「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション2 (ちくま学芸文庫)

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著者 : 中井久夫
  • 筑摩書房 (2011年6月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093622

「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション2 (ちくま学芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • やはりこの方の本は示唆に富む。家族がテーマだが、真ん中辺りの老人論は特に重要に思える。人間の能力はそれぞれピークが異なるというのは私も時々考えていることで、こんな風に自分の考えをうまい言い方で言われたりすると嬉しいし、新しい文脈や角度からの気付きもある。解説の春日先生も言われていることだけれど。マンガ論も面白い。座右に置いて読み返したい。

  • 飢餓陣営紹介

  • 精神科医・中井久夫氏によるエッセイ集、ちくま学芸文庫「中井久夫コレクション」の第4巻です。

    前半は「家族」がテーマになっています。治療者でも患者でもない、「彼女ら彼らをとりまく人たち」に向けて語られており、どのような方のこころにも届くエッセイになっていると思います。いまの時代において、精神疾患と一切のかかわりをもたずに一生を過ごすことができる方は、おそらく少数ではないでしょうか。

    後半は大学生、中年、老人というある種の「世代」をテーマにしたエッセイが収録されています。わたし自身はまだ30手前ではありますが、いずれ老いていくことは避けられない。老いは誰にとっても無関係ではありません。そういう意味でも、本書は「中井久夫コレクション」の中でも比較的間口の広い本であるように思われます。

    私事ながら、わたしは環境の変化がとても苦手です。そのせいか以下の文章がすっと腑に落ちました。「移植に弱い」はおもしろい表現です。"こういう人(=執着性気質)がうつ病になるのは、転勤や昇進、引っ越し、家の新築などであった。こういう人は、職場の人間関係から家の一木一草に至るまで濃密な心のひげ根を絡ませ、したがって、移植に弱いとみられている"(P.162)

    一方、解説で春日武彦氏も言及している「本職患者」は厳しい言葉です。"この本職には何の報酬もありませんので気の毒ですし、医者も家族も皆困ります"(P.59)、"新型うつ病の患者を扱っていると、「自宅静養を要す」と記された診断書の枚数と薬の量ばかりが増えていって埒が明かず、やがて当人は本職患者のようになっていき・・"(P.339、春日武彦氏の解説)。自分がこのような体たらくに堕していないか、折につけ振り返ってみることを戒めとしたく思います。

  • 読んだ。

  • たくさんの著書をもつ柔軟で知的・実践的な精神科医・中井久夫さんのエッセイ集。
    最初の方に精神科患者の「家族」をめぐる考察が収められている。
    「家族精神医学」なる研究ジャンルがあるらしく、そういえば分裂病(統合失調症)の患者の家族に関する研究とか、かつて読んだことがある。「個人が病むというより、関係が病むのである」というテーゼは、サリヴァンや木村敏にも通じる考え方だが、中井さんも一定の距離を保ちながらある程度同意しているようだ。
    「個」を孤立した単独者としてとらえるのでなく、多層的な「系」との絡み合いそのものとして、人間を考え直すこと。
    この思考法はメルロ=ポンティ、グレゴリー・ベイトソンなどにも見られ、20世紀以降の重要な「知」だと私も思う。
    この本冒頭の「家族の表象」(1983)で述べられている「家族ホメオスターシス」の問題が興味深い。
    現代的な家族なるものが半ば閉鎖的な系として、変化をみずから打ち消すような形でバランスを保っていく。そうして、たとえば「同胞」であるきょうだい同士で、かわるがわる精神不調になったりするようなことが起こる。これは姉が重度の統合失調症だった私にとってひとごとどころではない。彼女が癌でいきなり死ぬと同時に、私はニセモノかもしれない「うつ」に陥ったのだ。

    この本のまんなかへんには「サザエさん」「フクちゃん」「ドラえもん」についての短い考察も収められており、これは多くの一般的な読者にもおもしろいだろう。
    たとえば「サザエさん」のあの奇怪な家族構成については、思春期の少年から青年、中年にさしかかりある種の陰りを帯びかねない30代終わり頃から40代の人間が、存在しない。だから「あの家族構成には不安をそそるものがない」(p.120)。
    一方「ドラえもん」ののび太たちは、一人遊びの年代から、仲間たちと協力し合いながら共に遊ぶ共同作業が可能な年代へと移りゆく、転換期に当たるという。
    「あやとり」を得意としたり、空想力の強いのび太は、ドラえもんによって「現実」へと常に立ち返らせられる。

    この人の本はほんとうに面白い。過剰に理論化することはないが、さまざまな知を渡り歩きながら、折衷的に自己の臨床技術を磨いてきた「達人」である。この「中井久夫コレクション」シリーズは、今後も読んでいきたい。
    ただし、文庫化されるだけあって、これらの本は古い。(この巻もすべて80年代の文章ばかりだ。)
    いまの氾濫する「うつ」の状況について、専門外の事柄ではあるが、中井さんはどのように見ているのだろう? そのテーマで何か文章があれば、是非読んでみたいのだが。

  • 精神医療家としての長い経験を感じさせる。震災以降の出版。

    ・家庭内のホメオスタシス(病気の交代)
    ・感情を口に出すことの多い家族、小意地悪な家族
    ・生のエネルギーを吸い取る人、事物
    ・統合失調者の家 偶発事が起こらない、偶然の力がない
    ・金属バット事件について
    ・サザエさん、ドラえもんをもとに家族問題を分析、マニアックなドラえもん分析が面白い。
    ・老人の精神衛生
    ・サリヴァン

  • 先見の明、というものについて考える。この本に書かれている文章は、わりとむかしに書かれたものばかりなのだけれど(むかし、というのがどれくらいまえからむかし、なのかはさておき)、今読んでもはっとさせられることが多い。ほんとうに多い。そういう視点とものの考え方を持つためには、どうすればよいのだろうか。才能か。それとも、よくよく見てよくよく考えること、くらいのシンプルなことなのだろうか。

  • 久々にこのテの書を読んだ──私が言葉を尽くせぬことを代弁している一冊。文庫化。

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「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション2 (ちくま学芸文庫)の作品紹介

敗戦から高度成長を経てバブル崩壊へと続いた社会変動は、日本人のライフサイクルを激変させた。それは、「常識が考えるよりもはるかに複雑で奥行きと広がりがあり、また生ぐさいものである」人間のつながりに、どのような歪みを生じさせたのだろうか。生きていく上で避けられない関係としての家族(「家族の表象」「家族の臨床」)や、無視し得ない社会問題となりつつあった老いについて検討する(「老人の治療についてのノート」「世に棲む老い人」)と同時に精神科医としての構えを自らの体験に即して綴った作品(「精神科医の弁明」「治療文化と精神科医」)を収める。

「つながり」の精神病理 中井久夫コレクション2 (ちくま学芸文庫)はこんな本です

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