知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫 ハ 44-1)

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  • / ISBN・EAN: 9784480096869

感想・レビュー・書評

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  • おもしろかったが、いったり来たりしなければならないのはつらい。

    中段にある、「論文を書く:知的生産には12の工程」があるがキモ
    前後の論点は、この12段の階段を説明するための部品。

    A 問題意識発生・テーマ設定
       自分の中に世界大の知的マップをつくる
       テーマを答えやすいかたちに分解したり、置き換えたりする 困難は分割せよ
       机の前で固くなっていても、いい発想は浮かばない。神経の緊張が解かれ気分がリラックスでき孤独になる場所がよい
       ブレスト、一人ブレストする

    B テーマ分析 ⇒ 研究ノートを作る
       自分の思考過程をむきだしにした言葉で書いておく

    C 第一次情報収集 ⇒ためし読み、本の文献メモや、索引カードを作る
       テーマに必要な資料を全部集める
       しらべる、分類学的方法:本でいうと目次。推理力は、本でいうと索引。自分で辞典を作るイメージ
       知の分類をつかう。文献中心:アカデミズム、新聞雑誌映像中心:ジャーナリズム、世間話:日常生活

    D 資料の分類・分析 ⇒ 読書ノート 要約、書き抜き、コメント
       資料のコレクションができたらひとつひとつを丁寧に検討し、つかえないものは排除していく
       自分自身の分類体系をつくる
       パッケージ(分類したもろもろ)にわかりやすい名前をつける
       定性的分析と定量的分析をくるくる回す
       帰納法と演繹法で分析を行う

    E エントロピー廃棄
       やりつくしても、もうやることがなくなる状態。
       最後の状態をメモにしておくものいい。次はいよいよ構想だ
       
    F 構想 ⇒ 研究ノートをみてもう1度テーマ分析をやる ⇒マップをつくる
       細部まで説明可能な概念図ができる(文章ではない)
       この概念図をつかって、細部まで説明できるかをなんどもシミュレートする

    G 構成 ⇒ マップを目次に作り替える、順序とストーリーを作る
       あらすじをかいてみる
       章から章へうまく橋渡しができるかどうかを検討する。だめだったら、一つ前にもどる
       言語化できない思いがあっても、それは他人にはわかってもらえない。
       自分の思考の産物と、自分とが対話をする

    H 草稿執筆 ⇒ 目次と執筆に必要な本、ノート、カード類を用意
       いよいよ文章化する
       文法や、文体などにかまわず、どんどんかいていく。
       長い引用などは、コピーをはりつけたり
       ようは、一気に書き終えること

    I 草稿検討 ⇒ 草稿を書き終えたら、ゆっくり精読する
       草稿を書き終えたら、ゆっくりと何度でも読み返す
       あらゆる角度から論難を加えてみる。

    J 第二次情報収集 ⇒ 草稿段階でみつかった不備をを補う

    K 草稿修正 ⇒ 草稿に手直しを入れる
       最初の読者は作者である

    L 清書 ⇒ 完成稿にまえがきを加える、全体の見通しがたってから書く

    読書
     ①ためし読み、積読法
     ②速読術
     ③精読術
     ④再読術
     ⑤遅読術

    アウトプット
     ①本
     ②メモ
     ③ノート レーニンのノート
     ④カード

    目次

    イントロダクション 知的スタート術

    準備編 知的生産・知的創造に必要な基礎テクニック8章

     志をたてる 立志術
     人生を設計する 青春病克服術
     ヤル気を奪う ヤル気術
     愉快にやる 気分管理術
     問いかける 発問・発想トレーニング法
     自分を知る 基礎知力 測定法
     友を選ぶ・師を選ぶ 知的交流術
     知的空間をもつ 知の空間術

    実践編 読み・考え・書くための技術11章

     論文を書く 知的生産過程のモデル
     あつめる 蒐集術
     さがす・しらべる 探索術
     分類する・名づける 知的パッケージ術
     分ける・関係づける 分析術
     読む 読書術
     書く 執筆術
     考える 思考の空間術
     推理する 知的生産のための思考術
     疑う 科学批判の思考術
     直観する 思想術
     さまざまな巨匠たちの思考術・思想術

    コラム1 図書館は、知力を拡張する空間だ
    コラム2 電子時代の読書
    コラム3 弁証法的な思考とはなにか?
    コラム4 知的好奇心とノーベル賞のメダル
    コラム5 人間は文学的動物?

