虜人日記 (ちくま学芸文庫)

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著者 : 小松真一
  • 筑摩書房 (2004年11月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480088833

虜人日記 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 8月恒例の戦争関連本。戦争に関する小説やノンフィクションはたくさんあるが、この本がすごいのは、(ほぼ)リアルタイムで書かれていること。帰国した兵士や、従軍記者が、思い出しながら、権力を意識したり解釈を変えたりして書くのではなく、その日その日の出来事が、科学者である筆者の冷静で客観的で淡々とした観察から記録されている。敗因を考察して「細いことに拘りすぎて大局観を持たない」「不都合なことはなかったことに、また不利なことは起こらないと盲信」「リーダーが自己保身に走り、部下を大事にせず犬死させる」などの指摘があるが、70年以上たった今でも当てはまることがあり、やはり昭和から学ぶことは多い。

  • 太平洋戦争終盤のフィリピンが舞台。マッカーサーを追い出した後の日本占領時代から、今度はマッカーサーにジャングルへ追いやられ終戦を迎え捕虜生活を経て帰国するまでの陸軍軍属の日記。著者のぶれない人間性に強さと人柄の良さを感じる。いろんな角度から戦争が見えて面白い。

  • 戦後のフィリピンで戦後捕虜になった方の手記。

    これを読むと、日露戦争以後、いかに日本社会が虚飾、見栄、特権意識にあふれていて、それに気づいていても口に出してはいけないことになっていたかよく分かる。

    今の自分達からは別物と思いたくなるが、脈々と戦前から持っていた驕りを心の奥底に残している気がしてならない。

    もしかして、こういう話ってタブー?

  • 『日本はなぜ敗れるのか』の元ネタ。終戦時の手記の内容がいまだに通じるということは、これからも通じるということ。広く読まれるべきということで、あえて文庫本フォーマットで出版されている。内容的にR18+指定であるが、やはり手元に置いておくべきか。

  • 2014/3/18 読み始め 3/30 読了
    凄い本を読んでしまった。読み継いでいかなければならない本。
    現在、日本と中国・韓国で戦中・戦後に関して激論が交わされているが、虜人日記のように、冷静に書かれていたものがあったらなと切実に思う。
    人間は弱い。何でも正/悪どちらか一方と断定してはいけない。そんなことを思った。餓死寸前までの境地にたったら、国民性はぶっ飛ぶんだろうな。アメリカ人がどちらかというと良く書かれているが、それは戦勝国のゆとりともとれる。性善説/性悪説、それは両方あるだろう。だけど圧倒的に性悪説がマジョリティだと感じた。上の人間によって組織は大きく変わる。自分は餓死寸前に食べ物をあげられる人になれる自信はない。それでも人を思いやる気持ち、道徳心、道義、そんなものを大切にしたいと思う。

  • 「新しい市場」(三宅)に引用。台湾精糖会社の一流の技術者が日本の敗因を冷静に分析。 日本人は不必要に神経質で、化学的に純粋でないと何だか気が済まない。自動車用にも不必要なまでに手をかけて品質の良い精製をする。米人はどうせ自動車用だと品質が悪くても平気でいる。だから彼らが設計した精製工場は素人だけでも運転できるようになっている。

    日本人は計算、暗算、手先の器用さは優れる。資源が無いから、製品の歩留まりを上げるとか物を精製する技術に優れている。しかし、資源が豊富な米国にとって、製品の歩留まりなど悪くても大勢に影響はない。米国の技術者はその面に精力を使わず、新しい研究に力を入れる。一部分だけをみて、日本の技術は世界一だと思い上がっていただけだ。総体的に見れば彼らのほうが優れている。小利口者は大局を見誤る例そのままだ。

    日本人は教育はあるが、教養がないと、米人が批評する。日本人の生活には趣味性とか情操とかいうものが少なすぎるから、一歩家を出るとの荒んだ生活になる。一億玉砕と内地ではいうが、マニラでは「打つ・買う・飲む」のデタラメをしている。 日本人には公徳心がなさすぎる。 米人は計算や暗算はできないが、教養がある。 

  • とても面白い作品でした。これからも、繰り返し読みたい。

    人間の弱さや統率力、敗因など、その明晰な分析に頭が下がる。

  • 先の戦争の記録については、数多くの著作が世に出ている。
    本書は、技師である著者が、客観的に記述し、そこに的確な
    主観(実感)を交えて記述されており、
    現在の日本の状況を見ても、教えられることは多い。
    山本七平が絶賛するのもわかる気がする。
    戦争体験記の名著。
    一度は、読んでおきたい本の一冊だと思う。

  • 渦中にいながら、ここまで冷静に記録を残すことができるのは、すごいと思った。
    そのおかげで、我々は何が起こったのかを知ることができる。

    集団としての日本人が、独善的で自らを省みないのは、今でもまったく変わっていないと思う。

  • ――――――――――――――――――――――――――――――○
    部下の傷病兵に自決を強いて、自分達だけ逃げ廻るような部隊の兵は、命令に従って負傷でもしたら大変と、敵が来れば一発も撃たずに逃げてしまう。ところが、傷病兵をよくいたわり、最後まで世話を見るような部隊は、敵とよく戦い、強い部隊と称賛された。177
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    今度の戦争は、日本は物量で負けた、物量さえあれば米兵等に絶対に負けなかったと大部分の人はいっている。確かにそうであったかもしれんが、物量、物量と簡単に言うが、物量は人間の精神と力によって作られるもので、物量の中には科学者の精神も、農民、職工をはじめ、その国民の全精神が含まれている事を見落している。こんな重大な事を見落しているのでは、物を作る事も勝つ事もとても出来ないだろう。346
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    一路故国へ向かう。十二月三日、人員が一名不足なので調べてみると、投身自殺者が一名あったのが解り、船は半日程引き返し死体を探したが、見つからなかった。戦争中はこのバアーシー海で何万という人が死んでも全く顧みる事がなかったのに、平和となれば一人の為にも一万トンの船を一日無駄に動かす。変な気がする。365
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    太平洋戦争で、日本はなぜ敗れたのか。本書で説く「克己心の欠如、反省力なき事、一人よがりで同情心がない事、思想的に徹底したものがなかった事」など「敗因21カ条」は、今もなお、われわれの内部と社会に巣くう。そして、同じ過ちをくりかえしている。これらを克服しないかぎり、日本はまた必ず敗れる。
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