倫理とは何か 猫のアインジヒトの挑戦 (ちくま学芸文庫 ナ 13-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093431

作品紹介・あらすじ

悪いことはしたくない、できれば善いことをしたい-。本当に皆がそう思っているのか?そもそも、人はなぜ道徳的に善く生きねばならないのか?この地平から本書は、道徳的な善悪それ自体を哲学していく。二人の大学生と猫のアインジヒト、M先生が登場し、「人はみな自分の幸福を求めているか?」「社会契約は可能か?」「なぜ道徳的であるべきか?」等について対話を繰り広げる。プラトン、アリストテレス、ホッブズ、ルソー、カント、ロールズらの考えがくっきりわかる、これまでにない不道徳な倫理学の教科書。

感想・レビュー・書評

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  • 奇特かつオーソドックス。刺激的な倫理学の入門書。

    きちんと読み込めなかった部分もあるが、最後にかけての2章は圧巻。
    タイトルの「倫理とは何か」にもあらわれているが、この本はまさに「倫理」の本質に触れるものだった。

    倫理という、社会を前提にした概念ではあるが、
    真に人が倫理的、道徳的な真理にたどり着いた時、その人は社会から排除されてしまうとする言説(うまく説明できているか不確かだが)には知的快感が著しく刺激させられた。

    勉強しなきゃなーと思いました。

  • 1.哲学について学ぶ機会があったので、似ている領域の倫理も学んでみようと思いました。

    2.ある講義を受けながら2人の学生と1匹の猫が会話形式でやり取りしていくストーリー形式で倫理について学んでいくことができます。タイトルから分かる通り、倫理とはそもそもなんなのか、今身近に起こっている問題はどうやって解決していくのか、善なのか悪なのかそのようなことを話していく一冊です。

    3.正直、全然理解できなかったです。元々、この手の領域が苦手で使っている言葉が難しすぎること、答えが当たり前のことにたどり着いてしまうことで混乱してしまうという負のループを生んでしまうのが悪い癖になっています。
    悔しいけれど、今の自分には早すぎる本だと思いました。

  • 【書誌情報】
    著者:永井 均[ながい・ひとし]
    解説:大澤真幸[おおさわ・まさち]
    底本:『倫理とは何か 猫のアインジヒトの挑戦』産業図書、2003年。 〈哲学教科書シリーズ〉の一冊。
    シリーズ:ちくま学芸文庫
    定価:本体1,100円+税
    Cコード:0110
    整理番号:ナ-13-2
    刊行日: 2011/01/06
    判型:文庫判
    ページ数:400
    ISBN:978-4-480-09343-1
    JANコード:9784480093431
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480093431/

    【詳細目次】
    https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20140805/1474002742


    【目次】
    目次 [003-005]
    はじめに [007-012]

    序章 アインジヒトとの遭遇 何が問題か? 015

    第一章 
    M先生の講義I プラトンとアリストテレス(真の幸福について) 029
      1 プラトン――調和と恋 029
      2 アリストテレス――幸福と中庸 039
    アインジヒトとの議論I 人はみな自分の幸福を求めているか? 056

    第二章 
    M先生の講義II ホッブズとヒューム(社会契約について) 081
      1 ホッブス――社会契約説の原型として 081
      2 ヒューム――社会「黙約」説 093
    アインジヒトとの議論II 社会契約は可能か? 106

    第三章 
    M先生の講義III ルソーとカント(「自由」について) 131
      1 ルソー ――一般意思としての「自由」 131
      2 カント――断えざる社会契約としての「自由」 139
    アインジヒトとの議論III 功利主義の普遍化は不可能か? 160

    第四章 
    M先生の講義IV ベンサムとミル(利己主義について) 191
    アインジヒトとの議論IV 利己主義と《魂》に対する態度 219

    第五章 
    アインジヒトのはじめての講義 ニーチェとキリスト教道徳 247

    第六章 
    M先生の講義V 現代倫理学(メタ倫理学と正義論) 263
    アインジヒトとの議論V これからの論議のどこがつまらないか? 290

    第七章 
    アインジヒトとM先生の直接対決 なぜ道徳的であるべきか? 319

    第八章 
    アインジヒトとの最後の議論 語りえぬことについては黙ってやらざるをえない 347

    あとがきにかえて [363-366]
    あとがき [367-369]
    解説 非・人間の倫理学(大澤真幸) [371-384]
    索引 [386-390]

  • 倫理学についての良書。倫理的観点を網羅的にその成立から論じていて、矛盾も多く指摘する。「嘘が無い」というのが一番の印象。猫のアインジヒトは前提とする倫理的観念がほとんどないので、外部からの貴重な視点を読者に与えてくれる。その意味で倫理の本質をしっかりと教えてくれる本。マイケル・サンデルの「これからの「正義」…」などに護教論的なものを感じ取った方には、正直な本書がおすすめ。特に社会契約に関する章は鋭いと思う。

