暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089380

作品紹介・あらすじ

レッシング、ローザ・ルクセンブルク、ヤスパース、ヘルマン・ブロッホ、ベンヤミン、ブレヒト…自由が著しく損なわれた時代、荒廃する世界に抗い、自らの意志で行動し生きた10人。彼らの人間性と知的格闘に対して深い共感と敬意を込め、政治・芸術・哲学への鋭い示唆を含み描かれる普遍的人間論。『全体主義の起源』、『人間の条件』、『革命について』といった理論的主著を側面から補うにとどまらず、20世紀の思想と経験に対する貴重な証言として読まれるべき好著。

感想・レビュー・書評

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  • この本は完全に文芸評論で、レッシングやらヤスパース、ディネーセンなどを個々に拾い上げて評していく。従ってアーレントの<思想>はストレートに語られることなく、ときおり鋭い視点も見せるものの、さほど重要な書物という感じは受けなかった。
    巻中ではブロッホ、ベンヤミン、ブレヒトを論じた各章が比較的面白かった。
    ベンヤミンのくだりでカフカのことも結構触れられているが、そこが一番興味を惹いた。カフカだけで一文書いて欲しかった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737917

  • ハンナアレント 「暗い時代の人々」 評伝形式の人間論の本


    アレント の公的領域に対する問題意識が随所に見られる。公的領域の喪失に暗い時代をとらえながら、評伝の中から人間性の発展を見出すあたり、アレントは凄いなと思う。


    名言「時として時代は、最もわずかしかその影響を蒙らず、最もその時代から遠く、したがって最も苦しんだ人に、最も明瞭にその印を刻むものである」




    アレントの公的領域に対する問題意識
    *人間は公的領域において行動することにより初めて、言動が見られ、聞かれ、評価される
    *世界が〜人々の間に存在すること〜世界は人々を関係づけ、同時に分離させる
    *人間は私的領域だけでなく、公的領域においても幸福でなければ、完全に幸福とは言えない

    命題
    *歴史は 公的領域の光が奪われた暗い時代がいくたびも訪れたことを示している。そのとき世界は曖昧なものとなるので〜人々は政治に要求することを止めてしまう
    *暗い時代においてさえ、人は光明を期待する権利を持ち〜こうした光明は〜少数の人々から発する

    公的領域の喪失から人間性の発展の流れ
    *人間にとって 公的領域における言動は重要
    *著者が生きた時代は 公的領域が喪失し、人々の公的言動に光があたらない「暗い時代」
    *暗い時代においては 公的領域を無視し、仲間との相互理解を重視するため 人間性が発展する
    *評伝を通して、友愛、コミュニケーション、自立的思考などを 発展した人間性としている


    自立的思考
    *自力で自律的に行われる思考
    *個人が思想を選び出す〜個人が思考の中に自由に世界を動き回る様式を見出す


  • 一部しか読めず。

  • アレントがアイザック・ディネッセンについて書いている。『アフリカの日々』⬅︎映画愛と哀しみの果て、の原作。

  • 同化されたユダヤ人の自己欺瞞が、通常自分たちはドイツ人と同じようにドイツ人的であり、フランス人と同じようにフランス的であるとする誤った信念であったのに対して、ユダヤ知識人の自己欺瞞は自分たちが「祖国」を持たないと考えているところにあった。彼らの祖国は実施にはヨーロッパだったのである 。

  • 著者と同時代に生きた人物を含む10人の評伝。
    前半は何とか読み進めることができたが、ブレヒトの章で頓挫。あまりに難解な文章に、しばらく読み進めることができなかった、もちろん、ブレヒトの章については、ほとんど理解できていないと思う。
    特に頁が割かれているのは、ヤスパースとベンヤミン。
    ヤスパースは著者の師匠筋であるから当然であろうが、ベンヤミンについては、あともう少し運命の歯車のいたずらを辛抱できれば生き永らえたであろうという無念さが、ベンヤミンへの愛情溢れる文章となっていると思われる。
    ベンヤミンの著作も、少しだけ読んで積ん読状態となっているので、これを機会に読み直してみたい。

  • ローザルクセンブルクが1人の女として何を考えていたのかを読むと、今のイスラムやロシアとの西側諸国の対立などは種類の違う闘争に見えても根本は変わらないように思えてならない。

  • ヤスパースの項目では、ハイデガーのユダヤ人差別意識を暗に批判している記述がある。しかし、原文の英語は難しい単語が多く使われているだけでなく、ドイツ語が透けて見えるような文体で、やはりドイツ語で考えて英語に置き直したのかと思わせられるところがある。

  • ユダヤ人思想家による人間論。主にユダヤ系の知識人に焦点をあてる。20世紀前半は戦争と差別の時代だった。増幅した権力は暴力へと成り変わり人間の尊厳を打ち砕く。この時代の中でも信条を貫き抜いた人々の尊さをアーレントは冷静に客観的に分析する。彼女の拘りである公的領域の視野で、個々の人格から時代と世界を写し出す。ここで選ばれたのは特別な人達だ。多数の人間はもっと弱く、私的領域の中で個人を守ることに固執する。例え小さな意識を変革できたとしても行動を伴うことはとても難しい。このジレンマは一層深まるばかりに現代に至る。

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著者プロフィール

1906-75年。ドイツに生まれ、アメリカで活躍した哲学者・政治思想家。主な著書に、本書(1958年)のほか、『全体主義の起源』(1951年)、『革命について』(1963年)など。

「2023年 『人間の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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