マクニール世界史講義 (ちくま学芸文庫 マ 40-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097255

作品紹介・あらすじ

『世界史』の著者が、人類史を見る上で重要な三つの視点を易しく語り下ろす。本物の歴史感覚を学べるコンパクトな講義

感想・レビュー・書評

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  • 中学校や高校時代の世界史でこんな講義を受けていたなら、私の世界史の授業に対する興味は全く違っていたかもしれないと思う内容でした。暗記科目であるという歴史に対する浅はかな認識しか持てずにいたため、やたら覚えることの多い世界史は部分的にしか興味を持てずに、通り一遍でやり過ごしてきたのでした。今思うに、何と勿体無いことをしてきたのだろうと思います。
    主に近代から現代までの歴史認識をまとめたものですが、それにしても分量は少ない、にも関わらず内容は濃いので、具体的によく分からないところも確かにありました。
    それでも以前に「銃・病原菌・鉄」を読んでいたので、この本を理解する上で役立ちました。この本でもこの3つはキーワードとして登場したからです。
    世界の成り立ち(構造)は全体を俯瞰しないと見えない。木を見て森を見ずという例えが当てはまると思いますが、その中には時間軸も当然含まれます。人類が過去に辿った足跡を現在起きていることと重ね合わせて見る取り組みが大事であることが書かれています。
    生態学の概念から微生物の代謝活動を意味する「ミクロ寄生」と、進化の過程で地球上で最強のハンターとなった人間が、餌となる植物や動物に依存することを「マクロ寄生」と定義しています。マクロ寄生という言葉は更に、人間の集団や階級間の搾取関係に適用して、市場経済や官僚主義による世界の動きを端的に説明することに使われています。
    人間の英知は伝染病や飢饉などの災厄との闘いにおいて、勝利と破綻を絶え間なく繰り返す動的平衡を示していて、今後もこのパターンは続くだろうとあります。人間も物理的・化学的世界の一部であることから自然法則を照らし合わせると、現代社会の発展は、脆さと隣り合わせであるということは、もはや様々な場面で立証されていると言えます。あまりの必然性故に未来を憂えたくもなりますが、人間の持つ英知を讃える「過去を前向きに考える歴史家」という筆者の自己認識に同調するのでした。

  • マクニール世界史講義

    基本的に疫病に対する免疫力の違いという観点で世界史を眺めている。疫病への耐性をミクロ寄生、人間同士の支配関係をマクロ寄生という形で考え、疫病に対する耐性の変化や社会における支配関係の変化を歴史の潮目と捉えている。そうすると、歴史における最初の潮目は人間が食物連鎖の頂点に立ったことであり、そこから人間同士の戦いが始まる。マクロ寄生に関しても、都市化による職業の専門化や、支配階級が聖職者から軍人に変化することなどが基本的な歴史の転換点として考えられる。ハードな支配関係の最たるものとして帝国が誕生し、11世紀ごろから商業的変容によって帝国の官僚的な管理体制と商業システムにおける均衡的な管理体制への移り変わりが全体的にみられる。この変化は長期的には起こるものだが、勿論その反対に人類は11世紀以降も帝国化の欲望とその危機にさらされてきた。15世紀の大航海時代以降もミクロ寄生という観念は機能している。アメリカ大陸の原住民がいとも簡単にヨーロッパに席巻されてしまった理由の最たるものとして、ヨーロッパ人が持ち込んだ疫病に対する免疫の無さが挙げられ、病原菌が世界史の中で持つ重要性に気づかされる。戦争技術の発達という表層的かつ近視眼的な変化に目を奪われることは多々あるが、人間自体がウイルスに対してアップデートされていくという長期的な変化に注目することをマクニールは教えてくれる。生物にも成長と老化という免れない宿命があるように、その生物が作るシステムや歴史にもその宿命がある。歴史の破綻は免れず、しかし、その破綻をもってして新たな成長が生まれる。歴史におけるとても大きな流れを、この本は体感させてくれた。