    文庫版あとがき

  • いいことがたくさん書いてあるが、過去の知識人の話が断片的に出てくるため、ついていけなくなった。
    著者の知識量、思考力はすごいと思うが、『トレーニング』と銘打って書籍化するには無理があると思う。別のやり方があろう。
    自分にはまだ読み切れなかった。
    もう少し読書や思考で苦労したら(成長できたら)、再読にトライしたい。

  • この本は、猿読書にて紹介されていたので、興味を持った本である。猿読書でも紹介されている通り、素晴らしい本だった。今までなんとなくわかっているけど、言葉に出来ないようなことについて、適切な言葉を用いて明晰に説明がされている。この本は、何度も読み返して本当に自分の血肉としたい。この本を血肉に出来た時、自分の世界をさらに拡張してくれるだろう。

  • だいぶ前に一度読んだが、改めて仕事での「思考力プロジェクト」をきっかけに再読した。理路一貫した内容で、かつ語り口が味があって、ポジティブに知的生産に臨む態度が促される。松岡正剛よりカジュアル、立花隆よりシステマティックな印象。

    立志:志を立てる
    青春病克服:人生を設計する
    ヤル気術:やる気を養う
    気分管理:愉快にやる
    発問・発想:問いかける
    基礎知力測定:自分を知る
    知的交流:友を選ぶ・師を選ぶ
    知の空間:知的空間をもつ

    知的生産過程のモデル:論文を書く
    蒐集:あつめる
    探索:探す・しらべる
    知的パッケージ:分類する・名づける
    分析:分ける・関係づける
    読書:読む
    執筆:書く
    思考の空間:考える
    知的生産のための思考:推理する
    科学批判:疑う
    思想:直観
    発想法カタログ

    自分が知的なことに関心をもつのは、
    ・世界の動きが「読める」ようになりたい
    ・人生を「意味づける」ことができるようになりたい
    からだ。

    その意味では、下記の二つの考える技術がとりわけ重要といえる。

    発問・発想:問いかける
    ・みずから問いを発することができるようになること
    ・問いは知的好奇心からうまれる。知的好奇心は自分のなかの知的空白部、つまり欠如の感覚から出てくる
    ・問いを答えやすい形式にするのが、発想術だ
    ・あるテーマ(問い)が与えられたら、そのテーマを答えやすいかたちに分解したり置き換えたりするトレーニングが発想法の根本(テーマ分析法)・・・例。「日本のエネルギー危機をどうするか」
    ・問いそのものの位置をズラしたり、置きかえたり、分割したり、要するに動かしてみるというこのダイナミック発想法は、いろんな分野で発見を生む有効な方法

    分析:分ける・関係づける
    ・分析とはとにもかくにも分けること、分解すること
    ・分析が必要なのは、問題にしている対象が複雑すぎるから
    ・ただ、分類・整理をするのではなく、分けられた諸要素間の関係や規則性を見つける
    ・論理の訓練も必要。帰納法と演繹法があるが、前者は発見的な価値のある方法であり、演繹法は思考の正しさを保証し、最短コースで回答にたどりつく経済的価値をもう方法

    読書:読む
    ・読書の目的によって、読書態度も変わる
    ー外在的読書:問いが本の外部にあって、本は手段にすぎない。速読法
    ー内在的読書:その本を読むこと自体が自己目的であるような場合で、読み終わったあとの結果を何も予想しない。①学ぼうとする意識が強い求道的なあり方と②エンタテインメント的色彩の強い場合に二分される。前者は通読向き、後者は拾い読みでも構わない
    ・読むとは、本という客観と自分主観との合成物をつくること
    ・記憶術は、読書の一法。血肉化するための手段
    ①記憶すべきものの範囲をはっきり限定する
    ②忘却曲線を利用する(20分、9時間)
    ③記憶の場所性、空間性を利用
    ④記憶容量を一語に縮減
    ⑤自己講義法
    ⑥書写法(南方熊楠)

    執筆:書く
    ・メモをとることは執筆への第一歩だ
    ・ノートに書くということは、この世にたった一冊しかない自分用の書物をつくるということだ。ということは、ノートにも本と同様、タイトルと目次とノンブル(ページ)が必要ということだ。ノートも小見出しをつける
    ・文学的文章を書こうとする場合には、感覚的なデータを集めることが必要になる。文章によるスケッチ・トレーニングは、島崎藤村や田山花袋など自然主義文学の作家たちがはじめたものだ。
    ・あつめたデータから構想をつくる。テーマをいくつかの小テーマに分け、それら小テーマを関係づけて組み立てた骨組みが構想だ。
    ・構想を構成のかたちに具体化するポイントは、文章を線である、肝に銘じること
    ・内容構成のテクニックで、柱をたてるという方法がある。
    ・パラフラフを掌握せよ
    ・語彙肥大症と文法肥大症。前者は、エピソードにつぐエピソード、後者はエピソードも具体例もなしにひたすら論理だけがストレートに展開していくケース
    ・フロベール型とバルザック型。前者は、将棋倒し式に書いていくタイプ、後者は、断片を先に書いてあとで組み合わせるタイプ
    ・カード式文章執筆法。
    ー構想メモを何度もデータとのあいだを往復しながら、だんだんに「目次」の形をしあげていく
    ー目次ができたら、それぞれの章や節で書くべきことがらを、カードにメモしていく(一枚一項目)(原稿の下書きをカードに書く)

