二十一世紀の資本主義論 (ちくま学芸文庫)

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著者 : 岩井克人
  • 筑摩書房 (2006年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089984

二十一世紀の資本主義論 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • グローバル市場経済の真の危機を解く表題論文のほか、貨幣論、エッセイ等を含む好著。勉強になりました。

  • 20世紀の終わりに書かれた経済エッセイをなぜ今ごろ読んでいるのかといえば、単にそのときに読み損ねていたからにすぎないのだが、時間をおいて読むことで、また異なった感慨がある。
    社会主義陣営が崩壊してからの世界の目まぐるしい変容を、私もまた、息を詰めるようにして見つめていたが、あれから20年近くの間に基軸通貨国がしかけた2度の悲惨な戦争とこの国で起きた原発事故を経て、私たちは今、ますます小さくなっていく成長のパイを追い求め、方向転換のきかない恐竜のような古い経済システムが転落へと向かっていくさまを、恐れとあきらめのうちに見守っている。岩井氏がくりかえし論じるように、貨幣を導入し資本制に組み入れられたときから、私たちはリスクを先延ばししながら大きなリスクを抱え込んでしまったのだが、それでもまだアジア通貨危機当時は、私たちはグローバル経済のリスクがこれほどのものとは実感していなかったし、よりよい経済統制システムをさぐろうともしていたのだ。このあとの岩井氏の議論の展開は市民社会論に引き継がれているので、遅ればせながら早く読まなくては。
    にしてもあいかわらずエレガントなエッセイを書く方である。井原西鶴の小説やギリシャ神話の「黄金の林檎」を貨幣論で読み解いたり、売と買がもともと分離した概念ではなかったというエッセイなど、とても面白い。本筋の経済理論のみならず、こんな素敵な文章を書ける経済学者は世界でも少ないに違いない。もっと活躍していただきたい。

  • グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機や恐慌ではない。基軸通貨ドルの価値が暴落してしまうグローバルなハイパー・インフレーションである。しかし、自由を知ってしまった人類は好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の中で生きていかざるをえない。21世紀の資本主義の中で、何が可能であり、何をなすべきかを考察し、法人制度や市民社会のあり方までを問う先鋭的論考。

  • 著者の短篇集。

    貨幣論、ヴェニスの商人の資本論で構築された
    貨幣にたんする考え方を色々な視点の随筆としてまとめられている。

    資本主義は自己崩壊的なシステムである。
    それは予想の連鎖に基づく、ひとつの基軸通貨からなる生態系であるからだ。

    ひとたび、その予想が裏切られると貨幣は実物以下の単なる紙切れとなる=インフレ

    また、投機は悪とみなされるが21世紀において誰もが投機家である。
    投機家=安く買って、高く売る人たち であれば彼らは必然的に誰かと誰かをつなぎあわせており、「予想の連鎖に基づき」そのまた買い手、売り手がまだ安く買える、高く売れると考える余地がある以上、経済合理性を求め彼らもまた投機家となるのである。

    この必要悪を内包した経済循環こそが、資本主義であり、であるがゆえにバブルは生じ、収縮と拡大を繰り返すのである。

    そして、別の視点から見ると収縮と拡大こそすれ、システムの破綻は起きえない。それが社会主義に優る資本主義というシステムだ。

    しかし、我々は21世紀に向かうにあたって情報化社会に伴う、商品の複雑化(情報商品、金融商品)、グローバル経済への進展、電子貨幣など新しいフロンティアが拡大されている。

