる上で、価値観を提示すること、ある種の思考停止に陥らせることなどは非常に重要なのだと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦場に行ったことがない我々には想像する事しかできない「戦場の兵士の心理」を、兵士のインタビューと古今東西の戦闘記録から客観的に知る事が出来る良書。
なぜ軍隊の訓練は厳しいのか、兵士はなぜ戦場の話をしないのか、なぜ原爆は戦争を止めたと彼らは賞賛するのか。といった疑問が解ける。またブラック労働環境に従事する現代人のストレスにも当てはまる所が多い。
戦争ものやアクション映画、特に「虐殺器官」や「進撃の巨人」の対人戦闘を行うあたりの事を思い起こしながら読んだ。 創作する人には特に読んでほしい。 -
含蓄に満ちた良書。博覧強記という言葉が真っ先に頭に浮かんだ。理性的な文章にどこか生身の暖かさを感じる。
自らも一兵士であり、軍事史と心理学への造詣深い著者の知恵と知性、膨大な知識量、冴え渡る分析力、飛躍のない論理展開、それでいて文学的な薫り高い文体に圧倒される。
戦場の兵士やベトナム戦争への対処にとどまらず、社会全体はどうあるべきか、それぞれの国家はどうあるべきかという普遍的な問題への回答、そして同類殺しに原来強烈な忌避感を覚える人間の希望も描き出した力作。
この人材を生み、惜しみなく研究に必要な情報を与え、この大作を書かせたアメリカに覇権国家の凄みを感じる。
訳者あとがきにもあるように、戦後日本の癒されぬ傷にも重要な視点を与えてくれるし、メディアの表現や今なお様々な地域で続く紛争に対して思考停止することがないよう導いてくれる名作だと思う。 -
人が人を殺す事への抵抗感、またその抵抗感を減らすための技術の恐ろしさをベトナム戦争を通して書いてありました。
一時、戦争で勝ったとしても精神的な損害は大きい事が事例と共に説明されていて納得しやすかったです。 -
人が一人の人間を殺すのには、とても大変な苦痛を伴う。
元来僕らは他人を殺してはならないと教わり育つ、
しかし戦争ではその人殺しを強制され実行する。
彼らはいったいどんな練習をして、またどうやって世間に帰ってくるのであろうか?
日本では戦争というと、第2次大戦での思い出を聞くことしか
一般には戦争に向き合うことができない
たまにニュースで戦争や、PTSDの名前を聞いても、そういうことがある程度だ。
この本は大戦以後、人間が兵隊になる過程の経過を読んでいくものであり
また、一般的なPTSDを起こす人=臆病な人 などの誤解を
実際に戦争経験者から語られ、集められた体験談からそれを学ぶ本である。
戦争を語り継ぐ人が消えゆくいまだからこそ、読みたい一冊である。 -
人はなぜ人を殺すのか?という観点ではなく、なぜ人は人を殺せないのか?という視点に立って戦争における殺人を考察した一冊。
本能的に人は人を殺したがらないということは理解していたが、実際に戦争の矢面に立った軍人であってもそれは同じことだということがデータと共に解説されており、驚きを感じた。
戦争はやはり、人を人では無くしてしまう、非人道的手段であるということが実感出来る良書。 -
人は人を殺せない。
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兵士はなぜ人を殺すのか、また、なぜ殺すことを拒否するのかという点を、取材と歴史的事実、心理学から解明しようとする本。「兵士が戦場で敵を殺すのは当然」だという前提を持って戦争や軍事というものを眺めていた読者にとっては、衝撃的な内容になっていると思う。戦争によって最も危機にさらされる兵士たちは統計上の数字ではないというのはしばしば言及されるところだが、彼らが我々と同様の生きている人間であり、条件付けによって人が大きく変わることを嫌というほど実感させられる。
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読了。良い本であった。20年以上前にアメリカで出版され、日本で翻訳され、さらに文庫本なのなっていた。2013年13刷とあった。奥さんが古本市で買った本。積読状態でやっと読めた。人は人を殺せないことがわかって、明るい気持ちになる。誰も、人を殺して平気で過ごせるほど強くないことがわかった。
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えっほんと…?ってなるけど、確かめることも出来ない。もう昔の本になってるけど、戦場の兵士の心理や行動が興味深く読める。