- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480093127
作品紹介・あらすじ
かつて東洋一の繁栄を誇り、モダンの代名詞となった都市、上海。本書ではその誕生から発展、絶頂期の爛熟、日本軍占領による「解体」にいたる歴史を、日本との関わりを中心に丹念に繙いていく。幕府使節が欧米諸国へ向かう経由地となり、谷崎潤一郎や芥川龍之介等の文学作品の舞台となり、やがて日本軍の大陸進出によって戦場となった上海。外灘に摩天楼が聳えたつ国際金融都市、茶館に娼婦やアヘン中毒者がたむろする退廃都市、租界を擁するコスモポリタン都市…。その刻々の貌に、日本人の憧れをかきたてつづけた魔力を探る。文庫化にあたり「魔都」のその後の軌跡を増補。
感想・レビュー・書評
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情報発進基地としての上海からもたらされた漢訳洋書が幕末の日本に与えた影響に興味を引かれた。
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魔都と呼ばれた都市・上海が、江戸末期から昭和初期の日本知識人に与えた影響を丹念に追った労作。
江戸幕府の使節団にとって最初の近代だった上海は、反=国民国家とでも言うべき、その性格から、明治以降の日本人にとって異物と化し、それ故、当時の体制からはみ出していくアウトロー的心情を持つ人々を却って惹き付けた。おそらく多くの人にとっての魔都上海とは、このナショナリズムを解体する装置としての上海だろう。中華の長い伝統を持つ街に、近代そのものである「租界」が、矛盾ごとねじ込まれて、その結果産まれた、高度資本主義的繁栄と退廃の混交物。
それを描写する筆は生真面目だが、多少、実証主義に囚われすぎの感もある。例えば後半話題は日本文学者の見た上海に移るのだが、その対象は実際に上海を訪れた作家による紀行文的な文章に限られる。上海どころが、日本すら出たことがないような作家の手になる、得て勝手な妄想に現れる上海というのも、分析対象として面白いと思うのだが。 -
よく調べた「カタログ」
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以前のメチエで既に読んでいましたが……。やはり、いま世界で最もホットな街、上海。行ってみたくなります。こういった本で1930年代のことを知るにつけ、日本軍の占領と共産党の解放が、上海を、ではなく、魔都を壊してしまったのだということがわかります。