ロラン・バルト 中国旅行ノート (ちくま学芸文庫 ハ 9-6)

  • 筑摩書房
3.38
  • (1)
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 72
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093424

作品紹介・あらすじ

1974年、ロラン・バルトは前衛的季刊誌『テル・ケル』のメンバーともに毛沢東政権下で文化大革命を推し進める中国を訪れる。北京、上海、南京、洛陽、西安をめぐる行程のすべてを彼は克明に記録し続けた。そこでは、書や料理、色彩や風景、訪問先での見聞が記される一方、エロティシズムや"襞"の欠如に嘆き、政治的な配慮に苛立ちながら、中国に「フランス」を照射しようとする。ついに書かれることのなかった中国版『記号の国』へのノートとして2009年に発表された新草稿、本邦初訳。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 西洋の人って(当時の)中国をどう感じてたのか知りたかった。でも日本人の感じ方とかなり近い気がした。
    「数字」にうんざりなのは今も同じ。

  • 毛沢東政権下の中国の様子を語った本。なかなかに興味深い。

  •  1974年4月、ロラン・バルトは3週間の旅程で中国訪問団の列に加わっている。スイユ社のバルト担当編集者フランソワ・ヴァール、それからフランスの代表的な前衛雑誌「テル・ケル」の書き手たち、つまりフィリップ・ソレルス、マルスラン・プレネ、ジュリア・クリステヴァも同行した。この旅からたとえばクリステヴァの出世作『中国の女たち』(1974)が生み出されたことは、よく知られている。
     しかしバルトは旅行中に4冊のノートに覚書を書いたのみで、結局そのままとなった。彼のもくろみとしては、あまりにも美しく、まぼろしのような日本滞在記『記号の国』(1970)の陶酔的な思い出の続編として、それの中国版を執筆するぞという夢想を抱いたはずだ。しかしそれは、失望と苛立ちにあっけなくかき消された。

    「あらゆるものに合理性のテーブルクロスが掛けられているようで、偶発事、襞、突飛なものは稀である ≠ 日本」(90頁)
    「この一週間、エクリチュールが開花することも、エクリチュールの悦楽を得ることもない。無味乾燥、不毛だ」(100頁)

     こうした親日ぶり、反中ぶりは、旅行から35年も経過してからついに初お目見えとなった本書『中国旅行ノート』(ちくま学芸文庫)のあちこちに散見され、私たち日本人の目にはこそばゆいほどである。ただし、この時の中国が文化大革命のまっただ中であり、あらゆる言説、身ぶりが政治的抑圧のクリシェに収斂していた時代だったことも、考慮に入れておく必要がある。《批林批孔運動》(毛沢東の政敵である林彪を、貴族的な礼法主義の生みの親である孔子と同一視しつつ、全否定する国民参加型キャンペーンのこと)の最盛期なのである。単純な見解だが、やはり時代が悪かったとしか言いようがない。では、いつの時代に訪ねれば最良だったのか。それは私にもわからないのだが…。

    「索引を作るため自分のノートを読み返しながら、このノートをそのまま出版すれば、間違いなくアントニオーニ的なものとなることに気づく。だが、他にどうすればよいというのか?」(240頁)
     ロラン・バルトが中国に行くというモチベーションを持ったのは、どうやらミケランジェロ・アントニオーニが江青女史からの注文を受けて撮ったドキュメンタリー映画『中国』(1972)を見て刺激を受けたからだったようだ。アントニオーニは彼なりに思いを込めて作ったらしいが、江青女史と毛沢東によって全否定されてしまった。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

(Roland Barthes)
1915-1980。フランスの批評家・思想家。1953年に『零度のエクリチュール』を出版して以来、現代思想にかぎりない影響を与えつづけた。1975年に彼自身が分類した位相によれば、(1)サルトル、マルクス、ブレヒトの読解をつうじて生まれた演劇論、『現代社会の神話(ミトロジー)』(2)ソシュールの読解をつうじて生まれた『記号学の原理』『モードの体系』(3)ソレルス、クリテヴァ、デリダ、ラカンの読解をつうじて生まれた『S/Z』『サド、フーリエ、ロヨラ』『記号の国』(4)ニーチェの読解をつうじて生まれた『テクストの快楽』『ロラン・バルトによるロラン・バルト』などの著作がある。そして『恋愛のディスクール・断章』『明るい部屋』を出版したが、その直後、1980年2月25日に交通事故に遭い、3月26日に亡くなった。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「2023年 『ロラン・バルト 喪の日記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロラン・バルトの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×