戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480088598

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと気持ち悪くなるような生々しい記述が満載だけれど、質的研究として十分な内容だと思いました。これが日本語の初版が1998年ということでもう四半世紀前になるけれど、戦争はなくならないし人殺しもなくならないのはやはり人間の愚かさということなのでしょうか。戦争をする・人を殺すための訓練があるのなら戦争をしない・殺さないための訓練だってできるような気がいたしますが希望的すぎますでしょうか。

  • 本来、人間には、同類を殺すことには強烈な抵抗感がある。それを、兵士として、人間を殺す場としての戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのように、殺人に慣れされていくことができるのか。そのためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。

    第1部 殺人と抵抗感の存在―セックスを学ぶ童貞の世界
    第2部 殺人と戦闘の心的外傷―精神的戦闘犠牲者に見る殺人の影響
    第3部 殺人と物理的距離―遠くからは友だちに見えない
    第4部 殺人の解剖学―全要因の考察
    第5部 殺人と残虐行為―ここに栄光はない。徳もない
    第6部 殺人の反応段階―殺人をどう感じるか
    第7部 ベトナムでの殺人―アメリカは兵士たちになにをしたのか
    第8部 アメリカでの殺人―アメリカは子供たちになにをしているのか

  • タイトル通り、『科学』ではなく『心理学』。論の内容には納得できるものが多い。殺人の難易度は物理的・心理的距離、権威者の要求、集団免責の程度に応じて決定されるのだろうし、戦争が母国でどう扱われるかによって兵士のPTSDの発症率は変わるだろう。だが、本書でそれが検証されているわけではない。提供されるのは、論理的に正しく思える自説と、それを補強するインタビュー内容のみ。統計的なデータは載ってないし、自説への反論を検討することもない。初版の1998年においてはこれが心理学の限界だったと言われてしまうのかもしれないが、もう一歩踏み込んだ調査・考察があれば、本書から受ける印象も大分変わったかもしれない。

  • 戦場の兵士の驚くまでの発砲率の低さ。
    なるほど、と思わせる部分が多くあった。
    戦場での行動もだけど、帰還兵のケアの部分に関してはほんとにベトナム帰還兵の人が気の毒。
    こんな感じの太平洋戦争の日本兵に焦点を当てた本とかあればいいのになぁと思う。

    全体的には多く引用があって良かったんだけど、最後の少年犯罪の部分は主観が入りすぎてると思う。

  • 戦争とは国家が人殺しを命令することだ。他者の命を奪うことが最大の罪であるならば、それ以下の罪――強姦・傷害・窃盗など――は容易に行われることだろう。しかも現代科学は瞬時の大量殺戮を可能にした。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/02/blog-post_9805.html

  • 恐ろしいほどツボにはまった本だった。
    なぜか、読んでいて涙が出た。

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    ナチの強制収容所を生き延びたブルーノ・ベテルハイムは、人間が暴力に対処できない根本的な理由は、それに真っ向から直面するのを避けていることだ、と述べている。36
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    捕虜は武器をもたず、無力で、自分の運命を不思議なほど落ち着いて受け入れている。人を殺す能力も責任もない捕虜には、降り注ぐ砲弾も爆弾も個人的な問題としてとらえる理由はなにひとつないからだ。121
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    すぐれた指揮官の重要な特性は、とほうもなく深い井戸をもっていて、そこから忍耐力をくみ出すことのできる能力である。そしてまた、部下たちが彼の井戸から忍耐力をくみ出すのを許し、それによって部下を強化する能力である。160
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    みずからの矛盾と偽善によって集団はたちまち弱体化し混乱する。魂は半分だけ売るというわけにはいかないのである。361
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  • 人間を殺す場としての戦場に送りだすとはどういうことなのか。どのように、殺人に慣れされていくことができるのか。そのためにはいかなる心身の訓練が必要になるのか。心理学者にして歴史学者、そして軍人でもあった著者が、戦場というリアルな現場の視線から人間の暗部をえぐり、兵士の立場から答える。米国ウエスト・ポイント陸軍士官学校や同空軍軍士官学校の教科書として使用されている戦慄の研究書。

  • 人は人を殺すことを避けようとする。

    そんな希望に満ちた本能がある一方で、その本能を凌駕する方法を編み出す人知をも持ち合わせている。
    “知恵の木の実”はやはり口にしてはいけなかったのかとよく知りもしないのに宗教的なことを考えてしまいました。

  • 戦争に対する意識や、映画による刷り込みなどの影響と現実の違いをまざまざと示された。

    資料としても、知識を深める本としても、これはとても残酷なほどすごく心理をついている部分が多い。

    現在286ページで、もうすぐ図書館に返却ですが、購入しようか迷ってます。

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