増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫 キ 17-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093820

感想・レビュー・書評

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  • 北田先生の本は、「嗤う日本の『ナショナリズム』」以来の2冊目。

    広告と都市
    メディアと人

    ここら辺のテーマは学生時代から関心テーマの一つではあったんだけど、
    今曲がりなりにも仕事として広告に携わるようになってから、
    広告やメディアを社会学的な観点から考えなおすとまた面白い。

    広告都市としての東京、特に渋谷の話は、
    個人的には全くリアルタイムでないどころか、
    東京で働くようになった現時点でさえ完全に縁遠い自分にとっては、
    (まさにただの情報アーカイブでしかなくて、渋谷でなくちゃいけない意味を感じたことがない)
    はーそういうものだったのか、というぐらいの歴史物語でした。

    そういう「広告都市」の流れを知ることができたこと、
    その時代における消費社会論や(文化)記号論の態度を知れたこと、
    この2点は知識として読んで良かった。

    考えるべきテーマとしても面白かったのは、
    広告とは本質的にメディア寄生性を持つものである、という点。
    いや、これはテーマというより前提なんだけど。

    補遺でインターネットにおけるコミュニティについても触れられていたけど、
    その進化、深化について考えたり、
    またはソーシャル化(ソーシャルメディア)というテーマを考えるのも面白い。

    ソーシャルメディア上での広告、マーケティングのあり方、
    それに対する個人の受け止め方、
    企業と個人の関係性について、
    などなど。

    ここら辺考えてみようと思うけど、
    その前にもっかい記号論ちょっとだけ勉強したい。
    あ、でもその前に「オトナ帝国」もっかい観たくなった。

  •  北田さんは、東浩毅氏との対談で知った気がする。

     職場で、都市論を探していたときに、偶然本棚から発見。一度読んでみたかった。

     広告論とかメディア論とか難しく語っているが、渋谷の盛り場論として理解できる気がする。

    ①1980年代までは、西武が西武百貨店からパルコまでを道路や周辺の土地利用も含めて、劇場化して、人を呼ぼうとした。それにつれて、東急も道玄坂側で頑張った。

    ②しかし、1990年代のバブルがはじけてから、そういうまちを劇場にして、一定の雰囲気をもった商業展開は、商業資本側の弱体化もあって下火になった。

    ③しかし、今でも、渋谷は、若者たちには、便利なまち、特別ではないけど、行けば何でもそろうまちとして人気を持っている。

     自分は、1980年代の西武系の人たちの熱気のこもった雰囲気を知っているので、ああ、バブルだったんだな、今の方が渋谷もわかりやすいなと思う。

     これから、駅の再開発など周辺開発が進むと、東急のイメージが渋谷は前面にでてくるような気がする。

  • ●トゥルーマン・ショー
    ・映画「トゥルーマン・ショー」の舞台は広告都市「シーヘブン」
    ・主人公以外は全て役者とプロダクトプレイスメントされた舞台セット。それを現実と思っているのは本人だけ。
    ・世界中の人間がその様子を外部から見ており、目に入るものは全て自然な広告になる。

    ●近代から現代への広告の変化
    ・昔は広告はもっとチンドン屋的なダイレクトな感じだった
    ・近代国家になるにつれそういう野蛮なものが受け入れられなくなった
    ・広告は潜むようになった。広告然とした広告からメタ広告へ

    ●80年代、広告都市渋谷
    ・西武=セゾン=パルコの東急王国渋谷への挑戦
    ・池袋では実現できなかった(駅直結西武が「袋」で完結)
    ・「公園通り」「オルガン坂」「サンドイッチロード」「スペイン通」を丸ごと広告空間に開拓。渋谷=公園通りの完成。
    ・元々あった渋谷の土着感から切り離したディズニーランド的な文化感溢れる「日常からの脱出」を実現する街の演出。単なる客寄せではない文化事業を実施するのもこのため。
    ・そこは閉鎖的な記号空間で、ゲスト(来訪者)はその場にふさわしい振る舞いを求められる

    ●90年代、失効
    ・センター街、ランブリング・ストリートとコギャル、夜の街渋谷などにより渋谷のイメージが変わり、今では観光客向けの文化的幽霊としてかつての渋谷の残滓があるだけ

    —————————
    ここまでが2002年に書かれた本の内容。それから20年経って今渋谷は2027年に向けて東急グループの再開発によって「ジャスコ的な何か」に生まれ変わろうとしているように思える。

  • 2011 7/20読了。WonderGooで購入。
    @klovのブクログエントリ(http://booklog.jp/users/klov/archives/4480093826)を見て欲しいと思っていた本。近所の書店で平台にあったので買った。
    広告についても都市についても全然事前知識はなかったが、面白く読めた。
    広告=都市としての渋谷のイメージ(80年代渋谷のイメージ)が自分は全然わからないわけだが、わかればもっと違った感想もあったのかも知れないとも思ったり。

著者プロフィール

東京大学教授

「2022年 『実況中継・社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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