輓近代数学の展望 (ちくま学芸文庫)

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著者 : 秋月康夫
  • 筑摩書房 (2009年12月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092540

輓近代数学の展望 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1970年の高校教育課程の改訂で、数学教育の現代化のはじめとして「集合」と「行列」などの導入を牽引した秋月康夫先生が、大東亜戦争前の昭和16年に書いたものと、その30年後に「数理科学」誌上に連載した続編を合本したもの。

    「大体数学は一歩一歩前進するものであり、真剣に勉強しなければその真の妙諦は得られないものであろう。しかしこれは全く別の部門の芸術等でもそうはいえないだろうか。それなのに世人はある程度にこれを観照し得ている。端麗な数学もある程度には世人と共に観照し得ないだろうか。」

    と、初版の「序」にある。筆者の思いはその通りなのだろうが、観照はし得ても、内容はかなり難解(かつ簡素)な為、未知のテーマの部分はこの本だけでは結局理解し得なかった。まあ、それで良いのかもしれない。この本を若いころに理解できなくとも貪ったという、偉大な数学者が多くいる。

    また、「序」の表現もさることながら、秋月先生の表現にあふれるセンスと数学に対する想いはすごい。

    「記号といい、形式化という字面は如何にも無味乾燥なことのように見えよう。併し記号化、形式化の裏には我々の理性の生々しい血が脈打ち深い理知の洞察の眼が開かれているのである。固定化された概念、そしてそれの月並な演繹は所謂’概念化’でもあろう。併し銃うような概念の帰納的な構成―記号化―は、理性の創造であり、連想力の所産であって、芸術に於けると等しく個性的なものなのである。そこに作られた概念そのものは個性を超越した一般普遍性を持つものであるが、概念を作る動きは個人の高い精神活動である。没我的な個別性即ち真の独創性をそこにみるのである。」(p.17)

    ここのくだりは、読む人全ての心を掴んで離さないだろう。

    「数学はFreiheitを求めて進む」(p.18)

    「a=bを照明するのに、a>bとしてもまたa<bとしても矛盾するからa=bだと結論したのでは十分でない。更に何故a=bであるかという内在的理由を明らかにしなければならない」by エムミー・ネーター (p.30より)

    また、続編の「序」では、来日したSchwartz教授が日仏会館で行った講演「ヒューマニズムかテクノロジーか」という講演からの引用を載せている。

    「テクノロジーは本当の教養ではありません。他方ヒューマニズムは現代に欠くことの出来ないものでありますが、その定義付けがまだ良くは出来ていないものであります。数学は些かこの議論の中心をなしています。私達数学者は、物理や技術法面から研究の道具を提供するように要請されております。ところで、私達は数学もまた教養であるよう願っております。」


    Schwartz教授の言葉のように、現代社会では日々実利が求められ、真の教養は忙殺されがちである。先日久しぶりに書店の数学の書棚を漁ったが、学生時代あんなに勉強したつもりだったのに、露程も学んでいなかったと痛感する。

    また数学をやりたくなった。などと言ってみる。

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