増補 八月十五日の神話: 終戦記念日のメディア学 (ちくま学芸文庫 サ 31-2)

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  • / ISBN・EAN: 9784480096548

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738025

  • 戦争

  • ポツダム宣言受諾とも、調印式とも異なる8月15日が終戦記念日として定着したのはなぜか。
    1953-1955年にかけて戦争を振り返るメディアの動き、その中で当日の記憶は何度も語り直される。そして、記憶を持たない世代に戦争を教えるメディアとしての教科書の記述変遷。
    8月15日=御聖断により戦争が終わった日(保守派)、革命が起こった日(リベラル派)、お盆であり慰霊の日、日本の支配から解放された日(韓国・中国)という解釈。
    戦争終結を8月15日と考えるのは日本くらいで、世界では9月2日とする方が主流なのだそう。中国韓国と、少し距離を置いたアジアの国であるタイの教科書の比較。ロシアの教科書はどう書いているのか、気になるところだ。

  •  先日、佐藤 卓己 氏 による「増補 八月十五日の神話: 終戦記念日のメディア学」を読み終えました。
     8月15日が「終戦記念日」とされていることに、私は何の疑問も感じていなかったのですが、著者の疑問はそこから始まっています。
     確かに「8月15日」はいわゆる天皇による玉音放送があった日ではありますが、日本がポツダム宣言を受諾したのは「8月14日」、アメリカ海軍戦艦ミズーリ艦上で対連合国降伏文書に調印したのは「9月2日」ですから、この記念日にいう「終戦」の意味を一体何に求めるのかが、著者にとっての大きな関心事となったのでした。
     著者は、当時の新聞(写真)・ラジオ・教科書等を徹底検証することにより、メディアが「8月15日終戦記念日」という人々の「記憶創造」に果たした役割を明らかにしていきます。

  • 終戦の日は8/15だと今日まで疑わずに思い込んできた錯覚に驚いた。そもそも1963年に初めて「戦没者追悼式」が行われるまで、この日は重要視されていなかったかのようだ、ポツダム宣言受諾を決定し、相手国へ通告、終戦の詔書を発した8/14、軍に停戦命令を出した8/16、ミズーリ号での降伏調印の9/2、そして何故か9/3など、といろいろな終戦日の考え方があり、それぞれにその日にしたいという口実がある!中国の抗日勝利記念日は9/3だが、これがスターリンを踏襲した中ソ蜜月時代の残滓であるとは可笑しい!8/15がここまで定着してきたのは降伏の現実を否認したい保守派・8.15民主革命を掲げる進歩派に共通した思惑の微妙な一致という背景があったという説明は興味深い。日本では8/15の玉音放送を聴く民衆の写真が多く掲げられているが、それらが実は他の日の写真、またやらせだったという。私たちにとっては、放送を聴いて項垂れる人々の姿があまりにも強烈に印象に残っているが、これは10周年の頃からのマスコミ報道によるものだったという。8/15が記憶を国民が共有する文化的記念日として定着していることは間違いない。
    著者は執拗に終戦の日付に拘るが、著者自身が書いているようにこれが天皇制の本質に関わることであるが故である。著者は8/15と9/2の分離を解く、即ちお盆と重なるが故の内向きの死没者向けの儀式を行う「追悼の日」と国際的に戦争が終結した「平和記念の日」。確かに近隣国との摩擦はここらあたりの混線にあるのかも。

  • 私が心に留めておきたいと思ったのは、「九・二敗戦」ではなく「八・十五終戦」が記念日に選ばれたのは、日本人は戦争に負けたという事実から目を背けたということを意味していること。私たち日本人は自分では気づいていないが、私たちは戦争の被害者であるという意識の方が加害者として特にアジア諸国に対して行ってきた事実を認めることよりも強いのだと思います。近隣諸国から本当に友好国として認めてもらうためには、この国民意識の大変換が必要なのでしょう。でも、右派の人たちはこの歴史認識を自虐史観と言うのでしょうね。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

佐藤卓己(さとう・たくみ):1960年生まれ。京都大学大学院教育学研究科教授。

「2023年 『ナショナリズムとセクシュアリティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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