  • 「人間には、道徳的に善いことをしなくてはならない理由や必然性はあるのだろうか?」

     学生時代に倫理をとっていなかったので、ちょっと勉強しようと思ったけど、難しいのは疲れるからわかりやすく簡単に倫理全体が分かるような本をと思って買ってみました。
     ひねくれてるけど可愛い猫のイラストと、猫が子供に倫理を講義するって書いていたので、これならと思って買いました。
     で、読んでみたんですが、いたって普通な倫理の本でした。メモを取りながら何度も後戻りして読まないと頭がついていきません。
     顔に似合わず、この猫が北方謙三ばりの語り口で説き伏せてきます。

     アリストテレス、ソクラテス、プラトン、ホップス、ロック、ルソー、カント、ニーチェとそうそうたる偉人の道徳哲学を教えてくれますが、教える度に猫がチャチャを入れてきます。この猫は、道徳的に善い事をした方がいい理由に誰も答えていないと噛み付きます。
     皆がぼんやりと思っている、道徳的に善いことは自分にとっては善いことではないという感覚はじつは正解で、道徳的に善いことを行うベキ理由なんて見つかっていないと噛み付きます。

     道徳とは積極的に選ばれることではなく、仕方なく消極的に流されるようなものなのだと、スッと腑に落ちました。
     

  • 哲学めいたものにハマるきっかけとなった本。この本に出会ってはじめて、考える、いや、ただ考えるんじゃなくて、「自分の思考の足場を再考する」ような観点に気づいたのだと思う。
    これが読みやすい本で本当に良かった。読みにくい本だったらそもそも思想にハマることにはならなかったかもしれないから

  • 『マンガは哲学する』に出会って10年近くがたたうとする。あれから、『転校生はブラックジャック』を読んでみて何が何だかわからず自分の問ひの正体に気づけず、しばらく離れていた。
    けれど、時間が経つて、再び永井先生の本を読みだして、今度は自分の問ひの正体がはつきりとわかつた。考へるといふことにかけて、本当に哲学をされてゐる、世にも有難い存在であると感じる。これが哲学といふ学問をもつて生きてゐるひとなのかと思ふ。自分の思考が、まだまだいつでもどこでもあてはまる真理を探究するのに厳密でないことを感じ、もつと考へ続けてゐたいと強く望む。
    倫理について、意識してしまつた以上、考へずにはゐられない。さういふ意味で、哲学といふのは誰にでも開かれてゐるが、誰もができる学問ではない。なぜ善いことはするべき、悪いことはするべきではないのか。いつたい誰にとってのいつの時点での善さなのか。その時の自分にとつては善いことがその時点での他のひとにとつての善さではない。いくら将来のためといつて今の自分にとつて善くなくてもいいのか。倫理の問題といふものは、時間とそしてこの自分といふ存在に深く根差す問題である。
    哲学といふものは、一周回つて見渡したとき、当たり前が当たり前であることに対する感動であり、驚きだ。自分の善さも他のひとの善さもそのとき初めてどちらもほどほどに受け入れることといふ中庸の言い得て妙な具合に気づける。
    なので、これは決して倫理に対する思想でもなければ答へではない。倫理といふ問ひに対する哲学だ。この問ひを共有できるかどうか、これが哲学における愛だ。

  • メタ的に見ようとすることをきたえられた。

  • すごい楽しく読めた、ほとんど拾えてないのでまた読みたい

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738189

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著者プロフィール

1951年生まれ. 専攻, 哲学・倫理学. 慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位所得. 現在, 日本大学文理学部教授.
著作に, 『〈私〉の存在の比類なさ』(勁草書房, のち講談社学術文庫),『転校生とブラックジャック──独在性をめぐるセミナー』(岩波書店, のち岩波現代文庫), 『倫理とは何か──猫のインサイトの挑戦』(産業図書, のちちくま学芸文庫), 『私・今・そして神──開闢の哲学』(講談社現代新書), 『西田幾多郎──〈絶対無〉とは何か』(NHK出版), 『なぜ意識は実在しないのか』(岩波書店), 『ウィトゲンシュタインの誤診──『青色本』を掘り崩す』(ナカニシヤ出版), 『哲学の密かな闘い』『哲学の賑やかな呟き』(ぷねうま舎), 『存在と時間──哲学探究1』(文藝春秋), 『世界の独在論的存在構造──哲学探究2』(春秋社)ほかがある.

「2022年 『独自成類的人間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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