心の仕組み 下 (ちくま学芸文庫 ヒ 15-2)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095015

感想・レビュー・書評

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  • とても変な本である。「心の仕組み How the Mind Works」というタイトルは、心理現象一般のシステムを解説してくれるのかと予想され、また、著者自身もそういうつもりで書いたようだが、これを読んでもさっぱり何もわからない。
    読む前の予想では、脳科学的な最新の知をもとに、それが具体的心理現象にいかにむすいついていくかという精緻な議論が読めるのかとワクワクしたが、その手の本ではない。脳科学はたまに触れられる程度だし、一般的な心理学のテーゼもほとんど出てこない。心理学者である著者の関心は「進化論」(自然淘汰説)にある。
    読んでいくと、進化論の本だったかと思うくらい、自然淘汰の話が延々と続けられるし、おまけに社会問題やら哲学やら、専門外のことにもずいぶん口を出したがり、おまけに文脈は乱れて説得力がなく、彼の言うことのほとんどは同意できないように感じた。
    茫漠とした文体・論調で、結局心理学については何も解明されない。著者としては、心理機能も自然淘汰により組成されてきたものだから、進化の前段階の名残なども見られる、というようなことを言いたいらしい。しかし、全然説得力がなくて茫漠とした本なので、全然興味をかきたてられない。
    心理学を学ぼうと思ってこの本に手を出す人がいたら、私は忠告するだろう。この大部な書物を読むくらいなら、もっといい本がいくらでもある。よほど暇なときでさえ、むしろこれは読まない方がよいかもしれない。

  • 本書は、「心の仕組み」を、主に心の演算処理と遺伝学から説明を試みている。
    第1章では、心の演算器官は自然淘汰の産物であることが説明される。自然淘汰によって形成された演算装置のあれこれを心理学的に研究することが、心の仕組みを探る最善の道であると主張している。
    第2章以降は、脳の進化、網膜映像の認識の仕組み、人間が行う推論の仕組み、などに話題が展開し、終章では美術、音楽、宗教など、非適応的!?な副産物について論じる。この広汎な話題の展開に、氏の博識に驚くばかりであるが、これらを通底して見えてくるものが、私には読み取れない。結論として、心の仕組みはどのようなものなのか??再読が必要であろうか・・。

  • 文系の人間にとっては進化心理学の自然科学的な分析に終始している上巻よりも、下巻のほうが興味がわきます。進化生物学的に何を美しいと感じるか?何をおいしいと感じるか?など、自然適応に即した人間の特性については納得性が高い。一方で芸術と価値の世界については進化生物学では解明できないというのが、哲学の世界には踏み込めない自然科学の限界を明らかにしていてこの点も納得性の高い結論になっている。

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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