オペラの終焉: リヒャルト・シュトラウスと〈バラの騎士〉の夢 (ちくま学芸文庫)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095787

感想・レビュー・書評

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  • 著者の博士論文を大幅に加筆した著作。批判的なことも書いているけれど、全編に渡ってR・シュトラウスの『バラの騎士』への愛に満ちていると言えると思う。文庫版あとがきによれば若書きのところも見られるとのことで、確かに気恥ずかしくなるところもあるのかもしれないけれど、それもシュトラウスへの愛ゆえだと思う。
    19世紀末から20世紀初頭という時代はワーグナーという巨人が去った後であり、大衆・工業化・両世界大戦の時代の前夜でもあって今まで通りのオペラは書くことはできない時代。その中でシュトラウスはバラの騎士において、去りゆく調律音楽の時代への郷愁を公爵夫人の老いへの悲しみと重ね合わせて描いた。大衆音楽であったワルツを三重唱を始めとした朗々とした歌と組み合わせたその表現は、大衆・ブルジョア・貴族の世界が混ざり合う19世紀〜20世紀初頭でしか生まれようがなかった作品なのだということが理解できる。
    最近新国立劇場で上演された「ばらの騎士」は好評を博していたけれど、岡田さんはどのようにみたのだろうか。そして、オペラは(クラッシックも)引き続き失われつつある(失われた)時代への郷愁に浸るための存在なのだろうか。他の著作も読んで確認したいところ。

  • リヒャルト・シュトラウスのバラの騎士について、その歴史的意義を考察した論文。筆者の博士論文とのこと。
    20世紀のオペラ、文化潮流を概観し、バラの騎士をオペラの終焉たる作品と位置付ける。その流れは興味深く、これからリヒャルトを演奏する際にも参考になると感じた。
    20世紀オペラのもう一人の代表選手であるプッチーニとの関わりについても、もう少し知りたかった。
    (2014.8)

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著者プロフィール

1960年京都生まれ。京都大学人文科学研究所教授。専門は近代西洋音楽史。著書に『リヒャルト・シュトラウス 人と作品』(音楽之友社、2014)、『音楽の危機』(中公新書、2020、小林秀雄賞受賞)、『音楽の聴き方』(中公新書、2009、吉田秀和賞受賞)、『西洋音楽史』(中公新書、2005)、『オペラの運命』(中公新書、2001、サントリー学芸賞受賞)、共著に『すごいジャズには理由がある』(アルテスパブリッシング、2014)など。

「2023年 『配信芸術論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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