    思考の空間:考える
    ・考えるということは身体的行為・・・自分にあった思考のポーズを発見し自覚すること
    ・思考は言語行為であること・・・他人と対話または討論しながら自分の考えをまとめる
    ・物質的行為であること・・・ひとりでやる思考のトレーニングとしては、書きながら考える。

    ・考える場所は、ノート→書斎→牢獄→都市→異国→地球と広げていける

    知的生産のための思考:推理する
    ・有効な問いのたてかたをまなぶ これが思考術のトレーニングのアルファでありオメガだ。
    ・だから、解答(生産物)が出ないような思考(労働)は、本人にとってはどんなに楽しいものであっても、知的生産にとっては失敗であり、時間の浪費にすぎない。
    ・解答がでるように問いの仕方を工夫することが、科学的思考における問題設定のポイントだ。
    ・科学的な思考は、まず「常識」にたいして異議を申し立てる。問いと答えとを直観でむすびつけて自明なことをしていた、それまでの思考法に反省をせまり、それにとってかわろうとする。「空想から科学へ」というわけだ。
    ・「慣性の法則は実験から直接に導かれるものではなく、ただ、観察と矛盾しない純粋の思索によってのみ得られる」
    ・あらゆる理論は一時的な仮説の状態にある
    ・科学の役割としての認識と応用
    ・歴史的思考と論理(構造)的思考
    ・科学の批判の思考:実験科学の思考方法、エコロジー的命題と文化人類学的命題

    思想:直観
    ・節約モデルの思考と浪費モデルの思考
    ・パズル解きの科学から抜け出た問題領域での「考える」ことを、思考術ではなくとくに「思想術」と呼んでおきたい
    ・ぼくらはたんに受動的に世界を受け入れているのではなく、たえずそれに意味を与え、それを構成しつづけている。生きている、ということの証はこの「意味付与」ということのうちにある。
    ・浪費こそが、人生の価値と意味とを生産する

    発想法カタログ
    1 夏目漱石の「自己本位」の発想
    2 翻訳文化のなかで考えるための多国籍思考
    3 ウェゲナーの地図思考
    4 フロイトの《痕跡読み》の手法
    5 バシュラールの物質的想像力
    6 ボルヘスの迷宮思考
    7 ロジェ・カイヨワの対角線の科学
    8 知のいたずら者たちのトリックスター思考

  • 今や40年ほど前の書物、ニューアカ全盛期とは言え、現在から見れば「学は力なり」という勢いの伝わる書物。宝島に面白いライターが揃っていた時代。

  •  1980年に別冊宝島の1冊として刊行された名著の文庫化である。

     私はフリーライターになりたてのころ――つまり約30年前に図書館で本書に出合い、強い影響を受けた。
     手元に置いておきたくて、版元の宝島社(当時は「JICC出版局」)に電話で問い合わせたら、「うちにも在庫がありませんし、重版の予定もありません」と言われてガッカリしたものだ(その後、古本屋で見つけて買った)。

     内容の一部が改訂されているとのことなので、文庫版も買ってみたしだい。2015年に文庫化されたものだが、私が買ったものは2016年の第6刷。けっこう売れているのだ。
     文庫の帯には、「あの伝説のテキストがいまよみがえる!」という惹句が躍っている。私同様、本書に影響を受けた人は多かったのだろう。
     有名なブログ「読書猿」の人も、本書に強い影響を受けた一人である。

     花村太郎は筆名で、本名は長沼行太郎という人なのだと初めて知った。
     1947年生まれ。別冊宝島版を書いたころは30歳そこそこだったことになるが、もっと年配の人だとばかり思っていた。文章に風格があったし、すごい博識ぶりが内容からうかがえたから。

     久々に再読してみて、改めて名著だと思った。「知的生産の技術」本としてはもちろん、文章論・読書論・教養論としても高い価値をもつものだ。
     インターネットどころか、ワープロすら一般的でなかった時代の書だから、情報として古びている面もなくはない。それでも、いまでも傾聴に値する卓見が目白押しである。

  • みんな知ってる名著。いわゆる勉強術については、これ一冊読めばことが足りる。ここまで広範かつ深度のある勉強術の本はなかなかにない。10代のうちに読んでおけば、その後の学生生活はまったく違うものになると思う。また、20代以上でも、インプット・アウトプットの技法としても優れているのでホワイトカラーの仕事術の本としても使える。

    とくに、初めて論文書こうという人には「知的生産過程のモデル」の章は必読だと思う。研究プロセスの全体像を整理・単純化し提示することで、雑多な要素が交錯する研究・論文執筆の作業に見通しを与えてくれる。こういうアカデミズム(≒知的生産)の作法を知ってるかどうかで、最終的な到達点は大きく変わるだろう。

  • 読書会で紹介されて興味を持った本。その方は卒論を書くために読んでいたけれど、そうでなくても面白かった。
    わたしが特に好きな章は「思考の空間術」

  • 面白い。

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