地震予知と噴火予知 (ちくま学芸文庫 イ 46-1 Math&Science)
- 筑摩書房 (2012年6月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480094636
作品紹介・あらすじ
また地震予知に失敗した!東日本大震災を経験して、だれもがそう思った。だが首都圏に、また南海トラフに、次の巨大地震が迫っている。予知をどうしたらよいのだろう。どのような方法が可能なのか。これまでの想定と異なる巨大地震のメカニズムに迫るためにも、広い領域からの発言が思わぬヒントになるかもしれない。そのためには、だれにもわかりやすい現状の全体像の提示がまず必要だろう。本書は、長年地震研究にたずさわり、噴火予知・防災の最前線に立ってきた著者が、地震理論の現状と問題点を整理し、今もって未完の予知科学へ新しい提言をする注目の書。
感想・レビュー・書評
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本書では地震学の知見を基に,まずは地震発生や噴火発生のメカニズムが解説されている。次いで地震予知・噴火予知とはどういうものなのかが示されている。最後に地震予知・噴火予知についての今後の展望が述べられている。
著者は地震の震源過程モデルや噴火の発生機構の理論などを研究してきた地球物理学者だ。そのため,地震や噴火の発生メカニズムについての説明は詳細かつ丁寧である。また,例えばマグニチュードの定義などが数式できちんと示されていて理解しやすい。最終章には現状における「予知能力の評価」が表で載せられている(214頁)のだが,これは学者としてだけではなく,自らも噴火予知体制の中心にいたという著者の思いがうかがい知れて興味深かった。
個人的には,地震発生のメカニズムを説明するための複数のモデルが紹介されていたのが興味深かった。理論モデルの提唱とその後に続くデータによる検証の繰り返しは,(他の科学分野と同様に)地震予知や噴火予知の科学でも重要なのだと感じた。
ひょっとすると,本書のタイトルを見て,近い将来における具体的な地震予測や噴火予測を知りたくて本書を手に取るひともいるかもしれない。しかし本書の内容はそれらの具体的な予測内容を述べているものではない。それらに関心があるひとは他の本をあたると良いだろう。地震や噴火についての専門書を読む前の「はじめの一冊」として非常に優れていると感じた。おすすめの一冊である。本書を読んで興味をもった読者はもう少し専門的な解説書へと進むと良いのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
系推薦図書 総合教育院
【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
【OPACへのリンク】
https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=188784 -
資料番号:011472503
請求記号:453.3/イ -
非公式正誤表あります (登録 1 件):
http://public-errata.appspot.com/errata/book/978-4-480-09463-6/ -
噴火予知は比較的進んでいるが、地震予知については旗色が決してよくない。
なにより東日本大震災で今までの考え方がまずいということをはっきり示されてしまったわけだから、ここで一度「予知とは何をすることか」「どうしたいのか」を考えるところに来たのかもしれない。 -
噴火予知は、前兆現象がかなり具体的に把握できて、警戒宣言や避難指示が成功した事例もあるが、地震予知は、中国などで成功したという事例はあるが、前兆現象がない場合も多く、実際としても、警戒宣言等の具体的な措置を実施したこともない。
東海地震を対象にして大規模地震法ができて詳細な地震予知網が整備されているが、今後の科学の進歩を期待して、別にやめる必要はないと思う。ただし、現状の技術のままで、多額の予算をかけて、予知のための強化区域を拡大するのは難しいだろし、予算を使うことについての国民の理解も得られそうもない。
あと、井田先生は、地震と噴火の関係についてよくわからないと説明しているが、一体的に説明する学説もでてきていることから、地震予知と噴火予知が、国土地理院と気象庁、さらには文部科学省と縦割りになっているはいただけない。
内閣府防災に一元化する必要があると思う。