  • 「もっと前に知っておけば良かった」という本は多いけれど、これは「もっと前に翻訳しておいてほしかった」という本かな。大学の講義ノートという形で、非常におおくくりに人類史を取り扱う。

    人類の歴史の中で、もっとも大規模に、一つの社会が他の社会を飲み込んだ例は無いとしつつ、一方で、それを可能にしたのは、役人のもとで無言で大地を耕す圧倒的多数の農民達だっともまとめる。こつこつと働き続けるサラリーマンの姿にもかぶってみてた。

  • 途中で呆れて読むのをやめた。先住民と、かれらに対してとられた酷な政策を無視して、「技術的に劣ったほうが優ったほうに勝ろうとする、この原則のうちに社会は革新されてきた」とは……。まったく異なる文明というものを無視していないだろうか?

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/737629

  • 世界史というふろしきを広げて、人類という僕たち、文明という社会の姿をその上で描いてみる。


    自分がいる社会、隣りにある社会、これまでにないフロンティアとして見出された社会。

    その関わり方、その中での立ち方、振舞い方。文明的な、疫学的な序列、強弱のためのバランスによって、それぞれの存在が強められ、弱められ。飲み込まれながら、大きな形となっていく。


    寄生している。確かに、人も社会も、寄り掛かることでしか成り立たないことは明らかで。

    どんなヒエラルキーも、人間の関係も、強弱という姿が表面に表れているとしても、そのどちらもがなくてはならないものとして成り立っている。マクロでもミクロでも、その俯瞰した視点は世界というものを語るときに必要なもののような気がする。

    歴史というものを切り取れば、同じことを繰り返して、あたふたとひとり足掻き続けている、変わることのできない人類、根本的には本能的にしか舵をきれない人類、みたいな滑稽な姿が浮かんでくるような気分に辿り着くけれど、それはたぶん想像力が足りないんだろう。

    歴史が示すダイナミズムの中で、たくさんの破錠を超えて、刷新した姿を表してきた人類というもののエネルギーを確かに感じ、未来にもう1度振り向くことが必要なんだと思う。



    'この事実を強調し、地球上にこれほど不安定でありながらも壮大に広がる生命体の網の目の一部としての人間の画期的な記録に対する理解を深めることが、今回の講義の目標であり、目的です。お話してきたような人間を取り巻く状況に対する展望が陰鬱で、決定論的で、魅力がないように見えるとしたら、私は残念に思います。私自身はまったく逆の感じ方をしていて、私自身を含む人類と他の生命体との密接な関係を認識することで、一種の高揚感を感じています。社会的相互作用、言語が持つ象徴的な意味、人間の知性は、私たち自身のために、そしてこの地球を共有するすべての動物や植物のために、他の面では見栄えのしないヒトという種に、その身が置かれた環境を何度も何度も変化させることを許したのです'

  • 歴史の流れを概観するにはコンパクトかつ専門用語があまり出てこないのでわかりやすいのだと思いました。
    ただ、講義録ということもあり、用語の定義が明確でないところも多いのが気になりました。
    例えばフロンティア論では、何気なく『価値』や『技能』という言葉が出てきますが、これは資本主義的な生産性を指しているのだろうか?などと考えながら読みました。
    読み物としては面白いと思いましたが、当然ですが教科書的なものではなく、著者の歴史観によるものだという認識で読む必要があると思いました。

  • グレートフロンティア章が読みやすい。
    ヨーロッパで発生した人工構造の変化が、大規模な人口移動を生み出し、世界地図を大きく塗り替える結果になった。って話。

  • 読んだな〜。
    内容覚えてないな〜。
    (2020/12/01)

  • 複雑な人類の歴史を理解するには歴史の見方が必要だ。ベストセラー「世界史」で知られるウィリアム・H・マクニールは「フロンティア」「感染症」「マクロ寄生」という三つの観点から壮大なる人類の歴史を繙いていく。「世界史」よりはだいぶ短くまとまっているが世界史の好きな人以外にはつまらなく感じるかもしれない。一般人向けではない感じ。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file8/naiyou28502.html

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