位相のこころ (ちくま学芸文庫 モ 6-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089571

作品紹介・あらすじ

位相は"近い"という日常感覚を数学的に厳密にとらえ直したもの、といってよく、現代数学において最も基本的で重要な概念の1つである。歴史的には、18世紀から19世紀末にかけて解析学が進展していくなかで、極限・収束・連続性などをめぐる議論から位相空間論が生まれ、20世紀における関数解析学の展開によって、より抽象的に定式化されていった。本書は、数学の意味・こころを語る達人である著者が、1950年代、60年代、70年代に、位相をめぐって書き綴った「位相解析入門」「位相用語集」「位相構造」という3つの文章からなる。著者の名調子に乗せられて、位相のこころを体感してみよう。

感想・レビュー・書評

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  • 何回か読むと,そんなことかと思いうれしくなります.

  • 大学数学における最大の鬼門ともいえる「位相空間論」。教科書では、3つの単純な公理で与えられる開集合系が天下り的に定義され、その後、近傍やコンパクトに関する議論が無味乾燥に繰り広げられるのが普通である。学生は、極めて抽象的で、直観的な理解がまったく及ばない世界を、演繹だけを頼りに各々の定理と証明を「理解」し、訳がわからないまま先に進んでいかなくてはならない(それはそれで楽しいのだが)。
    本書では、位相空間論という学問が発達した歴史的背景や、位相空間の定義が多くの数学者によって洗練されていく過程を描きつつ、開集合・閉集合・近傍・コンパクト・全有界などの基本概念により、順序や距離を用いることなく極限や収束の議論を厳密に行えることを明快に示している。著者曰く「ブルバキよりもブルバキらしく書いてみた」そうであり、ブルバキの教科書に細かいツッコミを入れまくっているところが何とも愉快である。初稿は40年以上前に書かれたものであるが、内容はまったく古くなっておらず、1950-60年代の数学のダイナミズムが伝わってくる点も興味深い。

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著者プロフィール

1928年東京生まれ。数学者。東京大学数学科を卒業。京都大学教養部で教鞭を執り、民間の数学教育運動にも参画した。京都大学名誉教授。数学科関係の主な著書として『数学の歴史』(講談社学術文庫)、『微積分の意味』(日本評論社)、エッセイ・自伝に『まちがったっていいじゃないか』(ちくま文庫)『自由を生きる』(東京新聞出版局)ほか多数。2010年7月逝去。

「2021年 『悩んでなんぼの青春よ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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