    よって我々はますます依拠せざるをえないこのシステムを前に、その本質を見極め向きあう必要があるのだ。

  • 平成22年のセンター試験に出題があったので読みました。

    21世紀のという本の題は少し違うなと思いました。
    20世紀の発想をかなりひきずっていて、21世紀の発想の提案にはなっていないかもしれない。

    センター試験は「資本主義と「人間」」という
    朝日新聞1985年4月2日夕刊
    に掲載のあった記事とのことです。

    その後、単行本になり、文庫になっています。

    試験問題と単行本の違いは、問題のためのカタカナへの書き換えや、横線だけでなく、「ふりがな」と出典の記載の有無があることがわかりました。

    新聞掲載時の内容ははまだ未確認です。

    岩井さんの本は、ほかにも読んだことがあります。とても分かり易いです。

    ただ、岩井さんと話をしたことがないので、文章に二重拘束、三重拘束があるかどうかは分かっていません。

    全著作を読んでいないので、執筆当時と現在の解釈の違いは未確認です。

    ただし、著者が「あとがき」で「本書に集まられた文章は、巻頭論文以外は、すべてすでになんらかの形で発表されたものである。だが、本書に収録するに際しては、字数や表現に制約がある新聞や雑誌に掲載された文章ではなく、わたしの手元に保存してある原稿を基底にし、それに大小さまざまな改訂をほどこした。」と2001年1月1日付けで書いている。

    初出当時の見解だけではなく、出版当時の見解も入っている可能性がある。

    他の収録している著作との関係で、省略している事項があるかもしれない。

    後半に収録した論文はある理論の発見後のもので、「資本主義と「人間」」は前半なので、発見前だということがわかる。ということは、理論を適用後には、別の書きぶりになるのかもしれない。

  • 主に貨幣論をベースに展開される。各章が独立した形式をとっており、内容の重複が気になる。またギリシャ神話をベースにした経済論など筆者独特の語り口は魅力的である半面やや難解である。とはいえ、貨幣論に関しては終始一貫した論理を貫いており、これに基づいて全ての経済的側面が語られるという一貫性はある。「貨幣は人々が半永久的に価値を持つと考えるからこそ貨幣である」や、投機の問題に対して「ケインズの美人コンテスト」「アダムスミスの市場主義経済、見えざる手」の引用など非常に分かりやすく説得力を持つ展開もあり骨太な経済論の書といえる。時代によって陳腐化する内容ではなく、時がたってまた読んでみるに値する本である。

    追記:2011/09/03現在、アメリカ、欧州のソブリン危機を契機にドルの失墜が現実味を帯びている。

  • 昔吉本隆明さんと対談していたので、この人の名前は知っていた。
    経済学に関する本だが、一般向けで、数式などは出てこないし、わかりやすかった。
    特に貨幣論がおもしろく、(私の言葉で言うと)それが一種の記号として存在しているのだということが確認できた。
    それと、日本の「企業=法人」という考え方が、アメリカあたりではむしろ否定されていて、企業は「(雇用者、労働者等を含む当事者間の)契約の束である」ということになっているとのこと、ああ、そういうことか、と思った。
    しかしこの本は古い。個々の文章は80年代から90年代のもの。
    リーマン・ショック以後の、「まさに、いま」をこの人がどう分析しているかを知りたいと思った。

  • 基本的には貨幣は最大の偽札だという主張を繰り返す。だが、これからの経済の展望についてさまざまなimplicationsについて言及していた。

  • 僕だって真面目な本も読むんですよ。

    これは、面白かった。
    難しいから二回くらい読まないと理解できなかったけど、面白かった。

    みんなが価値あるモノだと思ってるから、そのモノには価値がある、ってことらしい。
    実際の価値と、物の価値がどんどんと乖離していくー

    要するに、みんながカワイイっていうからカワイイってなるってこと。
    世界に俺しかいなかったら、エビちゃんはカワイイと思われないわけだ。

    僕にとっては価値についての一冊でした

  • 書いてあることはすごい面白いし、この前起きたアメリカのサブプライムショックが世界に波及することも予見している点ではすごい本だと思う。ただ、全体を通してずっと同じことしか言ってないから、読んでて途中で飽きる。

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グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機や恐慌ではない。基軸通貨ドルの価値が暴落してしまうグローバルなハイパー・インフレーションである。しかし、自由を知ってしまった人類は好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の中で生きていかざるをえない。21世紀の資本主義の中で、何が可能であり、何をなすべきかを考察し、法人制度や市民社会のあり方までを問う先鋭的論考。

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